第3話 清水寺での再会
私達は金閣寺からバスに乗り、清水寺へと向かった。
清水寺で解散する組はここの上、本堂の舞台で解散、自由行動らしい。
冷静に考えると清水寺と金閣寺って解散場所そんなに違うのは良いのだろうか。
自由行動のスタート地点に相当な差があるけど。
まあそんな疑問も本堂に行く頃には吹き飛んでいた。
「きっつ……」
「す、すごい階段の量だったね……」
「いやほんと、前に彼方と遥と一緒に神社行ったんだけど、その時もキツかったわ。なんで高いところに作るのかしら」
9月のまだまだ暑い気候の中階段を登らされ、私達全員汗だくだ。
いや、正確にいうとフィジカルモンスターの鬼宮さんと、鬼宮さんにおんぶされている小宮さんは汗だくではない。
小宮さんはしきりに平気だから下ろしてと言っていた。
本堂に来るまでなんか赤い建物をいくつも紹介されたが、そんな状態で似たような建物たくさん紹介されてもなんも覚えてない。
多分名前と写真出されても三重の塔くらいしか見分けがつかない。
「それじゃあこれから7時まで自由行動の時間です。7時にはホテルに帰ってきていること。それじゃあ解散」
本堂の舞台で先生が解散宣言をする。
他の班の子がやっと解放されたと言い、先生もようやく終わったという顔をする。
さて、何も考えてないけどここからどこに行こうか。
「自由行動どこ行く優子?」
「んー?とりあえず写真撮ってから決めようよ」
そう言って優子はスマホで景色を撮っていた。
「吉井。一応スマホの持ち込みは禁止されているんだからあまり堂々と出すな」
「あっ、えへへごめんなさい先生」
優子は先生に怒られ、スマホをしまう。
まあそんな厳しく取り締まるつもりはないみたいだ。
「そんでどこ行く?」
「そうねえ。せっかくだし安倍晴明について調べてみたら?」
「なんだ。お前たち安倍晴明に興味あるのか。なら晴明神社なんてどうだ?」
「先生安倍晴明知ってるんですか?」
先生が会話に割り込んでくる。
「そこまでは詳しくないがな、芦屋道満との勝負でみかんをネズミに変えた話を知ってるくらいだ」
「ふーん。じゃあ行ってみるか。ありがとね先生」
「タクシー使えば時間的にもう一か所くらいまわれると思うぞ。じゃあな」
そう言って先生は去っていく。
いやタクシー使わねえよ。お土産買える量減るじゃん。
「じゃあみんな晴明神社でいい?」
「あ、出発する前に本堂の入り口にあった力比べのやつやりたい!宮っちなら多分全部持ち上げられるよ!」
「……任せて」
小宮さんの無邪気な提案に鬼宮さんが迷いなく順路を逆走していく。
まあちょっとくらいならいいのかな。
「私達も行く?」
「自由行動とはいえ班員置いてくわけにもいかないしねえ……」
私があごに手を当て考えていると、急に後ろから何者かに抱きつかれる。
妖の気配はない。これは人間だ。
前に聞いたことがある。
こういった観光地では修学旅行の学生を狙った犯罪者が出ると。
「ギャー!痴漢!変質者ー!」
「あっとと。驚かせすぎたか。私だよ私」
変質者が私から離れ、私は変質者から距離を取り、その顔を見る。
その顔は私のよく知る人物。人気ロックシンガーのMIHARUさんだった。
「み、MIHARUさん!?どうしてここに!?」
「あ、声量抑えて抑えて。騒ぎになるとまずいから」
「あ、すいません。でもどうしてこんなことを」
「あーほら、数日後に京都でライブするだろ?その為に連れてこられて」
なるほど、それで観光してたら知り合いがいたからちょっとお茶目に声をかけたということか。
「あさひの学校の学生服見かけたからさ。あさひか誰か来ないかなって清水寺で待ち伏せしてたわけ。ひとりぼっちだと寂しいし」
寂しがりが暴発してとんでもないこと口走ってるよこの人。
彼方。トラブル防止のための民間協力者の接触禁止ルール。著名人の方から積極的に一線越えてきてます。
「ただいまー!あれ。MIHARUさんだ」
「おかえり小宮さん。持ち上げられた?」
「全然!でも宮っちは一番大きいやつ持ち上げてたよ!」
どれくらいの大きさがわかんないけど、非力な小宮さんと剛力な鬼宮さんらしい結果だ。
「それじゃあ2人も帰ってきたしそろそろ行きますねMIHARUさん」
「うん。行こうか」
MIHARUさんは当然のように私たちと一緒に階段を降り始める。
「……ついてくるんですか?」
「ダメ?」
「私はMIHARUさんのファンだからいいですけど、一応学校行事ですし」
「じゃあ偶然行き先が同じってことでさ」
MIHARUさんが鋼の意志で同行してくる。
優子も小宮さんも鬼宮さんも気にしていないようだ。
「はあ、まあ言っても無駄みたいですし、いいですよ」
私達はMIHARUさんを連れて階段を降りた。
―――
階段を降りる途中、ちょろちょろと流れる3本の滝とちょっとした人だかりがあった。
「ここも多分観光スポットですよね。せっかくだし見ていきますか?」
「あーうん。あさひ達来るまで暇だったからちょっと調べたけど、それぞれの滝にご利益あるんだって」
「へー、どんなご利益なんですか?」
「左から学業成就、恋愛成就、延命長寿だとさ。複数飲んだら打ち消されるからひとつだけ飲むんだってさ」
「え、延命長寿……」
ご利益を聞いた私は一目散に延命長寿の水をすくい、飲んだ。
飲み終わったあとMIHARUさん達が哀れむような目でこっちを見ていた。
というかあまりの必死さに他の観光客までこちらを見ていた。
仕方ないじゃん半年後死ぬかもしれないんだからさ。




