表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤独の人  作者: 神の恵み
現代編
PR
64/113

第64話 竹内の思い


俺の名前は、竹内 しん


出ていった親父の話では、まことと読むらしい。

なにが『まこと』だよ、パチンコにはまって稼ぎは母親のパートで支えられていた家だ。

よく、スーパーの裏口から入って、怒られたけど、パンの耳はたくさん貰えた。


中学まではなんとかなったけど、高校なんて行けるはずもない。

建築現場でよく働いたけど、たまたま知り合った警備のおっさんに余った総菜弁当をもらった。


そのおっさんも借金があるらしく、時々借金の取り立てに来ていたのが『かっちゃん』と呼ばれていた人で、あんまり怖い感じの人ではなかった。


でも、かっちゃんという人は、怒らせるととんでもなく怖い人だった。

ゲームで言うと狂戦士のようなキャラだ。


現場にあったスコップで、あっという間に4~5人を倒してしまう。


「現場監督の若造が、なに分かったような事を言ってやがるんだ!」


おっさんに聞いたら、給料天引きとか言って、ピンハネしようとしたらしい。

建設業者のお偉いさんが来たが、電話一本で、謝って帰っていった。


この工事はそもそも、その政治家の力で建設業者に決まったのだ。

マジかっこ良かったから、できるだけ後ろについて、現場を歩き回った。

そしたら、いつの間にか、パシリとして採用されていた。


そんな頃に事件があった。


当時12歳の小学生だった、かっちゃんの娘が、血まみれになって学校から戻って来た。

近所の空き地に連れ込まれて、京極のお嬢さんを守ってボコボコにされたそうだ。


その時の相手に変態中学生がいて、そいつに犯されそうになって、しょんべんぶちまけて、その気をくじいたそうだ。


かっちゃんの娘もかっこいい。



だけど、その変態野郎は腹いせに、持っていた小刀で娘さんの身体を切り刻みやがった。

それで、今でも傷跡が残っている事は、みんなが知っている。


あとで、かっちゃんと俺たち、(いや、実は俺は参加できなかったけど)、勝田のおやじの働きで、変態少年をボコボコにした話は、今のグループの家族愛の物語だ。




そんな美香ちゃんとお嬢が、巣鴨に来る事は聞いていた。

金券を近くの政治家の後家ごけさんに、届けに行く楽な仕事だ。

そこにはお婆さんだけしか住んでないから、問題は起こりようがない。


そんな巣鴨の商店街を、お嬢と美香ちゃんが歩いてくる。

仕事が終わったようで、俺たちに笑顔を見せた。


だが、そのお嬢が隣の男に手を握られそうになり『ダメ!』と言ったのだ。

俺たちはすぐさま飛び出し、男の排除を試みた。


だが、この男は特殊警棒を持ち、動きも素早かった。

つかもうとした腕を素早く叩かれて、思わず頭に血が上った。


「この野郎!」


するとお嬢から


「やめなさい 竹内!」


と声が掛かった。


は?どうして…と混乱していると、美香ちゃんがパンチを繰り出して来た。

よけるなんてできない。

美香ちゃんに恥をかかせるわけにはいかないからだ。


だけど、それにしても、お嬢が届けた金券を男が持ってるなんて、誰も想像してなかったけど、事実だったらしく、とんでもない失態をしてしまった。


その後、杉浦も同様に、美香ちゃんからパンチをもらっていた。

あのかわいい美香ちゃんが、それほど本気で怒っていたんだ。



お嬢もそうだが、美香ちゃんはあの男に本気でれている。


しかも男は、高橋ホールディングスという貴族グループの幹部らしい。

なるほど、3000万の金券を胸ポケットに入れても、堂々としていたはずだ。


男は金券を奪い返しに来たと思ったらしく、お嬢が誤解だと言っても聞いてはくれず、怒って一人で帰ってしまった。



その後、京極さんと勝田のおやじさんは頭を抱えた。

高橋グループは政治家たちと同じくらい、やっかいな存在だと言っていた。


だが、相手は高校生。

びを入れるのも簡単だ。

俺が『お詫びに女を世話すりゃ、いちころだと思うんですが…』

みんなが笑って、そうだそうだと同意した。


お嬢と美香ちゃんは、こんな話は聞きたくないようで、部屋を出ていった。



翌日、高橋のガキを迎えに行って、小型の携帯を渡す。

そのあとは、デリヘルの売れっ子、けいこ姐さんの待つ部屋に案内する。

会社で押さえている部屋はいくつかある。

高校生だから、政治家ほど豪華な部屋はいらない。


思った通り、ガキは有頂天うちょうてんになっていて、これなら問題はないだろう。

俺は台所のテーブルに座り、事が終われば、ガキを送っていくのが役目だ。


「おい、竹内はここで何を?」


「規則でしてね…間違いがないように…規則です」


そう、規則なのさ。


お前の早漏そうろうを確かめるつもりはないが、どうせ早く終わるだろう。

テーブルに、買ってきたおにぎりとカップ麺のコンビニ袋を置いて待つ。

お姐さんの好きなカップ麺も買ってある。


(おいらも相手にしてくれないかな…なんてね)


浴室から出て、ふたりは寝室に入っていった。

そうだな、1回目は5分かな? 2回目で30分という所だろう。


『キンコン! キンコンキンコン!』


「開けて竹内! 開けて!」


ど、どうして美香ちゃんが? 緊急事態か?


『ガチャ』


「どいて!」


俺を押し退けて、浴室を見て、すばやく寝室に飛び込む美香ちゃん。


「高橋くん!良かった、間に合った!」


美香ちゃんは土下座姿勢になり


「けいこ姐さん!譲ってください!」



それからは俺も、けいこ姐さんも、美香ちゃんの初めての手伝いをした。

男にも歯を磨かせて、お茶も入れた。


美香ちゃんの体の傷を見て、男が逃げ出さないか、それだけが気がかり。

そこで姐さんは、真っ暗の部屋で過ごさせればいいと言い出した。


なるほど。

寝室に入ったふたりから、それらしい声が聞こえた。

この男、どうやら初めてではないらしい。

くそ野郎め!


照明用のブレーカーを落とし、部屋を出た。

洗面器の照明は関係ないから、翌朝も気が付かないだろう。

おめでとう、美香ちゃん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ