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孤独の人  作者: 神の恵み
異世界編
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第71話 帝国の夜

異世界へ召喚されてしまったあきらと蘭。


次章からは異世界でのお話になります。

しばらくは作成、および調整の期間を頂く予定です。


帝国歴176年にその事件は起きた。

議会からほど近い親和教会で『奇跡』が起きたのだ。



「おぉ~ まさか!」


月に1度行われる女神への集団祈祷会のあと、女神アフィーリア像の前に少女が降臨していたのだった。


厳密には、ガラス窓から差し込む光が横たわる少女の衣服を照らした事で、その存在が分かったのだが、信者もシスターも『降臨した』という認識で一致していた。


意識の無い少女を高位神官の特別室に運び、リモージュ王国から買い入れた貴重な『ポーション』を飲ませた。



「う、うう…」


蘭は全身が熱を発しているのを感じたあと、5分ほどで熱は引いていき、意識が戻った。


「大丈夫ですか?」


問い掛けの声は聞こえたけれど、とにかく全身がだるくて、手も足も口も動かせる状態ではなかった。

視界が開け焦点が合うと、そこにはウィンプルと呼ばれるシスターの頭巾をかぶった女性がいた。

だが見た目、日本人ではない事だけは確かだ。


「聖女さまですか?」


唐突な『聖女か?』という問い掛けを聞き、蘭の心臓の鼓動が早くなる。

(まさか、異世界に召喚されたの?)


慌てて首を横に振るが、理解された様子ではない。


「ち、ちがいます!」


右手を上げ、左右に手を振るが…その手が小さい!


「あぁ! どうなったの? 何?」


上半身を起こしてみれば、小学生ほどの体になっていたし、自分の声ではない!

いや、確かに自分の発した声なのだけれど、子供の声になっていた。


頭の中は大混乱。


先ほどまで、彼氏である章くんの病院へ行くためにタクシーに乗り、商店街から自転車が飛び出して来て…

中高一貫校の高等部2年までの5年間、仲良くしていた17歳の私はどこに行ったの?


涙が流れてきて、もう何も聞こえないし、何も考えられなかった。

現実から逃げるように、ただひたすら泣いた。



気が付けば、寝かされていたベッドにうつぶせになり、眠っていたみたい。

泣きながら眠ったのだろう。


大きな部屋の壁には2か所、ほんのりとした明かりがついていた。

ベッドから降りて、慣れない体で窓まで歩き、カーテンを少し開けてみれば、星がいっぱい見えた。

逆に、星以外は何も見えない音のない暗闇くらやみの世界。



ベッドのところまで戻り、腰を掛けて考える。

小説も色々な種類の話を読んで来たけど、こんなスタートの話は知らない。


小説の世界じゃないなら、ゲームの世界に入り込んだの?


「ステータス…」


なにも浮かんで来ないし、なにも見えない。

この体が誰なのかも分からないし、思い出す事もなかった。



ベッドで横になっていると、夜が明けて小さな物音が聞こえるようになってきた。

窓から外を覗いてみれば、近くに井戸があり、水をくむ下働きの若い女性の姿が見える。

カーテンを完全に開けて、部屋に明かりを入れてみれば、鏡台と呼べるような家具があった。


垂れ下げられた布を上げると、多少の歪みはあるが鏡があり、自分の姿を見る事ができた。


有本蘭とは全く異なる女の子がそこにいた。

(はぁ~ やっぱりか…)


とりあえず、『お前との婚約は破棄する!』というストーリーでは無いみたいだけど、ステータス表示もないから、自分なりの設定が必要なんだろうと考える。


名前は蘭花ランカがいいかな。7歳くらいだろう。

この世界の記憶はなく、別の世界の記憶は有る。

むしろ『私は、あなた達に呼ばれたのか?』と聞くのが良いかも知れないな…



『コンコン』


扉がノックされて、ゆっくりとした動作で部屋に入ってきたのは、肩からぶら下げるスカプラリオと呼ばれるシスター衣装を着た女性だった。


「もう起きていらしたのですね…体調はいかがですか?」


「はい…今のところ問題はないようです。ところで、私はどうやってここへ?…」


シスターが後ろに立つ若い女性に合図をすると、私を洗面所へ案内して顔を洗い、歯を磨かせた。

そして私の白いワンピースの上から、緑のスカプラリオを着せて私を廊下に連れ出した。


「説明しますから、こちらへ…」


私の居た2階の部屋から階段を下りて、最も広い聖堂へ出てきた。

正面奥の女神アフィーリア像の足元に突然現れたのだという説明だった。


今は誰もいない静かな聖堂を、奥へ奥へと歩いていき、女神像の前でひざまづいて両手を合わせると、


「(蘭さん、親和教会へようこそ…)」


女神?の声が頭に届いた。

目を開け、周囲を確認したが誰もいない…女神の声に違いないようだ。


「(あなたのその体は、ソフィア皇国の少女のものです。ですが砂漠のサンドワームに家族ごと飲まれて、あなただけが転移石のペンダントの働きによって、私の元まで運ばれたのです。そのいのちを大切にしなさい)」


(はい…。ところで、私は女神さまによって、この世界に召喚されたのですか?)


「(いいえ、それは少し違います。親和教会に古くから伝わる聖女降臨のアーティファクトと、地下を支配する混沌神ルシフの召喚のアーティファクトが偶然同時に使われ、共鳴した事によって、異世界からあなたとアキラという男性が召喚されたようです。男性は召喚者の望む男の子に、あなたは修復が済んだ少女の体に定着したのです)」


(え! あきらくんは、どこへ召喚されたのですか?)


「(アドラン連邦国の…グラハム家でしょう。混沌神のアーティファクトが複数あるようですから…努力すれば、いつか会えるかも知れませんね)」


(努力って、何をすればいいんですか? 教えてください!)


「(教会には多くの書物が残されています。知識を得て見識を広げるのです。そうすれば希望も出てきましょう。それと、あなたは聖女ではありません。聖女降臨は『処女受胎』という形で生まれるのです)」



気が付けば、再びベッドに寝かされていた。


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