第7話 最高に高めた鬼宮のボールで!最強の力を手に入れてやる!
屑鉄野の打席。
くず鉄のかかしの横にバットが添えてバッターボックスに置いてある。何なんだろうこの光景。
こんなの問答無用でスリーストライクを宣言されるだろう。そう思っていた。
しかし現実は違った。寝かせたことでストライクゾーンが激狭になり、フォアボールで出塁することになった。
ノーアウト一二塁。ランナーの1人がただのかかしであることを除けば大チャンスだ。
彼方も遥も一ノ瀬師匠も上手いことバットに当てて、前に飛ばした。
しかし一塁の覆うように乗っているため彼方はベースを踏み損ねアウト、遥は屑鉄野をずらしてベースに踏める場所作ってる間に球が返ってきてアウト、一ノ瀬師匠はベースを踏んだものの屑鉄野の方がアウトでスリーアウト。
結果はMIHARUさんが帰ってきた1点だけ。
あのかかし上位打線を殺す呪いの装備になってるよ。
ちなみにMIHARUさん、野球はやったことないけど一時期バッティングセンターに通っていたらしい。
それであの二塁打か。
そうして私達は三回裏、2対10で相手チームの攻撃になった。
遥は調子良く、すぐにツーストライクを取った。
さっきまで初球から打ちまくってた相手からツーストライクを。
私はなにか、嫌な予感がした。
―――
三回裏、ノーアウトツーストライク、2対13。
ピッチャーは遥から、一ノ瀬師匠、橋花さんと来て、今は私が投げている。
「クソっ!」
私はストライクゾーンに球を放る。
だが、その球はミットに収まることはなく、打たれてしまう。
打球は真っすぐに地面に向かう。いくら鬼宮さんでも取れない。
「……ファウルボール」
審判が渋い顔をしながらファウルを宣言する。
遥の頃から、ずっとこうだ。ずっとファウルばかりを打ってきている。
その結果私達はフォアボールを出し、点差を広げられてしまっている。
「君達、公式戦でもないのにここまで執拗にカット戦術をする意味はあるのかね」
「ルールには違反してないでしょう?なら問題ないですよね?」
「それはそうなのだが……」
素人の私でもわかる。あいつらの目的は点差を広げるなんてそんな生易しいものではない。
投球数を増やし、投げられなくする。それが目的だ。
こちらは固定のピッチャーすらおらず、素人が集まって投げている集団。
一人あたり投げられるのは精々20から30。
それを使い切らせてしまおうということだ。
「審判。タイムお願いします」
「構わないが、君達はまだ続けるのか?棄権してもいいと思うが」
「ありがとうございます。ですがこちらもそれなりの理由がありますので」
「そうか……無理するなよ」
彼方がタイムを取り、こちらに駆け寄る。
相手チームのダーティな戦法と開き直りのおかげで、審判の心証は大分こちらに傾いている。
しかし私達のデッドボール乱闘戦術とは違いルールに則っているため手出しができないといった感じだ。
「あさひ、そろそろ交代しろ。次は俺かMIHARUが投げる」
「……ダメよ。多分2人が投げても同じ」
「だとしてもお前に投げさせ続けるわけにもいかない。肩が壊れるぞ」
「そうね。私はもう投げない。彼方。小宮さん連れてきて」
「小宮を?小宮はそもそもキャッチャーまで球が届かないぞ」
「いいから」
彼方は小宮さんを呼びに行った。
さてあとは。
「鬼宮さん。投げてもらえる?」
「……いや、しかし……私は……」
鬼宮さんの目に迷いが見える。
流石の鬼宮さんも、この状況を放置していいとは思っていない。
なら後一押しだ。
このために彼方に小宮さんを連れてこさせた。
「小宮さん。小宮さんからもお願いできる?」
「もちろんだよ!宮っち。私のこと大事にしてくれるのはうれしいけど、そのためにみんなが傷付くのは嫌だよ!宮っち!投げて!」
「……わかった」
鬼宮さんが今日2度目のマウンドに立つ。
相手は小宮さんでも屑鉄野でもない。彼方だ。
その後、鬼宮さんは圧倒的なパワーでその回の打者を全員三振にした。
バッターが1塁にたどり着くと1塁ランナーに2塁への進塁義務が発生して、ランナーは1塁ベース踏んでてもアウトになるそうです。
フォースアウトって呼ぶんですってさ。




