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険しきを冒す者たち  作者: 村松 柊榎
第二章︰絶海の遺跡群
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第11話︰試練の間

第19層の探索は、驚く程に順調に進んだ。

何度も出てきた方解岩兵(カルサイトゴーレム)だが、アレスとシズクの連携によってほぼ一撃で仕留められた。

方解岩兵以外にも、大型の白い蛇「方解大蛇(カルサイトサーペント)」や、地属性魔法を飛ばしてくる浮遊する石塊「地精(アースエレメンタル)」といったそこそこ危険度の高い魔物が現れたが、俺たちは特に苦戦する事も無く倒していった。


~~~~~~~~~~


「『癒しの光(ヒーリングライト)』」


優しい魔力の光が、俺を包み込む。

方解大蛇(カルサイトサーペント)の尾が掠ったときの脇腹の傷が、みるみると癒えていく。


「ありがとなミラ、いつも助かるよ。」

「えっと、うん。もう大丈夫?」

「あぁ、全快だ。さすがだな。」

「よかった。あの、あんまり無理しないでね。」

「分かってる。」


ミラの回復魔法の腕は良く、命に関わらない程度の怪我であれば大抵は治せる。

だから、ミラがいる時の戦闘であれば、致命傷以外の攻撃はある程度許容しながら、強気に攻める事が出来る。

ミラとアレスはあまりいい顔をしないが、総合的に見てパーティの損耗を減らせる一手であれば、俺は迷わず被弾前提で突っ込む。


「いつも心配かけて、ごめんな。」

「ノアルさん……。」


それから気まずい沈黙が続く。


「ん?この反応、もしかして、もしかするかもしれないよ!」


沈黙を破ったのは、アレスだった。


「もしかするって……っ、まさか!」


応晶振子の反応を見て、俺はアレスの発言に納得する。


「お、なんか見つかったか?」


アイクが興味ありげに後ろから覗き込んでくる。


「確証は無いけど、まぁ行ってみれば分かるよ。」

「なんだよ、勿体ぶりやがって。」


そういえば、アイクは“あれ”を見るのは初めてか。

きっと驚くだろうな。


~~~~~~~~~~


「な、何だこりゃあっ?!」


応晶振子の反応を辿った先には、やはり“それ”があった。


「デカい、扉だよな?」


大型の馬車が、数台並んで通れる程大きな、石の扉。

その表面には、独特な紋様が刻まれている。


「やっぱりな、“試練の間”だ。」


案の定いい反応を見せてくれたアイクに対し、俺は得意気に解説を始める。


「試練の間とは、迷宮の深層で稀に生成される部屋の1つだ。中の空間には強力な魔物と、封印された扉がある。扉の封印は魔物と紐付けられ、魔物を倒さない限り開く事は無い。強力な魔物を打ち倒し、封印されしその扉を……」

「とても強い魔物がいて、それを倒すと宝が手に入る部屋だよ。」


俺の得意気な解説は、隣のサブマスターによって妨害を受けた。


「それで、やるのかい、ノアル?」

「そりゃやるさ。」


指の関節をコキコキ鳴らしながら、俺は不敵に笑う。


「ねぇノアル、強力な魔物って……大丈夫なのよね?」


シズクが不安そうに聞いてくる。


「強力っつっても、今の俺たちの敵じゃねぇよ。少なくとも、方解竜より強い魔物が出たって記録はフュージアのギルド支部には残ってなかった。」

「そう、ならいいけど。」


「ま、何かあったら僕がキミを護るから、安心して。」


アレスが優しげな口調で、そんな事を言い出す。


「うんっ!ありがとアレス、ウチも精一杯がんばるね!」


なんかさっきまでと態度違わないか?

はぁ。


「ん?」


くいっと、マントの縁を後ろから引っ張られる。


「どうしたミラ、お前も不安か?」

「うん、やっぱり危険な場所はね。」

「そっか……なんっつうか、アレスじゃ無いけど、ほら。ミラの事は俺が護るからさ。」

「えと、そうじゃなくてね。」


あぁ、こいつが何を心配しているのかは、分かる。

自分の事よりも、周りの仲間の事を真っ先に心配してくれる、優しい子だ。


「だから、俺の事は、ミラが護ってくれ。」

「え?」

「お前の『反射障壁(リフレクトウォール)』は、俺がこの世で一番信頼してる防御手段だ。お前が居てくれれば、俺は安心して戦える。」


「頼んだぞ、ミラ。」

「うん、ノアルさんの事は、私が絶対護る。」


~~~~~~~~~~


「じゃぁ、開けるぞ。」


各々、装備の最終確認を済ませ、武器を構えながら、扉の前で待機が完了している。


試練の間、攻略開始だ。


扉に描かれたの紋章の真ん中、鍵のような模様に軽く触れる。


キーン、と音を立てながら、扉全体の紋章の光が強まる。そして、


ごごごごごごごご


重厚な音と共に、大きな扉が開いていく。

その先の空間、「試練の間」の様子が、少しずつ見え始める。


ナニカと、目が合った。


悪寒が走る。


生物としての、本能的な恐怖。


やがて、部屋の全貌が見えた時、その正体を認識する。


方解竜をも超える巨体、白く光沢のある体表、そして、その巨体の2割ほどを占める超巨大な顎をもつ、四足歩行の獣。


方解巨獣(カルサイトベヒモス)、か。」


脅威度は方解竜と同格、だがやはり。


「俺たちの、敵じゃねぇな。」


俺は再び不敵に笑い、槍を構えて駆け出す。


「行くぞお前ら、“バベルブリゲード”の力、見せつけてやれ!」

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