第51話 ラブレター
エレベーターで3階に上がり通路に出ると、1フロア4軒の小さめのマンションなので、左側すぐの玄関横に『301』の表札が見える。
名前は書いていないので、インターホンを押して返事を待つと、いきなり玄関が開いて
「いらっしゃい。寒いから早く入って!」
「おじゃましま~す」
「ごめんなさい。部屋を片付けるから、こたつにでも入ってあったまってて」
コタツのテーブルに温かい緑茶が入った湯呑が置かれた。
角田講師は23歳くらい。
短大卒業で田中理事長とは何らかのコネがあって、採用されたらしい。
それにしても、この部屋は2LDKで一人では広すぎる。
親が買ってくれたものだろうか?
「いいわよ、こっちに来て…」
「はい」
「このパソコンなの…」
寝室にパソコンデスクがあって、丸椅子に座る。
一番上にプリンターが有って、下段は書棚として雑誌などが入れてある。
先生はジャージ姿のまま、ベッドに腰かけてこちらを見ている。
PCが立ち上がると、確かにネットワーク接続が切れているアイコンが見える。
設定からWiFi接続を一度オフにして、数秒待って、再度オンにしたがダメだ。
WiFiは後部USB端子に接続している機器によって繋げているらしい。
デバイスマネージャーからネットワークアダプターを選択し、WiFiアダプターを右クリック。
デバイスのアンインストールを選択して、ドライバーを削除して再起動。
最新のワイヤレスネットワークドライバーをインストールする。
これで、正常に接続されて、インターネットも見られるようになった。
「やった~! 」
そう言って、丸椅子のうしろから、俺に抱きつく先生。
「く、首が…」
そのまま先生に、背中から体を預けた俺。
ベッドに倒れこんで、首に巻きついた先生の腕をほどき、体を回転させると、先生の顔がドアップで目の前にあった。
困らせようとしているのか?
実は、俺はそんな子供じゃない。
先生の上に上半身をかぶせ、先生の左の耳たぶあたりに手を添える。
「先生…きれいだ」
目を大きく開いて驚く先生に、さらに口づけをする。
「ん…」
顔を左右に逃がさないようにしながら、歯をこじ開けるように舌を入れていく。
意味が分かったのか、先生も舌を絡ませてきた。
「先生、俺、まだ未経験なんだ…」
「えっ?」
「教えてくれる?」
先生の顔が真っ赤になって来て
「で、でも…私もそんなに経験はないのよ…」
「先生はきれいだ…」
嘘ではない。
角田講師は、顔立ちはきれいな女性で、体格は普通より少しやせている感じ。
ジャージのジッパーを下ろすと、胸元を両手で隠した。
その下には、スポーツブラ? いや、ワイヤレスの柔らかいブラだ。
「見せてください」
「ほ、本気なの?」
先生の左手を俺の股間に誘導して、既にビンビンになっている事を知らせる。
すると更に顔が赤くなった。
俺はベッドの上に正座をして、土下座姿勢になった。
「お願いします」
このあと、浴室にふたりで入り、シャワー中に先生にいたずらをされて、暴発してしまった。
初めて、全裸で女性と一緒にいるのだから、当然だろう。
その後、先生は薬局へ行き、ゴムを買ってきたが、初めての事でなかなか時間が掛かったそうだ。
結局、朝早くから寝起きを狙った訪問が功を奏し、昼過ぎまで、3回もしてしまった。
3回目は、早期暴発も無かった事から、ゴム無しをお願いして、これまた、初体験であった。
すればするほど上達するとは聞いていたが、まさにその通りだと思う。
3月になってしまった。
と言うのも、あれから毎日曜日には先生のところに行きたかったのだが、月末は忙しいと断られ、その翌週から3月になり、学年末試験の準備が始まったからだ。
当然、俺もテスト勉強に入った。
LINEなどの証拠が残る連絡手段はダメだと言われ、電話で話をした。
試験が終われば、また来てもいいけど…と先生は消極的に言う。
当然、15歳との交際は社会通念上、許されない事だからと。
それはそうだろう。
お互いに愛ではないし…
試験が終わったあと、片桐講師が姿を消した。
退職願いを郵送で送ってきたそうだ。
理事長に嘘をついて処分は逃れたが、結婚するつもりはなかっただろうから。
無断欠勤のうえの退職であったため、角田講師は騙された事になっている。
ま~ 事件を知るのは理事長、教務主任、そして保安課の郷田課長だけだが…。
逆に言えば、片桐講師が姿をくらました事で、角田講師は首にならなかった。
この学園の講師陣は、基本的に1年更新の契約講師である。
役職者は3年毎の更新らしい。
テスト直後の日曜日。
再び、朝から先生のマンションを訪ねる俺。
玄関で301を押して、ドアーを開けてもらい、エレベーターに乗る。
『コンコン』
ドアをノックすると
『カチャリ』
とロックが外され、ドアを開けて中に入る。
「おじゃまします」
玄関で無言で先生と抱き合う。
「どうしたの?元気がないですね」
「はぁ~ あきらくんになぐさめてもらわないと、今を乗り切れない自分が情けなくて…」
「俺が相手だと、情けないの?」
「だってあなたは、決して手に入らない人でしょ? 高橋グループの有力者で、頭脳明晰、運動能力抜群で非の打ちどころがない人。可能性が全くないのは希望がないって事よ」
お互いに服を脱ぎながら、寝室に進みながら、会話をしている。
下着姿で、ベッドにもぐり込むのは、まだ羞恥心があるから。
「助重さんみたいに、高橋っていうブランドだけで、ラブレターを入れる人もいるけど、私にはできないわ。そんなこと」
「え~~~ あの手紙、助重講師だったの?」
「あら、知らなかったの?」
「名前書いてなかったから…」
先生からは、もう十分でしょ?と言われ、初心者終了を告げられた。
お互いに可能性のない相手とは、終わりにしようという事だ。
結局、この日が角田講師との密会最後の日になった。




