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やはり四天王ともなると互いのこともよく知るのだろうか。
笙歌の書は男らしい書だ。かすれ具合や線の力強さはありつつ、基礎から大きく脱線しない。基本的に真面目な人なのだろうと藤乃は思った。千尋も基礎に忠実だが、千尋の書は君主に仕える武士のような矜持を感じる。
「おっと、遅くなったね。笙琴はもういいよ、次回金曜日にまっているからね。夜道に気を付けて」
時刻は21時半を回っている。少しの見学のつもりが長居しすぎてしまった。
「そうですね。私はこのあたりで。笙歌さん、お会いできて光栄でした」
藤乃が荷物を持って立ち上がろうとすると、笙歌の表情が険しくなった。
「先生……彼女は送った方が」
鷹虎は笙歌の目を見て、一瞬間をおいてからやはりゆるりと微笑んだ。
「夜道は危ないからね。千尋に行かせよう」
そうして、藤乃はやたら過保護な総師範だと思いながら、千尋に送られて屋敷を出たのだった。
「——で、彼女になにがあるの?」
鷹虎は笙歌の書に朱墨を入れながら口を開いた。藤乃はすでに屋敷を出ている。
「夢に彼女が出てきた。大きな何かからから逃げている様子で。まさか今日彼女に出会うとは思っていなかったから、予知夢とは関係ないかと思っていたんだが」
先ほどより砕けた口調で笙歌が鷹虎の筆さばきを見る。
「今日のところは嫌な気配は感じなかったけど、要注意だね。金曜日まで何もなければいいけど」
「珍しいな。先生が人を気にするなんて」
「ふふっ、ただの気まぐれだよ」
藤乃は藤棚にいた。実家の近くにあった藤棚に似ている。
藤乃が花の房に手を伸ばした。
『あ……』
さぁっと音も立てず藤の花は色褪せ、萎れて枯れていく。
『どうして……』
消えたくない、もっと生きたい、愛されたい、認められたい、そんな花々の声が胸に刺さる。
枯れていくのは自分のせいだと藤乃は理解していた。
でも藤乃にもどうしようもなかった。
ごめんなさいとも言えず、言葉をなくして蹲る。
そうしていると暗い影が伸びてきて藤乃に襲い掛かる。藤乃は抗う気力すらなく、影に飲み込まれ――目が覚めた。




