第1話 修学旅行開幕!いざ京都!
修学旅行当日。私達は新幹線に乗っていた。
座席は私、優子、小宮さん、鬼宮さんの四人でセット。遊び道具は一切持ち込み禁止とのことで、トランプすらない私達は暇な時間、駅で買った冷凍みかん温めるか雑談くらいしかすることがなかった。
本当は持ってるけど、今出したら先生も立場上没収しないといけないだろうしね。
その雑談の中で、私達はヤマタノオロチの話をしていた。
「そういやさ、ヤマタノオロチの話は聞いた?」
「聞いた聞いた。なんかすごいことになるみたいだね」
「私もはるっちから聞いたよ。安倍晴明を呼び出すなんて、すごいよね」
小宮さんが安倍晴明について反応を示す。
「……知らないんだけど有名な人なの?」
「え?割と有名だと思うけどなぁ」
「優子知ってる?」
「知らなーい」
鬼宮さんには聞かない。多分小宮さんに同調するだけだし。
ただ私も優子も神無月家で働いてるくせにそういうの本当に疎いから、私達と小宮さんどっちがスタンダードなのかわかんない。
どっちにしても話聞いとくか。知っといて損は無いだろうし。
「小宮さん。安倍晴明ってどんな人なの?」
「どんなって言われても、私もなんかすごい陰陽師だったことくらいしか知らないよ」
「陰陽師ってなんかこう……式神とかで戦うあれ?そういや私達の先輩にあたるのかな?」
「うん。ドーマンセーマンってやつ」
「あーなんか聞いたことあるかも。その呪文?ってどういう意味があるの?」
「なんか……陰陽師呼び出すやつじゃなかったかな。すぐに呼びましょって」
小宮さんも本当にそんな詳しくないっぽい。
「まあ、安倍晴明はいいや。ヤマタノオロチってさ、頭8本あるのよね?」
「たしかそうだったかな。それがどうかしたのあさひ?」
「8本なのにヤマタっておかしくない?股は7つでしょ?」
「横並びじゃなくて円形なんじゃない?そうすれば8本で股が8個でしょ?」
「股にはその数に分かれているって意味があるんだ。8本に分かれているから、ヤマタノオロチ」
「あっ、師匠」
通路から声をかけられ、そちらを向くと一ノ瀬師匠がいた。
別のクラスだからあんまり会う機会はないだろうけど、まあ来てるよねそりゃ。
「田中さん。ヤマタノオロチのこと、一応神無月家関連のことなんだから、あんまりおおっぴらに話さないでね」
「はーい。そういや一ノ瀬師匠はどこ行くつもりなんですか?」
「そうだね。自由時間には三十三間堂に行って通し矢をした舞台を見に行きたいかな」
「あーいや、そっちじゃなくて今日のテーマパークの方です」
「ああ、そっちか。そっちは班員に全部任せてるからわかんないかな。じゃあそろそろ行くよ」
「あ、師匠。よかったらこれどうぞ」
「冷凍みかん?ありがとうね田中さん」
師匠は冷凍みかんを受け取って、自分の席へと帰っていく。
「にしても全然溶けないわねこれ」
冷凍みかんは大阪で降りる頃になっても、カッチカチでとても食べられなかった。
―――
「いやあ、空いてて楽しかったわね」
「そうだねーあさひ」
私達はテーマパークで遊んで、京都行きのバスに乗っていた。
座席は2人で1セット。私は窓側の席、隣には優子。小宮さんと鬼宮さんは通路挟んで向こう側で座っている。
雨がめちゃくちゃに降ってて、人が少なかった。
おかげで屋外アトラクションは乗り放題。
ただまあ気になることがふたつ。
ひとつはこの大雨。ヤマタノオロチがなんなのかよくわかんないけど、どうしても海坊主の時のことがチラつく。
海坊主が台風としてやって来たのと同じように、もしかしたらこの大雨自体がヤマタノオロチなんじゃないかと考えてしまう。
我ながらトラウマになってるわ海坊主。
もうひとつは靴下がすっごい濡れてること。レインコートを来ていたから身体は濡れずに済んでるけど、足元はそうもいかなかった。
ホテル着いたらお風呂に入るよりも先に靴下を着替えよう。京都のやけに晴れた空を見ながら、私はそう思った。




