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ifバッドエンド

if もしも橋花と逃げてしまったら。



「……結構遠くまで逃げてきましたね」


「ああ、少しコンビニで買い物していくか?嬢ちゃん」


「もうちょっと離れたいかな。相手神様ですし」


あさひを乗せた橋花のバイクは、暗闇の中を走り続ける。

しかしその行く宛のない逃走劇は、交差点に現れた人物により数分と経たず止められることとなる。


「田中あさひよ。悪いが、逃がすわけには行かないのだ」


先回りしてきたツクヨミの姿に、橋花は一瞬甲高い音でブレーキをかけ、その次の瞬間には横をすり抜ける判断をしてエンジンを全開にして吹かす。


その一瞬が結果を分けたのか、否、どうあろうと変わらなかったであろう。

ツクヨミはあさひの身体を掴み、バイクから引きずり降ろす。


「がっ……」


地面に叩きつけられたことであさひは小さく声を上げ、目を閉じる。

ツクヨミはその目を開く時間すら与えず刀を抜き、あさひの首をはねてしまった。


「嬢ちゃん!……てめえ!」


「橋花透(とおる)よ。悪いが、今はその憤りを受け止める余裕はない。来るぞ」


「クハハハハ、無辜の民を殺しておいて、冷たいねえツクヨミ様は」


血だまりを作るあさひの遺体から、どす黒いもやが飛び出し、その姿を形作る。


「空亡、貴様を倒し、姉上を救い出す。私はそのためにここに来た」


「あーあー、まだ融合も終わってねえし力も出ねえってのに、こんなの相手にしなきゃいけないなんて、ここで終わりかぁ」


空亡は言葉では観念したような素振りを見せるが、その表情は醜悪にニヤけヅラを晒しており、言葉とは違い観念した様子はない。


「何を考えているか分からんが、何かされる前に仕留めさせてもらう」


ツクヨミが刀を抜き、空亡に斬りかかる。


「やめて……!」


その瞬間、空亡はあさひの姿を、あさひの声を真似、助けを乞う。

ツクヨミが動揺した一瞬。空亡の顔はあさひの顔のまま醜悪な笑顔になり、ツクヨミの刀を奪い取った。


「クハハハハ、お気に入りの人間の真似されてビビったか?姉上様に似てるもんなそのガキ。いや、似てた。か」


「図に乗るなよ、今の貴様なら素手で殴り倒すくらいのことはできる」


ツクヨミは怒りを隠す気もなく、怒りを向けられてなお空亡は薄気味が悪い笑みを浮かべ続ける。


「じゃあせっかく奪ったわけだし、この刀有効に使わせてもらおうか!」


ツクヨミから奪った刀で、空亡は攻撃をする。

ツクヨミではなく、橋花のことを。


「あ……がっ……」


「橋花透!くっ空亡!貴様ぁ!」


「弓矢のガキが神無月家足止めするとか言ってたよなぁ!神無月家は来ない。お前が助けてやらなきゃ死ぬぜ。また7年かけて俺様のこと探しな!クハハハハハハハハ!」


そう言い残し、空亡は夜の暗闇のなかに消えていった。

放っておけば死ぬ。今助ければ死なない。橋花のその状態は、空亡が逃げ切るまでツクヨミの判断を鈍らせるには十分だった。


そのまま空亡はどこかへ潜伏して融合を果たすであろう。

あさひを見つけられたことすら奇跡に近い。再び誰かに取り憑かれれば、探し出すことは不可能に近い。人も神も空亡の融合を指を加えて待つしかないのだ。




だが獅子舞はその限りではない。




どこかの地平より現れ、カンカンカンと歯の音を鳴らし、空亡へと食いついた。

獅子舞はその嗅覚で嗅ぎつけ、獅子のスピードであっという間に空亡を見つけ出し、誰かに取り憑く前に齧りついた。

かくして流守町に再び平和な時間が訪れたのであった。

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