第8話 涙がいつか渇くほど速く回ってダイヤモンド
4回表。また私の打順からだ。
一度は抜けたコールド負けがまた見えている状況。
しかしそんなに怖くはない。
「よっと」
もうね。バッチリ見えてる。
投球は限界あるし、守備は何したらいいか分かんないけど、打撃は日々の鍛錬でフィジカルで割とゴリ押しできる。散々に見せられてバット振るタイミングもなんとなく分かってきた。
なんだったらこのチーム自体がもともとそんな強くないの分かってきた。
ボールは何事もなく前に飛び、私は一塁へと進む。
これであとは小宮さんが打ち取られ、鬼宮さんがホームランでコールド負けからは抜けられるだろう。
そう思っていた私に予想外のことが起こる。
鬼宮さんがフォアボールで歩かされた、つまり敬遠策を取られたのだ。小宮さんは予想通り空振り三振だった。
まああんなフィジカルモンスター、冷静に考えると打たせるよりも歩かせたほうがいいに決まっている。私の考えが甘かったのだろう。
そして予想外のことは立て続けに起こるものだ。
橋花さんがホームランを打った。
「ハハハ!どうよ!ちょっとタイミングとか合わせるのに苦戦したが、俺もそれなりに前線出ることがあるんでね!一ノ瀬に指導つけてもらったこともあるんだぜ」
兄弟子だったのかこの人。
まあいいや。3点入った。5対13だ。
この後屑鉄野のあとの上位打線がアウトになるけど、なんだかんだ9回までに勝利が見えてきた。
―――
……予想外のことは本当に立て続けに起こるものだ。
ワンアウトツーストライク一二塁。彼方の打席。
彼方はカット戦術をやり返していた。
「て、てめえいい加減にしろよ……!」
「よく考えたらこうやってフォアボールにしてもらえばバッターアウトにならず屑鉄野も進塁させれるんだよな。バッティングもよく見させてもらったし。いや、いいこと教えてもらったよ本当に」
鍛錬や討伐で鍛え上げられたフィジカルと動体視力で、彼方はひたすらにファウルボールを量産する。
やがて相手のコントロールが狂い。
「よし、じゃあ後頼んだぞ遥」
「オッケー。今のやればいいのよね」
フォアボールになって外道から外道に打席が移る。遥もカット戦術を続ける。正確無比だ。審判も止める気配はない。
その後一ノ瀬師匠もその容赦の無さと器用さでカット戦術を惜しみなく使い進塁。屑鉄野がホームに帰ってきて、打者が一巡して私の打席となる。
もうボール打てないの小宮さんしかいない。
4回表が終わる頃にはもう一巡して、16対13。バレーボールみたいな点数で勝ち越していた。




