幕間 『遥のお宅訪問』
それは私のちょっとした好奇心から始まった。
「そういえば遥って神無月家に住んでるんだよね?遥の部屋ってどこなの」
「え?無いけど?」
―――
私は全力で走り、彼方の部屋に飛び込む。
「彼方あー!遥の部屋ないってどういうことだあー!」
「うわっ。なんだお前。ノックもなしに飛び込んでくるな」
「そんなことどうでもいいのよ!遥の部屋無いってどういうことなの!遥は神無月家のどこで寝てんの!同衾?同衾してんの!?」
私は彼方の胸ぐらをつかんでガタガタと揺らす。
「してないしてない。寝るときは客間か仮眠室だろ」
「雑じゃない!?遥の献身考えたら本人の部屋くらい」
「そのへんにしときなさいよあさひ。多分勘違いしてるから」
そう言いながら、遥は彼方の部屋に入ってきた。
「遥、こいつどうしたんだ?急に胸ぐら掴んてきて」
「多分私が神無月家に住んでると勘違いしてるわ」
「……住んでないの?」
「泊まりになることは多いが住んではいないぞ」
なんだ住んでないのか。
突撃して損した。
「じゃあ遥どこ住んでるの」
「神無月家が手配したマンションだな。そこに1人で住んでいる」
「へー一人暮らしかぁ。遊び行っていい?」
「嫌だけど?なんであんたのこと家に上げなきゃいけないのよ」
断られてしまった、何か交渉材料はないか。
「いつまで胸ぐら掴んでんだあさひ」
「……こいつがどうなってもいいのか!」
「通用すると思ってんの?」
彼方を人質にしようとするが遥にスルーされてしまう。
さすがに無理があったか。まあ私いい子だもんね。
とりあえず胸ぐらは離しておいた。
「彼方は遥の部屋遊びに行きたくないのー?」
「んー?そうだな……近いうちに行っといても良いかもな」
彼方の言葉に遥の表情が変わる。
「え……彼方来るの……?どうしよう今ちょっと散らかってるけど……」
遥がいつもの感じになっている。
その好機を逃す私ではない。
「よかったら掃除手伝いに行こうか?」
こうして私は遥の家に招待されたのだった。
―――
その日の仕事が終わったあと、私は遥の家の前にいた。
遥の家は5階建てマンションの3階。近くにやたらと高いタワーマンションがあること以外は、本当に普通のマンションの一室といった感じだ。
「はぁ……まあ、早めに片付けなきゃいけないと思ってたところだし、二人いれば効率も2倍になるか」
観念した遥が部屋のドアを開け、中に入ると確かにほんの少し物が散らかっており、奥の方に段ボール箱がいくつか積み重ねられていた。
「あれ?まだ荷解き終わってないの?来たのもう結構前だよね?」
「結構時間がかかるやつでね。はいこれカバンに入れて」
そう言って遥は箱を開け、中に入っていたケースに入った何かの部品を取り出した。
「なにこれ?なんの部品?」
「弾薬持たせるのは不安だからパーツをお願いするわ。壊さないでよ」
そう言って遥は銃弾をケースに入れ、自分の荷物の中に入れた。
「……ねえ遥?これからするのってもしかして、銃の密輸?」
「そうよ」
「そうよじゃないよ!何してんの!?というか何させてんの!?」
私の言葉を気にすることもなく、遥は説明を続ける。
「あそこのタワマンの最上階。神無月家の狙撃ポイントなの。私が手が空いたときに住人として銃のパーツを持ち込んで」
「聞いてないよ!絶対やらないからね!」
「あさひあんた何しに来たのよ」
「掃除だよ!」
「はぁ……じゃあまあ今日は適当に掃除しましょうか」
そうして私は雑談しながら遥の部屋の掃除を始めた。
「そういやさ、遥って狙撃が専門なの?」
「できるよう練習したけど専門ではないわね。メインは拳銃でのショートレンジ戦闘」
「あのゴツいライフルで吹き飛ばす感じがメインじゃないんだ」
「対物ライフルなんて海坊主クラス相手じゃないと使えるわけないでしょ。隠蔽どんだけ大変だと思ってんの」
「そりゃそっか」
掃除はしたけど、散らかってるものを片付けたら掃除機かけるくらいで、正直あんまりすることはなかった。




