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孤独の人  作者: 神の恵み
現代編
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第56話 改革案


翌週は、2階の受付のうしろ、営業課の整理だ。


彼らのおこなっている営業活動は、ビルへのチラシ配り、いわゆるポスティングだ。

チラシ、及び、提案書のたぐいを確認したが、安い、早い、上手いのまるで牛丼セールだ。


名護なご課長を会議室に呼び出した。


「12名も営業がいて、どうして新規顧客が取れていないんです?」


「いや、それはこんなご時世じせいですし…」


「そもそも、訪問先のほとんどが既存きぞん顧客のようですが、どういう目的です?」


「逃がさないための囲い込みの一環なんです…」


「とりあえず、来週からは指定関連企業への訪問営業をしてもらいます。グループ企業には機械警備の分駐所がありますから、その建物のメンテナンス事業を獲得してきてください。これが第1のミッションです」


都内5か所の分駐所の所長名、住所、電話番号を渡して


「来週中に契約を取って来て下さいね。出来なければ採算分岐点まで、営業人員をリストラします」


「えっ! そ、そんな横暴な!」


分駐所の所員は警備要員であり、いわゆるメンテナンス業務である外周や外壁の清掃、建物内の維持管理には適していないため、この際に一括いっかつして立花ビルメンテナンスで請け負うというのがグループの方針なのだ。


会長もそのつもりで、今回の社長就任の挨拶とともに営業を掛ける予定だった。


「単純にコスト的なメリットを含め納得できる説明をするだけですし、その説明さえ出来ない営業なら、仕事内容は変えざるを得ないし、それを指導できないと言うなら、まず、管理職である君にやめてもらう事になる」


「わかりました!やればいいんでしょう!」


勢いよく会議室を出て行ったが、既に2階営業課の頭上には人感センサーとマイク付カメラが天井に設置してある。


マイクは受付にも、営業課の壁掛け時計にも、そしてビジネスホンにも取り付けてある。

彼らがどんな準備をするのか、しないのか…。

俺には営業課をリセットする覚悟は既に出来ている。


そして、会長名で分駐所所長宛に、立花ビルメンテナンスの立花専務に引退してもらい、高橋章社長を起用した経緯や、今回の訪問営業が営業員の素養そよう判定のためであり、配布した採点表にチェックを入れてもらうなどの協力をあおぐ書面になっていた。


もちろん契約はまだ結ばないでほしいとも書いてある。


しかも分駐所の所長からは、『おもしろい』という反応が返って来ていた。




営業課に与えたミッション遂行すいこうのための準備作業は、ほとんど行われなかった。

訪問営業先は機械警備の分駐所であり、管理目的の屋敷の巡回警備は、関係者である所長にしかできない。


そのため商談相手の所長と、都合の合う時間は限られている。


もちろん、アポイントメントもだが、商談相手の人員、設備など、事前に調査すべき事は山ほどあり、自分達が提供できるサービスの強み、弱みも把握して、応酬話法をっておく事も大事だ。


だが、準備を何もせず、帰りにどこかの店で大いに愚痴ぐちって終わったのだろう。



翌週月曜日は当然全滅ぜんめつであった。

アポさえ取っていないのだから、門前もんぜん払いになるのに決まっていた。


「会長から連絡が入っていると聞いていたのですが…」


「きみの会社では、会長がアポを取るのか?」



散々な結果で帰ってきた営業が、アポイントを取り始める。

翌日の火曜日ではなく、水曜になる場合もある。


翌日からは

「何ができるのか?」

「他社との違いは?」

「サービスメニューを」

様々な質問に答えられずに戻っていた。


そしてようやく営業会議が行われた。

今更ながらに呼ばれた俺は、分駐所が提供している機械警備と25分ルールを守るために、どのような努力をしているか?などの交渉相手について説明をした。


だが、1件も契約が取れずに週末を迎えた。


結局、翌週からは、今まで通りなじみ客の所に行って、時間をつぶす営業たち。

営業課長を会議室に呼び出し、解雇通知を手渡した。

今週15日をもって、雇用を終了とする。


営業員達には、営業課の廃止に伴う配置転換の意思調査票を配布して、移動したい部署の調査と、そのためのトレーニングの開始を通知した。



最も人がほしいのは、小弓おゆみ警備保障の警備員だ。

訓練期間は必要だが、どんな職場も同じだ。


その次は稲葉設備機器の内勤メンテナンス要員。

仕事内容は機械の分解・清掃・組立・点検をおこなう仕事で、機械好きでないと続かない。


次は同じく稲葉設備機器の工事部門、携帯基地局工事の下働きが足りない。


ま~探せばグループ内に仕事はいくらでもある。

だが、いずれも自分が経験してきた職種とは異なる系列だから、経験値としては、最もうしろに並び直す事になる。


課長を含む11名が会社を去り、残ったのはわずか2名。

結局、この2名には、4階で稼働を始めた設備の自己診断やリモートメンテの学習を始めてもらおう。



俺はいつものように、お昼休みに学園の理事長室におじゃました。


『コンコン』


「4年 高橋章です」


「どうぞ」


「失礼します」


「どうしたんですか? 呼ばれてないのに、ここへ来るなんて…」


「ええ、実はこの度、わたくし高橋章は、立花ビルメンテナンスの社長に就任いたしまして、長栄学園の警備だけでなく、ビルメンテナンスについてもお引き受け致したく」


「ははは。営業に来たって事?」


「はい。床面積あたりの費用を、現状より20%オフで受けさせて頂きますが…」


「わぉ、大きく出たわね~ じゃ、見積もりをお願いしようかしら…」


「ありがとうございます」


「でも、この学園の仕事よりも、新興グループと高橋グループが協力するって事の方が、影響力は大きいわね」


「同感です」



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