表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
険しきを冒す者たち  作者: 村松 柊榎
第二章︰絶海の遺跡群
14/17

第14話︰伝承武器

「さて、ついにお待ちかねの報酬だ!」


ミラの魔力が回復し、各メンバーの治療も終わったところで、俺たちは試練の間の奥、光を放つ紋章の描かれた扉の前にやってきた。

試練の間の入口と似たような構造のそれは、方解巨獣(カルサイトベヒモス)が倒された事により既に封印が解かれている。


「開けるぞ。」


扉の紋章に触れ、そこから伝わるように紋章の光が強まっていく。


ごごごごごごごご


大きな石の扉が、開く。



扉の先は、小さな部屋だった。


部屋の真ん中に、祭壇のようにして置かれた、よく目立つ石の箱がある。


「アレス、応晶振子(ディテクターペンデュラム)は?」

「反応なし、罠じゃないよ。」


俺は、仲間たちが息を飲んで見ている中、その箱をゆっくりと開けた。


「なぁアレス、これって……」

「間違いない、伝承武器(レジェンダリーウェポン)だね。」


大当たりだ。迷宮探索において、最も価値の高いとされる戦利品を手に入れた。


「伝承武器、形状は剣かしら。ここまで来た甲斐もあったわね。」

「これで、私たちのクランの3本目の伝承武器(レジェンダリーウェポン)だね。おめでとう、ノアルさん!」


シズクとミラも最高の戦利品に喜んでいる様子だ。


「なぁマスター、その“伝承武器(レジェンダリーウェポン)”って、なんだ?」


ただ1人、この戦利品の価値を知らない者は、他の仲間たちの様子に困惑していた。


伝承武器(レジェンダリーウェポン)、迷宮で発見される遺物の1つだ。世界のどこかで語り継がれている伝説や神話に登場する、名のある武器。それらに似た見た目と性質を持つ迷宮産の武器、それが伝承武器(レジェンダリーウェポン)だ。」


俺は、普段使っている槍をアイクに見せる。


「俺の槍や、アレスの剣も以前迷宮で手に入れた伝承武器(レジェンダリーウェポン)だ。」

「確かに、マスターの槍ってよく見たら変な形してるもんな。」


俺の使っている槍は、十字架を模した装飾が施された赤い穂先が特徴的な、儀礼用と言われた方が納得出来る見た目のものだ。


伝承武器(レジェンダリーウェポン)には、それぞれ元となった伝承が存在していて、伝承を深く理解し真の名を呼ぶ事で、本来の性能を発揮する事ができるんだ。」

「すげぇ!じゃあマスターの槍はなんって名前なんだ?」


アイクが興奮気味に聞いてきた。やはり、そこが気になるよな。


「それは……」

「それは?!」


「分からん。」


ガクッと、アイクが崩れ落ちそうになった。


「この槍の伝承を知ってる人が、中々見つからなくてな。今も探してる最中だ。」

「なるほどな。」

「でも、アレスの剣の名前は分かってるぞ。」


アレスが話の流れを読んで、剣を抜いてアイクに見せてくれている。

金色に輝く刀身に、王冠を模した装飾、まさに「聖剣」といえるその見た目。


「おい、まさか?!」


アイクは、その可能性に至ったようだ。


そう、その剣の名は、


「王導剣エクスカリバー、世界一有名な聖剣の伝承武器(レジェンダリーウェポン)だ。」


アイクが、今までに見た事ないくらい目を輝かせていた。


「マジか?!うおお、すげぇ!じゃあアレス、あの勇者みたいに光の剣技が使えるのか?!」

「いや、僕はまだこの武器の真の力を発揮できないんだよ。だから、まだ単に頑丈で斬れ味のいい剣ってだけだね。」


目に見えてガッカリするアイク。


「それで、だ。新しく見つかったこの剣、アイクが使ってみないか?」

「えっ、オレがか?!」


想像もしていなかったといった反応で驚愕するアイク。今日の彼はとても情緒が忙しそうだ。


「いいのか?」

「俺もアイクも、もう伝承武器(レジェンダリーウェポン)を持ってるし、ミラは剣を使わないだろ?シズクが使う剣技は、またちょっと違った形状の剣を使うしな。」


アイクは、恐る恐るその剣を手に取る。


紺色の刀身を持つ、細身の直剣。その刀身は、宝石のような光沢を放っている。


その輝きに、彼は感動した様子だった。


「なぁマスター、これ本当にオレが使ってもいいのか?」

「あぁ、今日からそいつが、お前の新しい相棒だ。」


~~~~~~~~~~


俺たちは、あれから試練の間を出て、第19層の探索を再開した。


特に苦戦する事もなく迷宮を進み、この層のほぼ全てのマッピングが終わろうとしていた。


「そういえばマスター、まだ第20層への階段を見てねぇけど、そろそろ見つかるんじゃないか?」

「そうだな。アイクもついにそういうのが分かるようになってきたか。」

「おうよ、伊達に3年もマスターのところで冒険者やってねぇってんだ!」


頼もしくなったものだ。


「噂をすれば、だね。ノアル、階層の境界の反応があったよ。恐らく第20層への階段だ。」


応晶振子(ディテクターペンデュラム)の反応を確認したアレスが、そう告げる。


「すごいなアイク、まさかここまで勘が鋭いとは思わなかったよ。」

「いやぁ、流石にたまたまだぜ。そんでよぉマスター、このまま次の階層も探索していくのか?」

「まぁ、軽く様子見だけだな。境界付近でどんな魔物が出るかくらいは確認しても……いや、無しだ。」


俺はその光景を見た瞬間、この探索を19層で切り上げることを決断した。


「そうか、この迷宮はここ(第19層)が終点か。」

「……おいマスター、ありゃ、なんだよ。」


アイクも同じものを見たようだ。


第20層へと続く階段、その先にあったのは、今までの白い石で出来た洞窟とは、似ても似つかない場所。


床も壁も、全てが。

妖しく蠢く、鮮血色の肉の壁で造られたている。

それは、もはや迷宮というよりも、ナニか巨大な生き物の、体内のような。


「迷宮の最終階層、通称、“肉の間”だ。」

「なんで、あんな風になってんだ。」

「あれこそが、迷宮の本体だからだ。そもそも、迷宮とは何か、お前は知ってるか?」

「何って、地下に広がる魔物とか罠とかがある洞窟だろ?」


他のメンバーが落ち着いているのを見てか、アイクも驚愕と恐怖から立ち直り、俺の質問に率直な答えを返す。


「それはあくまで表面的な理解だ。迷宮の正体は、“高度な伝承魔法を扱う巨大な魔法生物”だ。」

「伝承魔法?」

「世界の様々な伝承、もっと言えば、人の共通認識を形にする魔法だ。それによって、迷宮はゴブリンやオーク、ドラゴン、ベヒモスといった童話や伝説に出てくる“魔物”と、多くの人が考える典型的な“罠”を作り出す。そして、伝承武器(レジェンダリーウェポン)や、希少な鉱石など、人の考える“宝物”で人間を誘き寄せ、狩る。それが“迷宮”だ。」

「なるほど……って事はなんだ、オレ達は今、デケェ生き物の腹ん中に居るって事かぁ?!」


理解が速いな。


「まぁ、そういう事になるな。」

「おいおいおい、大丈夫なのかよそれ!めちゃくちゃ危険じゃねぇか!」

「アイク、忘れたのか?元より迷宮探索ってのは、危険なものだろ。」

「そうか。確かにそうだったな!」


笑いながらそう言うのを見る限り、これで迷宮が怖くなった、なんて事はなさそうだ。


「だが、ここから先は別だ。人を誘い込む目的の今までの階層とは違って、この先は迷宮にとっての“防衛機構”だ。入ったらまず、確実に死ぬ。」

「そんななのか?」

「この巨大な迷宮を維持している生き物が、その全能力を侵入者の排除に使ってくるんだ。1体でも俺たちが束になっても勝てないレベルの魔物が、群れで出てくる。空間には常に人体を蝕み魔法の発動を阻害する瘴気が発生し、あの肉の壁全てが殺意を持った罠を内包している。」

「うげ、ンなもんどうやっても無理じゃねぇか。」

「そうだ。実際、肉の間を攻略した記録は、冒険者ギルド創立以来、たったの1度しかない。」

「そりゃそ……いやその1度はどうやったんだよ!」

「現代最強の冒険者クラン『キャメロット』が、マスターのアルトリウス率いる大規模レイドを組んで攻略したらしい。到底俺達じゃ真似出来んな。ま、つまるところ、俺たちにとってはここがこの迷宮の、実質的な終点だ。」


こうして、俺たちは今回の迷宮探索を切り上げることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ