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孤独の人  作者: 神の恵み
異世界編
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89/113

第89話 ランカという少女


----- キャンベル・プレストン -----



エベリー

「えっ? ランカちゃん、理解できたの?」


レブラン

「ランカちゃんは、キャンベルさんがくれた研修テキストを読んでいたからね…」


ランカ

「はい」


「私がレブランくんにあげた、あのソフィア語で書かれたテキストを読んだのですか。なるほど…」


ここにいる者は皆、納得しているようだが、そもそもソフィア語の基礎会話ならともかく、高度な表現の文章を読んで理解できるとなると、いよいよ、あの噂は本当のように思える。


司令部からの通信

「(今日はここまでにして、明日の予定を伝えなさい)」


「今日はもうお疲れでしょうから、説明はここまでとして、一旦、部屋に案内します。また、夕食の用意が整ったら部屋にお知らせが流れるので、食堂へ来てください。では、こちらです…」


ミーティングルームを出て奥に進むと、『宿泊者施設』の扉の横にあるカードリーダーについて説明をする。


「レブランくん、こちらの機械にカードキーを近づけてもらえますか?」


「あっ、はい」


『カチャ、シュー』


「うわぁっ! 勝手に扉が開いた!」

「すご~い」


やはりランカちゃんだけ、反応が薄い。

今回、『宿泊者施設につき関係者以外の出入り禁止』と帝国語の注意パネルを貼っておいたが、むしろソフィア語で書いておいて、反応を見た方が良かったのかも知れない。


「一番手前左から201号室、向かいが202号室になっていて、201号室の隣が203号室だ。レブランくん、一緒に入ってもいいかな?」


「はい、これもカードキーを近づけるだけで、いいんですか?」


「うむ。だけど、ドアノブはひねって下さいね」


「ははは、それは分かります」


『ガシャ』




「えっ!」


「すまない。ここはレブラン邸とは違って、職員や研修生が泊まる事を想定しているので、部屋はとても小さくてね…」


「いえ、大丈夫です。ホテルと同じ大きさなので…、ただ、勝手に照明がついたので驚いたんです」


「なるほど…、正面の机の右奥に寝室やシャワールームがある。トイレはこの右扉の中だ」


「それから、みんなの荷物はすべてこの部屋のクローゼットに運び入れてあるから、エベリーさんとランカさんは、ここから各自の荷物を自分の部屋に運んでもらえるかな?ここにはメイドはいないからね…」


「わかりました!」

「はい!」


「では、案内が流れたら、食堂に来てください。そこで明日からの予定をお話しします」


「キャンベルさん、ありがとうございました!」


3人とそれぞれ挨拶を交わして部屋を出た。


「は~~」


私はこれから執務室に戻り、司令部のバーナム氏からの指示の有無を確認しなければならない。


監督署を管轄している皇国家は、バーナム家、ベトルズ家、プルドー家の3つで、各々主任監督官を部下に持つことができる。つまり、私はそのバーナム家から採用され、ほかに主任監督官は2人いて、現地人を指揮している。


私には、なぜか、裁定所を管轄しているライクリー家からも指示が飛んでくる事がある。

裁定所は、ライクリー家とマンリーホット家が管轄していて、勤務場所が異なるため、今回の指示を出したライクリー氏とはお会いしたことがなく、顔は知らない。


法律を作る立法機関は、3つの塔の中心部、中央広場の地下にあって、一般的に『司令部』と呼ばれ、そこには司令官ほか、司令部要員が総勢120余名、帯同家族を含めると540名以上となる指導層である。


監督署は24時間体制で、皇国人はバーナム氏、ベトルズ氏、プルドー氏のうち誰かが勤務している。

つまり、本来、私も3交代制の8時間勤務のはずなのだ。


裁定所勤務なら、せめて夜勤はなかったのだがな…



執務室の中は、大きな事務机から見える大きな映像パネルが横4つ、縦に3つ並んでいて、監視カメラと呼ばれる撮影機で撮られた映像が流れる事がある。


ちょうど映像パネルには捜査3係の対象が映し出されて、犯罪が行われた地域のその現場映像と、その人物の情報、捜査に向かっている部隊の情報、その部隊の映像が各パネルに表示されるため、横4枚のパネルは1セットで使われる。


まもなく日が暮れる。

この時間帯に犯罪は多く発生する。


それは彼らが暗いところほど見つかりにくく、身元が特定されにくいと思っているからだが、残念なことに、監視カメラという物は周囲の明るさに応じた感度に変化するし、その場所に来るまでの映像でさえ記録されていて、入国時のデータは瞬時に探し出されてしまうのだ。


しかも捜査員たちの利き耳の後ろに埋め込まれた装置によって、こちらからの伝令は瞬時に彼らに伝わる。


「監督署から捜査3係、犯人たちは店を出て2人は左へ、1人は右に逃げた!以降はモニターを確認せよ!」


「3係了解!」


ヘルメットの上から透明モニターを右目の前に下すと、犯人と自分との相対的位置がわかる。

また、捜査員たちは、電撃銃と呼ばれる10m以内では100%当たる武器を持ち、それで拘束するため、検挙率は100%に近い。


「(キャンベル監督官、食事の用意ができました。食堂へ移動願います)」


館内放送ではなく、私の右耳の後ろの装置が受信して私にだけ聞こえている声だ。

最初は技術に驚くとともに、感激したんだがな…


「は~~」


「(ため息が多いぞ、キャンベル監督官)」


「はい、すみません」


振動を拾って送信するためか、声にしないと伝わらないから、返答が『独り言』になり、面倒なのだが、よく見られる光景となっていて、館内では誰も気にはしていない。


そして、この声が司令部の誰なのか、それが分からない。女性の声である事だけは間違いないのだが…


扉の横にある『外出』ボタンを押すと扉が開き、部屋の捜査指揮システムが『外出モード』になる。

外出モードにすると、他の2人の監督官に仕事は割り振られる。


逆に入室して、事務机のセンサーが私のカードキーを検出すると『在室モード』になる。

便利すぎて、さぼれる奴がいたらぜひ、お目にかかりたいものだ。



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