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孤独の人  作者: 神の恵み
異世界編
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第85話 10歳になった

有本蘭編を金、土、日に2話ずつ、6話投稿します。




帝国歴179年1月



10歳になった。


昨年からは帝国新年祝賀会には呼ばれなくなって、教会内でも『将来のシスター』などと噂する者はいなくなり、正直ほっとしている。


護身術では、シエンナさんとの訓練の結果、剣を持つ相手の初撃はいなす事ができるようになっていた。

シエンナさんは、初撃さえしのげれば、あとは自分が対応できると言っている。


問題は、その後シエンナさんを支援する魔法か、相手を牽制けんせいする魔法があれば、と言う。

現状は、ギリギリ一人で外出できるレベルらしい。


そして、毎年、里帰りするリモージュ王国の商人の嫁が、今年も商隊とともに戻ってきて、教会で会った。


「ランカさま!お久しぶりでございます。今日はシスター服ではないのですね?」


「あぁ、わたしはもう修道女ではないのです。シスターマグノリアの養女となり、今はレブラン叔父さんの所で商人の勉強をしているのです」


「そうなんですか! それは商人としては理想的な環境ですね。もしかして、今年で10歳になられたのではないですか?」


「はい」


「でしたら来月、我が商隊がリモージュ王国に戻る際に、一緒に王国に行きませんか? リモージュ王国には10歳から入学できる学校があって、いろいろな学習ができますよ。見学をして、もし気に入れば9月から正式に入学すれば良いと思いますよ」


「う~~ん、外国に留学ですか…わたし一人で決められる事ではないので、母に相談してみます」


「そうですか…せっかくの機会ですから、見学だけでもお勧めしますよ。ところで、シスターが新年祝賀会からお戻りになるのは、昼過ぎでしたよね?」


護衛のシエンナさんが

「はい。もうすぐお戻りになるはずです」


まもなくして休息の時間になり、ベンチで眠るお年寄りなど、すべての人が聖堂から出され、閉じられる。

その時を待って、女神像の前にひざまずいて祈りを捧げる。


「(ランカさん、大きく、たくましくなりましたね。あとは、支援、牽制ね…)」


「(アフィーリアさま、どうしてそれを…)」


「(私の声は、その転移のペンダントからあなたに伝わっているのですよ。もちろん、その逆に、あなたの周囲で起こっている事は、そのペンダントによってわたくしにも伝わってくるのです)」


私の命を救ったこの鳥の翼の形をしたペンダントは、女神アフィーリアが発した『転移のペンダント』という呼び名と、そのデザインから、身に着ける者を緊急時に安全な場所に移動させる物だと認識されたけれど…実はそれほど単純な物ではないようだ。


もちろん、瞬間移動を可能にする『転移』の魔法はすごいけれど…

いや、本当に魔法なのだろうか?


「(そのペンダントはソフィア皇国に古来から伝わるもの。いづれ、異なる世界から来た人たちの技術に触れる機会はあるでしょう)」


「(えっ! それってつまりソフィア皇国の始祖は宇宙から来た人なのですね?)」


「(そうです。あなたの魂もだけど…。それはいいとして、支援は『探知の腕輪』にしましょう。半径100m以内の害意を持つ者の存在を知らせてくれます。牽制けんせい手段は『錯視さくし』の魔法を。さあ、像の前の腕輪を持って、そろそろ戻りなさい。シスターマグノリアが到着しますよ)」


女神像の前に現れた腕輪を左腕にはめるとスッと腕にフィットした。


「ありがとうございます」


お礼を言って控室ひかえしつに戻ると


「シスターマグノリアが到着しましたよ」


シエンナさんが教会裏口から内部に声を掛けると、シスターマグノリアの班の者達が一斉に外へ出た。

私が外へ出た時には、既に養母ははは馬車を降り、ベルジェロン家の紋章付きの馬車が出て行くところだった。


入れ替わりに到着したのは、シスターアビゲイルの実家ギャニオン家の紋章付きの馬車だ。


そして最後に到着したのが紋無し、シスターバイオレットの馬車。


それぞれの派閥の者たちが荷物を運ぶ。


「ランカちゃん、お待たせ!」


「おかえりなさい!おかあさま」


素直に養母ははに抱き付き、甘えさせてもらう。

このあと、恒例となった商隊からの手土産をもらい、挨拶以外に私の留学の件も彼女と話をしたようだ。


実は、私が読んだソフィア皇国の本には、各国に派遣された情報担当が報告した、その地域の概要が示された記述がある。


例えば、リモージュ王国は『季節風の影響で夏、冬ともに雨が降る水資源の豊かな国』であり、農産物の生産量に不安が無かったため、フット山のふもとで取れる鉱石を利用した工業の発展に力を入れ、皇国の資源省から派遣された情報担当がこれに関与した事。


王国の中心部の工業都市を支配したのがウィルソン公爵で、南部の農業地帯を担当したのがウィルソン公の弟、ジョンソン公爵である。


それから3世代遅れて、山脈に近い湿地帯から沿岸部へ進出して海運と漁業を成立させたのは、縁戚トンプソン公爵である。


このウィルソン公爵(工業都市)、ジョンソン公爵(農業都市)、トンプソン公爵(海運漁業)の3公爵が大陸初の国家制度を成立させ、縁戚3公爵家からの国王選出制を採用している。


だが、愚民政策とまでは言わないが、国民を教育して国家を強靭きょうじんにしようなどとは決して思わない3公爵の専制政治体制であり、国家として教育機関を持つとは考えにくい。


書籍の情報が古く、近年、教育機関が作られたのだろうか?



そんな私の疑念とは関係なく、10日後に出発する商隊と一緒にリモージュ王国に見学に行く事が決まっていた。


学校なんてどうでも良くて、あきらくんが召喚されたというアドラン連邦国のグラハム家に関する情報が欲しいので、いいチャンスかも知れないと思った。



この日、女神アフィーリアさまから授かった『錯視』の魔法は、女神さまが姿を見せる時、見る者の先入観によって、姿、位置などを錯覚させる魔法だという。


そして、特に意識していない者からは見えない『認識阻害』として機能するようだった。



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