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孤独の人  作者: 神の恵み
異世界編
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第93話 詠唱魔法


「すごい! すごいじゃないか!」


「アキュラさま、それ、俺が初めてルーシーの魔法を見た時と同じ反応じゃないすか!はっはっは!」


リックが大笑いしながら説明してくれ、俺も笑った。



「2人とも、めてるのか、からかっているのか分かんないわよ!」


「ルーシー! 次、ファイアーアローを見せて!」


「アキュラさま、本気ですか? からかってるなら、もうやりませんよ!」


「本気も本気。俺まだ学園で魔法を習ってないから…頼むよ~」


「じゃ、やりますけど…本当に大した事はないんですからね!」


再び夕焼け空に右手を伸ばして詠唱した。


「内なる精霊に告げる! 我が怒りを、炎の矢にして打ち出せ!ファイアーアロー!」


本当に炎の矢が飛んでいった。

確かに、あの速度なら距離があれば避けられてしまう。

だが、魔力濃度は高いのだろう、火の温度はそこそこ高いようだ。


だが注目点はそこではない。

詠唱による魔法発現時に一瞬現れる魔法陣は、スクロールのものとは違い小さかった。


「ルーシーはスクロールも使うから分かっているだろうけど、詠唱魔法の魔法陣は小さいよね?」


「はい。だから威力は大した事ないって言いましたよね…」


そういう理解をしていたのか…


「悪いんだけど、もう一度、ファイアーアローとファイアーボールを見せてくれる?魔法陣を見たいんだ」


そう言うと、俺の意図を察したのか、何度か詠唱魔法を見せてくれた。

詠唱魔法が発現する一瞬だけ、小さい魔法陣が出る。

それを観察した結果『内なる精霊に告げる!』が起動部分のようだ。


要は円周部が1つしか無く、内側はスクロールと同じで初速と熱量の計算式。


「ルーシー、詠唱呪文って『内なる精霊に告げる!』のあとは、みんな各自で工夫するの?」


「はい。『魔法の基礎』という教書に、そう書いてありますよ」


あれが詠唱魔法の教書だったのか…。


「アキュラさま、本人は『大した事ない』が口癖ですけど、他の生徒と比べたらルーシーのは1級品ですよ」


「リック~、あなたは大袈裟なのよ。スクロールを1回でも使ったら、詠唱魔法なんて使えないわよ」


2人の会話はよく分かる。

だが、第2円周部を呼び出す言葉が見つかっていないだけかも知れない。


「ありがとう、二人とも。お爺さんの教書を読んでみるよ」


「いいえ、どういたしまして」


マジで、『魔法の基礎』を読み込もう。


屋敷に戻ると、お爺さんも学園から戻っていて、夕食が始まろうとしていた。

席について、食事が並べられる。


「では、頂こうか…」


お爺さんが手を付けたのを開始の合図に、夕食が始まった。

普通に夕食を食べ終えて、お茶の時間になり、お爺さんが話し出した。


「今日、執事見習いと侍女見習いが到着したので、紹介をしておく。ローリー、ハナ、入ってきなさい」


セバスの縁戚から選ばれたというローリーは、目立った欠点が無い素直そうな14歳。

そしてイスラが選んだ侍女見習いのハナは、ウォーレン・グラハムという侯爵の従弟いとこ、つまり父ヘンリーの叔父のところで育てられた少女で14歳。


「この2人は来年から学園に通いながら、見習いとして屋敷で働くことになった」


「アキュラさま、ローリーでございます。どうぞよろしくお願いします」


「アキュラさま、ハナでございます。どうぞよろしくお願いします」


判で押したような挨拶だが、練習したであろう事は分かる。


「この2人は別館の1階に住み込み、アキュラの用事を担当する事になる。仕事関連はローリー、生活関連はハナという担当だ。いま1階にいるエミリーは、本来の役目通りアキュラの部屋に移動してくれ。よいな?」


俺に有無を言わさないとばかりに、エミリーに念押しした爺さん。


「はい、侯爵さま」


エミリーもここまで言われれば、即答するしかない。



「つまり来年度から、俺とローリーとハナが一緒に学園に通うという事ですね?」


「そうだ、それまでに侯爵家の馬車は出来上がるし、馭者ぎょしゃも手配してある。もっとも、ローリーもハナもアキュラの護衛を兼ねて馬車に乗り込むのだがな…」


「あ…そういう事ですか…ですがハナは女の子ですよ?」


「その点なら心配はいらん。わしの従弟いとこのウォーレンは戦闘団での暴力事件で王都を追放された脳筋だ。そしてハナは、そのウォーレンがお気に入りの弟子で、お前の嫁にして侯爵家の戦闘団を任せる計画さえ有るくらいだからな」


そんなに強そうには見えないハナだが、確かに贅肉ぜいにくは付いてなさそうな感じだ。

目が合うと、顔がいきなり赤くなった。


「あっと、失礼…」


「いえ、アキュラさまなら大歓迎です」


「はっはっは!大歓迎か…さすがウォーレンのお気に入りだ」

「それと、来年度から学園は男女共学になる!」


「ん? 今でも男女共学ですよ?」


「そうではなく、教室内も食堂もすべて共学になるのだ…その意味は、騎士団員の養成校ではなくなり、政略結婚のための学校になりさがるという事だ!まったく…」

「アキュラをわしの後継者にすると宣言してから、とたんに色々な所が動き出しよったわ!」


どうやら侯爵邸に訓練施設を作る事が周知され、だったらと学園は貴族たちの思惑通りに改革される事になったようだ。



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