第78話 レブラン邸の生活
私がまずやった事は、値札のタグを作り、商品である衣服や帽子、靴などに添付する事だった。
エベリーは財産の台帳を見ながら答えていたが、その台帳は、納品された時に付いていた商品の材質、製作工房など自慢話の書かれた手紙が付いていて、それをファイルにした物だった。
商品の情報を端的にまとめて、エベリーの考える希望小売価格と共にタグに書いて、商品に紐付ける。
たった1列分の衣服と装飾品だけで、午後は終わってしまう。
夕方からは家庭教師のオードリー夫人が来られた際の準備として、資料室に入り、エベリーが使ったテキストをリストに従ってワゴンに置いていく。
このテキストも皇女の使う物として作られたもので、有名な方々が執筆したものらしい。
しっかりした作りではあるものの、内容的には歴史と地理、産業以外は私には不要なものだ。
親和教会の書庫との違いは、産業に関する本が多いのだけど、それらはすべてソフィア語の本だった。
考えてみれば、帝国語では語彙が足らないので、高度な表現ができない。
「お兄さまがソフィア皇国に行くきっかけになったのは、ご友人が行政官試験に合格して監督所に採用されたからだそうで、ご友人が半年間の研修期間に学習したテキストがこれらの本だそうです」
「優秀な方だったのですね…」
「今では主任監督官になっているそうですわ」
自分が帝国語もソフィア語も読み書きできるのは、異世界特権だと思うのだけど、7歳の元ソフィア皇国の女の子に記憶が一切無いというのも不思議だ。
いずれ何かの切っ掛けで思い出すことを期待している。
3日後、オードリー夫人がやって来て、予告通り試験が行われて、読み書き、計算ができる事が確認された。
あとは裁縫、刺繍くらいだそうだ。
同日午後、レブランとエベリーの実家であるベルジェロン家から、女騎士シエンナがやってきた。
彼女は同時にシスターマグノリアからの手紙を運んできていた。
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ランカ・ベルジェロンへ
ランカちゃん、正式にあなたを私の養女とする手続きが終わりました。
これはあなたを縛るものではありませんから、断らないでね。
これは女神アフィーリア様があなたを私に預けて下さった時からの使命だと思っています。
ただ、この手続きも誰かに漏れたようで、フレイザー皇帝に不許可を進言した教会関係者がいたと聞き、あなたに妨害行為が及ばないようにレブラン邸に避難して頂いたのです。
その教会関係者は不敬罪で処罰されたそうで、以降、教会ではあなたに敵対する動きはありませんけど、教会へ来る際には、騎士シエンナを護衛として2人で来るようにして下さい。
尚、魔物討伐は、帝国の費用を賄えるほどの収益をもたらしていて、当分、終わりそうにありません。
ランカちゃんも体に気を付けて、訓練に頑張ってくださいね。
シスターマグノリアより
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読み終わった手紙を封筒に戻し、大切に机の引き出しにしまった。
ずっと私を見ていたシエンナさんは、にっこりとした笑みを浮かべ
「これで、シスターマグノリアの娘になったのですから、緑の教会服を着ていても、誰も何も言いませんよ」
「あぁ…ですが私はシスターになるつもりはありませんから、教会に行く時も普段着を着ていきます」
「えっ そうなんですか?」
「はい。今は皇国に入国できる人になりたいと思っていて、そのための勉強をしています。ですから、シエンナさんには、護身術といいますか、そのようなものを教えて頂けたらいいな~と思っているんです」
「なるほど…では、まず体力を見てみましょう」
そういって、腕立て伏せや握力の検査、足の速さなどが検査されたのだが、8歳としては中の下くらいとの評価であった。
前世では、私は高校生になってから、あきらの通っている合気道道場に入門し、一緒に訓練をしていたのだけど、今のこの身体は、そんな合気道の動作は覚えていない。
長さが40㎝程度の小刀サイズの木刀を渡されて、手になじませるような訓練を受けた。
基本的な型が終わって、少し、打ち込みの練習に入ったところで、反射的に足さばきが自然にできた。




