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第9話 集いし願い

4回裏。三者三振。

5回表。8点取って点数は24対13。


帰るの遅くなるからとコールド勝ちになる23点取ったら彼方の指示でみんなバット振るのやめた。

やめたんだけどその後屑鉄野いて押し出しで1点入っちゃった。


そして5回裏、鬼宮さんの投球でツーアウト。いよいよ追い込んだ。

その時に事件は起こった。


「投球をやめやがれぇ!」


相手チームの選手の一人が、そう叫ぶ。

選手の方を見ると、左腕に小宮さんを捕まえ、右手のナイフを喉元に突きつけていた。


「た、助けて……」


「宮っち!」


「動くんじゃねえ!動くとコイツ殺すぞ!」


鬼宮さんが助けようとするが、脅されて動けなくなってしまう。


「な、何をしているんだね!没収試合にするぞ!」


「してみろよ。そんときはこいつがどうなるかわかってんだろうな」


「くっ……!」


審判も流石に動こうとするが、脅されて止まってしまう。


「その鬼宮って女以外のやつが投げろ。守備する時も鬼宮は動くんじゃねえぞ。さもなきゃどうなるかわかってんだろうな」


私達はピッチャー交代のために集まる。


「……あさひ、これがあいつらの正体だ。自分が有利な時は紳士的に振る舞っていようが、追い詰められたらこうだ」


「そんなこと言ってる場合じゃないわ。どうするのこれ?」


「負ければその瞬間に縁が切れるから、審判が脅しに屈せず没収試合にしてくれるのが一番だが、それを求めるのは酷だろう」


「じゃあどうするの?」


「鬼宮抜きで、この回でのコールド負けはどうにか避ける。攻撃の番になれば小宮を解放しなければ小宮の打席を進行できないから、解放するしかない。……はずだ。あさひ、ピッチャー頼めるか?」


私は無言で頷き、グローブを受け取る。

コールド負けまで21点。どうにかそれまでにラストワンアウトを取る。


私は覚悟を決め、彼方の構えるキャッチャーミット目掛けて投球する。

しかし、私の球はあっさり打たれ、ライトの奥、フェンスそばへと飛んでいく。


「ヒャハハハ!あの鬼宮ってやつがいなければカット戦術なんて必要ない!このまま逆転コールドゲームまでボッコボコにしてやるぜ!」


センターにいるMIHARUさんが走るが、当然追いつけるはずもない。

ボールは地面に落ち……一切バウンドしない。


MIHARUさんも落ちたボールのそばで立ち尽くしている。


「え、なに?何かあったの?」


その場にいる誰もが遠巻きにその様子を見ていると、MIHARUさんのよく通る声が響く。


「審判さーん!ちょっとこっちきてくださーい!」


審判が駆け寄り、様子をみる。そして高らかに宣言する。


「アウト!ゲームセット!」


「ん?あれ、何やってたんだ?」


「あ……う、うわーん宮っちー!」


「宮っち、怪我はない?」


相手チームの選手がナイフを落とし、小宮さんを解放した。

試合に負けたから、取り憑いていた妖が消えたようだ。


しかしアウトとはどういうことだ?

そう思った私達が駆け寄ると、そこにはグローブの中にボールを収めた屑鉄野がいた。


「え?MIHARUさん、こんなとこに置いたの?」


「いや、もっと前の方に」


「じゃあなんで……」


そこまで言ったところで、私は昼にした彼方の言葉を思い出す。


―――


「聞いてるわよ。まず妖って強く望んだら取り憑くもんなの?」

「ああ、取り憑くぞ。人にでも物にでも取り憑くし、妖だけじゃなく神も取り憑く」


―――


「今日一日みんなして選手扱いしたから、なんか取り憑いたの……?」

私達は最後の最後で、くず鉄のかかしに助けられたのだった。

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