第10話 太陽の手
遥と優子、そして人質達を背に私は走った。
身体にコウモリがバシバシと突撃してくるが、今更言うまでもなく私には通じない。
正直に言うと怖い。本当に遥が守ってくれるのか。
保護対象なことは嘘ではないと思うけど、保護対象だとしても本当に必要となったら切り捨てるのが神無月家だと知っているから。
でもだからって引き返すかと言われれば答えはノーだ。
校門を出て結界の外に出たら、私は即座に彼方に連絡を入れる。
彼方が出るまでたった3コール。気を急く私にはそれがやたらと長く感じた。
「もしもし彼方!?」
『あさひか。いじめの件はどうなった』
彼方は呑気に優子のいじめの話をする。
「そんなのはあと!結界が破れた!妖が学校に入ってる!今すぐ来て!」
『なんだと!?あさひ!強力な妖は何体いる!』
「ドラキュラ伯爵ってやつがいる!早く来て!」
『ドラキュラ伯爵か……』
彼方は電話の向こうで何かを考え込む。
「彼方!どうしたの!」
『悪いがあさひ、一番近いやつでも直接行くには5分以上かかる』
「そんな……」
この状況での5分。とてつもなく、とてつもなく、とてつもなく長い。
『あさひ、ドラキュラ伯爵ってことは、屋外にいるんだな?』
「う、うん。運動場にいる」
『よし、運動場のドラキュラ伯爵のところへ行け』
「でも彼方、弓も無いしみんな屋内に避難してるんだよ?」
『説明する時間はない!早く行け』
「う、うん!」
私は電話を切ると、再び結界の中に入り、彼方の言葉を信じてドラキュラ伯爵の待つ運動場に向かう。
コウモリは相変わらずただいるだけだった。
運動場に着いた私は迷わずドラキュラ伯爵の方へと走る。
「む。『太陽の手』が来てしまったか。ならばこの辺りで去るとしようか」
ドラキュラ伯爵は身体に張り付いている御札を剥がすと、悠々と飛び始める。
「ハハハハハ!お互いに残念だったな!またどこかで会おう!その時はもっと面白い趣向を凝らして現れてやろうじゃないか!ハハハハハ!」
その瞬間だった。
笑って逃げようとするドラキュラ伯爵の羽根を、弾丸が撃ち抜いた。
どこから?決まっている。学校の外、どこかの狙撃ポイントからだ。
直接行くのに時間がかかるから。狙撃手に狙撃をさせた。そういうことだ。
そしてようやく合点がいった。私が運動場に行くよう指示された理由が。
「ま、待て『太陽の手』よ!落ち着け!」
狙撃され墜落したドラキュラ伯爵を、思いっきりぶん殴る役目だ。
「吹き飛べぇぇぇええ!!」
私の怒りのこもった一撃に、ドラキュラ伯爵は叫び声をあげる時間もなく消し飛んだ。
コウモリたちは以前と違いその場で消滅した。




