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第6話 本当は死にたくなかった

作戦地区のひとつに着くと、そこにはまばらな人の間に亡者と妖がうじゃうじゃといた。


「……うわぁ」


「ほとんどは獄卒だからな。勝手に攻撃するなよ」


「わかってるわよ。どれ殴ればいいの?」


「まずあそこにいるカラスみたいなやつだ」


「オッケー。弓矢の腕前見せてやるわ」


「街中だから刺さらない奴でな」


「わかってるわよ」


私は弓を引き、矢を放つ。

カラスに当たって、カラスは消えていった。

合格してから初めて射った。面目躍如といったところか。


「次は?」


「あそこの蛇」


「オッケー」


私は蛇に近付き、軽くはたく。

蛇は即消えていった。


「次は?」


「次が来るまで他の奴に亡者の誘導を頼む。そこに寄っていく妖を叩く」


彼方がどこかに連絡をすると、遠くからMIHARUさんの歌声が聞こえてきた。


「えっ、なに?」


「ゲリラライブしてもらってる。楽しげな方に寄ってきた亡者を一網打尽にするための作戦だ」


「……私も見てきていい?」


「ダメ」


「ケチ」


そうして私と彼方は、一通り終わるまで妖を倒したのだった。



―――



「はぁー終わった」


「お疲れ。なんか飲み物買ってこようか?」


「お供え物でいいわ。ほら」


視線の先では、ツクヨミがこちらへと向かっていた。


「……田中あさひよ。準備はいいか?」


「まあ、いいわよ。後のことよろしくね」


ツクヨミは私の言葉を受け、刀を抜く。

手は震え、苦しそうな表象を浮かべている。


「本当は、殺したくない。そなたは……お前は良き人間だ。多くの愛を受け、愛に報いるため覚悟を決め、最後の時まで皆のために戦う。良き人間だ」


「……どうも。でも殺すんでしょう?ならそういうのいいですよ」


「そうだな。自らの心を軽くするための弁明に過ぎんな。悪かった」


ツクヨミが刀に力を入れなおす。その瞬間だった。


「待ってください!」


遥の声が暗闇に響く。


「お願いします!あさひを殺さないでください!」


遥は私とツクヨミの間に入り、ツクヨミに対して土下座をして懇願する。


「……春瀬《はるせ》遥よ、そういうわけにはいかんのだ。遅かれ早かれ、私は田中あさひを殺さなくてはならない」


「あさひの中から、空亡を追い出してみせます!ですからあさひを殺さないでください!」


「……!そのようなことができるのか!?」


ツクヨミの顔色が変わる。


「正直に言うと、まだできません。でも取り憑いた妖を追い出す結界はあるんです!それを神にも転用できるようにして、組み合わせて運用すればアマテラス様ごと追い出すことができます!そういう結界を作り出すことができれば!あさひの命を奪わずどうにかなるかもしれないんです!」


自分事ながら、あまりに都合の良い、神無月家らしからぬ楽観的な主張。

そのために遥は頭を地面に擦り付けていた。


「お願いします……お願いします……!」


「……顔を上げよ春瀬遥」


ツクヨミは優しい声で、穏やかな表情でそう言った。


「私とて殺したくて殺しに来ているのではない。僅かにでも可能性があるのならば、そちらに賭けよう」


「ツクヨミ様……!」


「ただし、期限は半年後。2月の中頃だ。空亡の融合が終わるのはその頃。それまでに完成させなければ、その時は一刻の猶予もなく田中あさひの首をはねさせてもらう。いいな?」


「はい!」


遥が顔を上げ、こちらを向く。

遥は泣きそうな顔をしていて、頭を地面に擦り付けたせいで、おでこに擦り傷ができている。


……ていうか、私助かった?

半年の先延ばしだけど、助かったの?

そう考えると、急に涙が出てきた。体が震えた。怖かった。


そうだ。怖かったんだ。


どうしようもなくて、諦めたふりをして心を守ってたけど、本当は死ぬのが怖くて怖くてたまらなかったんだ。

私は遥と抱き合い、二人して大声で泣いた。


彼方は若干困った顔をしていた。



―――



家に帰ると、派手に泣いた跡のせいでお父さんとお母さんにすごく心配された。

なんでもないよと逃げるように部屋に入ると、マグカップにお茶を注いで、持ってきてくれた。

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