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「かまいません」
ぶっきらぼう。メディアで見る笙歌とは全く違う。だが甘いマスクと凛とした佇まいはそのものだ。
あっけにとられていると、なんということもないように鷹虎が緩やかな微笑みを讃えたまま「普段はこんな感じだよ」と小さく言った。
「すみません、お邪魔はしませんから」
「かまわないと言っただろう。人前で書くのは慣れている」
はぁ、と藤乃は小さく返事をして部屋の隅に座った。
「先生、お願いします」
「はいよ」
テーブルで背筋を正してピリピリとした笙歌とは反対に、教室の正面に指導用のテーブルで片肘をつく鷹虎はずいぶんリラックスして見える。
鷹虎は何枚が書く笙歌を見ていたが、その一枚を提出するとふぅんと眺めた。
「笙琴、こちらにおいで」
不意に呼ばれてびくりとする。意味も分からず笙楽のもとへ行く。
「君ならどこをどうする?」
書かれているのは草書で書かれた「花鳥風月」だ。正直、藤乃はもっとすごいことをするのかと思っていたから拍子抜けだ。
「花のバランスが良くないのと、月はもうちょっと払いを大きくしても……。あ、すみません、出過ぎたことを」
「いや、正しいと思うよ。にしてもなんで花鳥風月を半紙で?初心にでも帰ったのかい?」
「次の収録が花鳥風月なんですよ。先生がメディア嫌いなせいでこっちが迷惑だ」
「なるほど。でも僕は好きだよ、君の『外面』」
鷹虎はくすくす笑った。本当は大笑いしたいのをこらえるように。
どうやら笙歌はスケープゴートの笙楽の弟子としてメディアに出させられているようだ。
「でも私も好きです。笙歌さんの添削わかりやすいし、いいところちゃんと見つけて褒めているから見ていて楽しいですよ」
以前に見たテレビ番組を思い出して言った。
「持ち上げるのが俺の仕事だからな。千尋にやらせたら嫌味連発で収録スタジオが北極になる」
ああ、確かに、と鷹虎は声を殺して笑っている。
「そうですか?千尋先生、優しいのに」
「お前さんはヤツのお気に入りだったんだろうよ。あそこまでの腹黒はなかなかいねぇよ」
「腹黒……ですか」
藤乃はきょとんとした。自分が知っている千尋とは似ても似つかない言葉だったからだ。




