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険しきを冒す者たち  作者: 村松 柊榎
第二章︰絶海の遺跡群
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第12話︰方解巨獣

「な・に・が、“俺たちの、敵じゃねぇな”なのよっ!ウチの攻撃もあんたの攻撃も、全然効いてないじゃない!どうすんの、これどうすんのよ!」


ドスンドスンと、大地を響かせながら走る方解巨獣(カルサイトベヒモス)が、俺とシズクを追ってくる。


「策はある。今はとにかく逃げろ。」


言いながら、足元に魔法陣を展開、稲妻のような魔力が爆ぜる。


「『加速跳躍(アクセルステップ)略式展開(インフォーマル)』」


発動まで1秒強、発動速度に特化した簡易的な『加速跳躍(アクセルステップ)』。方解巨獣(カルサイトベヒモス)に追いつかれる直前、真横に高速で跳んで回避。


「あっズルい!」


方解巨獣は突如視界から消えた俺を無視して、そのままシズクを追い続ける。


「そのまま引き付けてろ、《撃穿(ぺネトレイション)》っ!」


槍先から放った魔力の光は、ヤツの頭部を真横から撃ち抜いた。だが、


「やっぱり、あまり効いてないな。」


何事も無かったかのように、方解巨獣(カルサイトベヒモス)はシズクを追いかけている。


「ちょ、追いつかれるわよ!なんとかしなさいって!」


シズクと方解巨獣(カルサイトベヒモス)との距離が詰まっていく。


「シズク、こっちだ。」

「アレスーっ!」


シズクが逃げた先で、アレスとすれ違う。


「《撥衝剣(インパクトリバース)》」


アレスが護剣術で迎え撃つ。

突進してくる大型種を、衝撃を利用して弾き返す剣技、《撥衝剣(インパクトリバース)》。ダメージはほぼ無い、だが動きは止まった。


「ミラ、アイク、今だ!」



「『光擲槍(ライトジャベリン)』」

「『炎砲弾(ファイヤーキャノン)』」


火属性と光属性の上級攻撃魔法が発動し、巨大な炎の塊と、光の投擲槍が方解巨獣に叩きつけられた。


~~~~~~~~~~


方解巨獣(カルサイトベヒモス)

方解石の迷宮の固有種で、試練の間でのみ出現が確認されている。


その記録にて、対峙していた冒険者はBランククランの主力パーティ。討伐は困難と判断し、撤退したとある。故に情報量は少ないが、おおよそはベヒモス種に準ずる生体である、とあった。


ベヒモス種の特性は大きな図体と膨大な魔力、そして異常なまでの再生力が挙げられる。

肉体の表面を覆う岩のような外殻は、方解竜(カルサイトドラゴン)方解岩兵(カルサイトゴーレム)ほどの硬度は無いが、人の振るえるどんな武器の刀身よりも分厚く、外側から斬りつけても決して肉まで届かない。


試練の間に入って、俺は初撃で《穿撃(ぺネトレイション)》を放った。

武器の先端、一点に魔力を集め、突きの動作と共に放つ、武器のリーチを無視した武技。

奴の外殻を貫通してダメージを与えられる、そのはずだった。


しかし、奴にはほとんど効いていなかった。


~~~~~~~~~~


被弾箇所から煙をあげながら、方解巨獣(カルサイトベヒモス)が倒れていく。


「よし、想定通りだ!」


純粋に魔力を撃ち出す《穿撃(ぺネトレイション)》が命中した時の挙動から、あの厚い外殻には多くの魔力が含まれていると俺は読んだ。《穿撃(ぺネトレイション)》は外殻の魔力とが相殺されて、奴の内側まで届かなかったのだ。


高い破壊力を誇る上級魔法による2人同時攻撃、それによって外殻ごと吹き飛ばす。これが、俺の導き出した、方解巨獣(カルサイトベヒモス)の倒し方だ。


「やったか?!」


そんな事を言いながらアイクが駆け寄ってくる。


「だと、いいんだけどな。」


頭の2割ほどを破壊したんだ、普通の生き物であれば、あれで絶命するはず。だが、


「どうやら、そう簡単にはいってくれなさそうだ。」


方解巨獣(カルサイトベヒモス)が、頭部の欠けた巨大な魔物が、起き上がる。


その傷は、既に再生を始めていた。


~~~~~~~~~~


上級攻撃魔法。


世界で最も多く使われている魔法体系である「属性魔法」において、2番目に高位の魔法。

消費魔力が多く、制御も難しいが、その分破壊力は非常に大きい。


それを、2発同時に、直撃だ。


「そんな……倒せて、ないの?」


無傷とは言わない。大きく損傷した頭部を再生した分、体全体に纏う魔力は減っているように感じる。今の攻撃を、あと10回ほど繰り返せば、魔力を削り切って倒せるだろう。でも、


「だめ、魔力が持たない……。」


私の『光擲槍(ライトジャベリン)』は、撃ててあと6回、たぶん、アイクくんの『火砲弾(ファイヤーキャノン)』はもっと少ない。


私たちじゃ、あの魔物には……


「あれでもダメか。なら、そうだな。最上級魔法だ。」


ノアルさんが、そんな事を呟くのが聞こえた。最上級魔法、確かに使えるならば、あの魔物に一撃で致命傷を与えられるかもしれない。

このパーティで属性魔法を使うのは、私とアイクくんの2人。もしかして、彼はいつの間にか使えるようになっていたのだろうか、火属性の最上級魔法『爆炎(エクスプロード)』を。


「最上級?なもんオレは使えねぇぞ!」


使えないらしい。なら、誰が?


「ミラ、頼めるか?」

「ほぇ、私?!」


唐突に声が掛かり、驚いて変な反応をしてしまった。


「ムリムリ、ムリだよ?あんなのまだ実戦じゃ1回も使ったことないし、練習でもまだ失敗しちゃう事が多くて……こんな土壇場で、急になんて。」


絶対に失敗する。そんな確信がある。


なのに。


「ミラ。」


ノアルさんが、すこししゃがんで、目線を合わせ、私を真っ直ぐに見つめる。


両肩を、優しく掴みながら、言う。

あの日と、同じように。



「ミラ、お前なら出来る。」



それだけで、今までの確信は砕け散る。


「うん。」


今なら、出来るかもしれない、そう思えた。

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