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込まれ――目が覚めた。
「嫌な夢」
ここ数日同じ悪夢にうなされていた。夢見が悪いのは眠りが浅いせいか、体がだるく頭痛がする。
「やっぱりあれかなぁ……」
地元を離れるとき祖母にもらったお守り。鞄につけていたお守りだったが紐が劣化していたようで切れてしまっていた。
「でもその後に笙楽先生の指導が決まったんだから、プラマイゼロよね」
薄手の長袖のパジャマを脱いで今日は濃い色の服を選ぶ。今日は金曜日。初めてのお稽古の日だ。書道の日は暗い色の服を選ぶ。墨が飛んでもいいようにだ。でも結局書道がメインの生活を送る藤乃のクローゼットには黒い服ばかりだ。
髪はお団子にまとめて、それから洗面を済ませる。簡単な朝食を少しだけつまんで、朝のニュースを聞きながらメイクを始める。
「クマすご……メイクのりも悪いし」
もともと色白だった肌がさらに青白い。
藤乃はショッピングモール内の仏具店アルバイトしていた。熨斗や香典袋に名前を代筆することが多々あり、藤乃は重宝されている。
その日も朝からシフトが入っていて、従業員出入り口から中に入り毎日と変わらないような仕事をこなす。正社員の仕事を探すべきだとは前々から思っている。まして鷹虎の指導は20時から。よほど残業の多い職場でなければ就業は可能だ。
だがもし仕事のせいで稽古に、練習に支障が出たら?
それだけは絶対に嫌だ。
仏具店は基本的にお客さんは多くない。今日ものんびりと仕事を終えて遅番さんと交代して店を出た。
レディース服のショップの前で藤乃はあっと声をあげた。
「雪奈ちゃん!」
「藤乃~!ちょっとあんた笙楽先生のクラスに昇格したらしいじゃない!なんで言わないのよ~」
雪奈は藤乃より先に千尋のクラスにいた門下生だ。ショップ店員をしているらしく、今日は休みのようだった。
明るくてサバサバした姉御肌でスタイルもいい。今日もテーラードジャケットにレザーのミニスカート。細くて長い脚がピンヒールに続いている。
「ごめん、何かバタバタしてて」
言わなかったのは、嫉妬を恐れたからだ。先輩にあたる雪奈を出し抜く形で昇格した。雪奈の心情は、藤乃だったらと思うと考えることを拒否した。
「おめでとうじゃん! 今度お祝いに飲みに行こう!」
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