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孤独の人  作者: 神の恵み
現代編
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第58話 会社の物は自分の物


「とりあえず、勝田さんはこのまま残って、事情聴取を受けてもらいます。高橋くんは帰っていいわよ」


「はい。では失礼します」


とんだ面倒事に巻き込まれてしまった。

それにしても嵯峨里美が京進証券CEOの娘だという事は分かっている。

平田奈々子も2位という成績だから、幹部の娘なのだろう。


そして5位の大浦未来。

あの剣道の腕前なら、彼女の役割は、ボディーガードなのかも知れない。

嵯峨としか話した事はないが、確かに京都なまりと言われればそんな気もする。


一方、金融グループの京極彩花の部下、勝田美香は完全に拳でのし上がって来たとしか思えない手の硬さだった。

しかし、正規に空手を習って来たとも思えない身のこなし…。

どちらにせよ、高橋グループと消費者金融グループは、馬が合いそうにない。




会社に出社して、一番に決裁が必要な申請画面を見る。

A4のコピー用紙?今までは紙ベースの申請書やら届け出書類、それと社内通達といった多くの紙が必要であったが、今はほとんど紙は必要ないはず。


使うとすれば、受付が発行する駐車許可証くらいか…。


否決理由:必要性の前に、コピー機の使用枚数と用紙の消耗枚数をチェックして報告せよ。



それと、なぜかビール券の購入申請が…。

俺が来てから、営業課にも使用の許可は出していなかった。

ビール券をもらったからと言って、契約が取れるはずが無いからだ。


どうせ接待と称して、客と飲んでいたに違いない。

管理課のロッカーを整理して余ったローカーはこちらで使っている。

ビール券は回収して、俺の横のロッカーに保管してあるのだ。

そういう意味では、在庫がなくなったようには見えるが…。


総務課の坂上さかがみ妙子たえこ…。

すごく几帳面そうに見える40代の女性だが。


否決理由:必要性なし。現在のビール券の在庫枚数を報告せよ。


『指示事項あり』を選択して入力を終えると、佐々木秘書にもCCでメールが飛ぶ。


「あちゃ~ 坂上さんか~、苦手なんですよね~」


となりで佐々木のもだえるような声がした。

それからは、佐々木も手伝って、報告したいとの事。


会議室に3人で入って、報告を聞く。


「まず、コピー機の使用枚数は3月が5512枚、4月は546枚でございます。A4用紙は毎月2カートン発注しています。1カートンは…」


「2500枚だろう、知っていますよ。5冊入っていますからね。問題はコピー機側の消費量と、減った用紙の量が合わない事です」


「3月は11冊使って在庫は4冊だった。4月に入って10冊入庫、消費は1冊。13冊あるはずのコピー用紙は、なぜか8冊の在庫で、なぜ10冊の発注が必要なのです?」


「いえ、1カートンの注文は業者に悪いと思いまして」


「業者は月1回、定期的な点検でくる契約です。不要な時は発注はしないように」


「はい、わかりました」


「それと、在庫不一致は、だれかが1カートン盗んだという事かな? こちらは調査を」


「はい」


どうせ聞いて回るのだろう。監視カメラが天井にあるから、あとで確認しよう。


「それとビール券の在庫ですが…」


「それが、10枚しか残ってないのです」


「そうですか…もう営業課もありませんから、今後は発注不要です」


「わかりました」


(それにしても、10枚、どこにあったんだよ。)



会社を定時に退社して会長邸2階のシステム担当の部屋に来た。

監視カメラ映像のストックを検索して、コピー機が映っている画像を探すとすぐに見つかった。


犯人は総務課の坂上妙子で、堂々と台車にコピー用紙1カートンを乗せて消えていった。

あの量の用紙を手で運ぶのは無理だし、社外に持ち出すのも不自然。

女子ロッカーには、監視カメラが無いから証拠は直接探すしかない。


さて、じゃ~避難訓練でもするか…。

管理課にはすべてのロッカーの予備キーがあるから、それを用意。

近くの公園まで避難して、ついでにあずまさんの所のお弁当とお茶でも手配しとくか…。

公園で食べてもいいし、会社まで戻ってから食べてもいいし…。



佐々木と俺と会長は調査隊だ。

残ったのは、じゃんけんで負けた留守番が1フロアーに1人。


まずは、4階の更衣ロッカーから。

なんと、誰も使っていないはずのロッカーから、A4用紙5冊、ボールペン2箱、それと昔のノベルティーグッズが少々出て来た。


カメラで撮影しながら、各ロッカーを合鍵で開けて、検査をする。

すると、3階の空きのロッカーからも同様な物が見つかる。

2階は?と思ったが、ゲストが着替える事もあり、この階はきれいだった。


坂上妙子のロッカーからは、盗品は出て来なかったため、今回はここまで。

しかし、A4用紙1冊500円、ボールペンも同じく1箱500円ほどの品物。

しかも既に手書き書類はほとんど残っていない。


ロッカーの合鍵も回収して、ビール券同様に、俺のところで保管するとしよう。

古い意識の人ほど、会社の物は自分の物と思っている事が多い。


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