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孤独の人  作者: 神の恵み
現代編
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53/113

第53話 ニキビ


ホームルームに登場したのは、教務主任の水戸講師であった。


今年の長栄学園の内部進級率は90%。

内部進級は100%審査よるものとなっている。

つまり150名のうちの約15名が基準に達せず、落ちこぼれていなくなったという事だ。


普通科は2クラス60名で、総合学科は3クラス90名。

外からの編入は成績優秀者のみとの事なので、各科1組への編入者となる。

総合学科1組には8名が編入して来ているとの事であった。


そこで教務主任から学園の説明をするという流れになったらしい。


総合学科の4年生は成績順に1組から3組に分かれていて、5年生からは専攻ごとに文系、理数系、情報、簿記の4つのクラスに分かれる。


挨拶では、目指す進路や職業というテーマで話す事と指定された。

最前列の中央、トップバッターの俺は実業家と言っておいた。


隣に座る女子1位、嵯峨さが里美は金融業との事。

落ち着き払った堂々の態度だった。

女子2位は平田奈々子、同じく金融業。

次々と挨拶あいさつがされていくが、『まだ決めていません』が多数で記憶に残らなかった。



毎年恒例、HR終了後の理事長室への招待を教務主任から受けた。


「高橋くんがクラス委員という事ですか?」


隣の嵯峨さんが教務主任に聞いた。


「そういう事ではありません。単なる事務手続きの件です」


「そうですか…」



理事長室へ向かう教務主任に続く俺。


「なかなか気の強そうなお嬢さんですね」


「そうですね…編入生ですけど、入学前に髪型の規制について詳しく問い合わせを受けて、正直驚いた記憶がありますね」


「ほ~ さすが女性ですね」


「先ほどの声で分かりましたが、電話の主は親御さんではなく、ご本人だったようです。」


『コンコン』


「水戸です」

「高橋です」


「お入りさない」


「失礼します」


「いらっしゃい、高橋あきらくん」


「いや、そんな改まって言わなくても…」


「それにしても、あれだけ高橋家の幹部と言われる事を嫌がっていたのに、養子に迎えられるなんて…」


「いや、『虎のきつね』みたいで嫌と言っていただけなんですけど、グループの中身が結構ポンコツだったので、高橋の名前を使って、改革をしようと改名に至ったわけです」


「単なる秘書だと威力が足りないと?」


「その通りです。実際には直系のお孫さんを後継者として定めていますから、俺はその子の代までに、近代化を進めるのが任務というところです」


「へぇ~ 謎の高橋グループがポンコツ?」


「『謎の』って、別に隠してるわけじゃなくて、目立たないようにしてるだけですよ。単に旧華族家の人達が資産を守りながら、お互いにフォローし合える企業が集まっただけです」


「立花家がビルメンテナンス会社を、稲葉家が設備機器会社を、小弓おゆみ家が警備保障会社を経営していて、維持管理を合理的にするために、不動産の高橋家に集合した。それが高橋グループの正体です」


「そ~なんだ…」


「逆に、戦後に一気に大きくなった田中製薬の方が、人々には脅威きょういに思われるんじゃないんですか?」


「まぁ、悪人扱いされていたのは、間違いないわね。私も良く『成金!』って言われていじめられたわ。本当に成金だったから言い返せないし…」


「いやいや、言い返しましょうよ『成金のどこがいけないのよ!』って」


「ははは。今じゃ言えるんだけどね。当時は小学生だったからね~」


「でも、今では振興企業グループの牽引役けんいんやくとか言われて、持ち上げられているようですね」


「良く知ってるわね」


「あれ?そういえば、嵯峨って、京進証券の代表執行役社長の名前だったような…」


「その通りよ。あきら君は金融業界にも詳しいのね、まいっちゃうわ」


「いえ、経済誌を見る事もあって、確か表紙に出ていたのを思い出しただけです…」


「という事は、2位の平田という子も、関係者かな?」


「その通りよ。女子寮の同室希望が申請されているわ」


「そう言えば、豪華ごうかな寮もこの学園の売りでしたね」


「豪華さじゃなくて、セキュリティーの高さが自慢なのよ!」


「ははは、そうでした…」



そんな話をして理事長室を出ると、他の生徒はすっかりいなくなっていた。

高等部に進学後は、秘書の仕事をする約束なので、道場と英語塾はやめていた。


会社に向かう途中、もうすぐ昼という事で、お弁当屋さんに寄った。


「いらっしゃい!あきらさん!」


「こんにちは、とんかつ弁当を1つ! 食べて行きます」


「はいよ!」



お弁当を運んできたのは、あずま 美咲だった。


「どうぞ~ お味噌汁はサービスね!」


「ありがとう!」


みんな元気そうで良かった。

そう思っていたら、手伝いのおばさんが配達から帰ってきた。


「あきらさん、あんた学校変わったんだって?」


「は~? 変わってませんよ~」


あずま美咲が向かいに座り


「だって、名簿に石山くんの名前は無かったよ!クラスのみんなが別の高校にいったんじゃないかって、騒いでたし…」


「いや、ちょっと事情があって、名前が変わったんだ…」


「ほんとに? はるかが校門で待ってたけど、見つけられなくて、帰ったんだよ」


「はるかって、水無瀬みなせの事か?」


「そうそう」


「いや、俺、あの子の事、5位だった事しか知らないんだけど… ところで あずま…おまえ、ニキビ出てきたんじゃないか?」


「お、おまえ!本人が気にしてるんだから言うなよ!」



そう言うと周囲は笑っていたが、東 美咲は奥に引っ込んでしまった。



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