振り返り(屑鉄野視点)
俺の名は屑鉄野案山子。
いや、正確に言えば俺の依代となるくず鉄でできたかかしの名前が屑鉄野案山子だ。俺はそのくず鉄のかかしに発生した付喪神だ。
今回は俺が生まれた経緯を説明させてもらおう。
俺が発生する前のこと、神無月家の人間は妖に取り憑かれた野球部の人間と試合することとなった。
俺はその試合の人数合わせに用意された。
神無月家は元からまともに野球で相手をするつもりなどなく、乱闘で妖を倒すつもりだった。最初から打席になど立たせるつもりがなかったから無機物の俺が連れてこられたわけだ。
しかし神無月家には誤算があった。
相手チームが乱闘に応じず、真っ当に野球で挑んできたことだ。
神無月家は大差をつけられてしまうが、鬼宮柚子が守備として覚醒しすることでこれを抑えた。
しかしそれだけでは相手チームの戦術は終わらない。相手チームのカット戦術を使い、点数ではなく投手の肩を削りに来た。これにより神無月家はさらに追い詰められる。
しかし田中あさひの説得により、鬼宮柚子が登板。鬼宮柚子の投球によりそこから先は完封をする。
一方で打撃も神無月家のほぼ全員が日々の鍛錬で鍛え上げたそのフィジカルを発揮し、みるみるうちにその差を埋め、ついには逆転。逆に大差を付ける。
そして最終回裏ツーアウト、事件が起こる。相手チームは小宮花梨を人質に取り、鬼宮柚子の投球と守備を封じる。
打撃は強力だが、神無月家の守備は壊滅的だ。このままではさらなる逆転を受け、負けてしまう。
しかし、相手チームが飛ばした先は俺が守れる範囲だった。
俺は移動して、その球を捕った。フライアウト、ゲームセットだ。
長々と説明しておいてなんだが、どのタイミングで俺に自我が目覚めたのかは俺にもわからない。
集いし願いが、きっと俺に力を与えてくれたのだろう。
だが、元々俺はただのかかし。自分から動くことは本来ない。
これから先、彼らが行く道を助けてやれることは、ほとんどないだろう。
ここからは自分達の力で進むんだ。
彼らの進む道が暗い道だとしても、絆の力でそれを乗り越え、光指す道となれることを祈っておこう。




