幕間 『春瀬遥の帰還』(彼方視点)
神無月家の2階。俺は自室で窓の外を眺めていた。
「よ、彼方」
ノックもせずに、部屋の中に入って来てフランクに声を掛けてくる。
当主である俺にこんな無礼なことする間柄のやつ一人しかいない。
「遥。おかえり」
「なんか全然嬉しそうじゃないわね彼方。幼馴染の帰還だぞー」
「お前単体なら嬉しいんだけどな」
俺は少しうつむき、眉間を押さえる。
「お前がわざわざ来てるってことは、あいつがこの町に来るかもしれないってことだろ」
「そうね。あるいは既にこの町に入り込んでる可能性すらあるわ」
俺は、俺は神無月家の当主として戦って、勝てるんだろうか。
「……まあ、それはさておき、久しぶりの故郷はどうだ?」
「どうだ?も何も。来たばかりでまだ夕飯すら食べてないのよ。来てからの出来事なんてあのド素人に会ったことくらい」
遥はあさひのことが気に入らないらしい。
「ねえ、彼方。なんであいつにそんな肩入れしてんのよ」
遥に言われ、俺は少し思考を巡らせる。
あいつに肩入れする理由ね。
「いくら神の力を使える『太陽の手』だからって、作戦に参加させる必要はない。神無月家で監視しとけば充分なはずよ」
「……多分、お前に似てるからだな」
「はあ?あのド素人が?私と?」
「似てると思うぞ。口の悪さとか」
「ありえないわね。だいたいあのド素人は私と違って彼方のこと……」
「……」
「……な、なんでもないわ。じゃあね」
遥は慌てて部屋から出ていこうとする。
「あ、出ていく前にひとつだけ、遥、ツインテールやめたのか?」
「ふん、あんな子供っぽい髪形とっくに卒業したわ」
「そうか、結構好きだったんだがな、お前のツインテール」
「……まあ、たまにはしてあげてもいいわ」
遥は顔を少し赤くして、今度こそ部屋を出ていった。
「まあ、あいつは遥と違って俺のこと嫌いだよなあ」
話を終えて窓の外を見ると、遥の言うド素人がしょんぼりした顔で神無月家に帰ってきているのが見えた。
俺はひとまず迎え入れてやるために、玄関に向かった。




