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孤独の人  作者: 神の恵み
現代編
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50/113

第50話 事件


新年を迎え、久しぶりに喫茶『憩』に来た。


「あけましておめでとうございます」


「おめでとう」


オーナーの有本英二さんの返事は、明らかに元気がない。

カウンター席に座り


「ホットコーヒーですね?」


「はい」


元旦2日目の初営業日なので、それなりにお客さんは多い。

以前にも見た、きれいなお姐さんが動き回っている。


「あたし、つばさって言うの。よろしくね!」


元気があって良いと俺は思うが、オーナーは渋い表情だ。

もっと静かに接客すべき、との考えだろう。




正月休みには無かったが、半ばには会長から連絡があり、印鑑を持って来いとの事。

行くと、年末調整の申告書類があって、署名、住所、電話番号、そして押印をと言われた。


まさか年金に加入するんじゃないでしょうね?と聞けば、フルタイムでは無いから義務はないとの事。



株価は昨年年末に18000円に達していたが、今は少し落ちて17000円台になっている。

18000円で売り、17000円で買いの指定を入れておこう。



思い付きで、下駄箱に光電スイッチと超小型カメラを設置した。

これで下駄箱を開けると光が入り、カメラが動作する。

向かい側の下駄箱の上に、電波中継器を置いておく。



中等部もあと2カ月で終わり。

ありがたい事に本当に勉強は楽しかった。


数学Ⅰは中学でやった内容が多く、特に『二次関数』では、関数とは何なのか、グラフの移動、グラフの書き方、最大値・最小値の求め方など、今後の学習に活かせる内容だと書かれていた。


一方数学Aは、整数の性質、図形の性質、場合の数と確率など、分野毎に独立していて、1つの分野の内容をおさえれば、ある程度得点できるようになると書かれていた。


定義や公式などは、簡単に覚えてしまったが、問題数をこなす事で自信は付いた。



再び、超小型カメラによるスキャンダルが発覚した。


英語教材はその後も順調に作成され、現在は高等部の教材作成中であった。

それは機材室に入る新任の情報課片桐講師と、英語科角田すみだ講師の姿から始まる。


人感センサーがONになり超小型カメラがONになったからだ。


一通り、教材作成が終わり、機材を片付け始めた頃、角田講師が片桐講師に抱きついたのだ。

そのあと、激しくキスをして、お互いに上着を脱ぎ始め、片桐が角田の胸をまさぐり始めた時、ディスプレイのスイッチが切られた。


「あっ!」


「こどもはここまでよ!」


「え~ もう15歳なのに…」


待機室の郷田課長と理事長。

そしてなぜか俺がいる。


「これを証拠にする事はできないから、別に証拠として、窓からカメラで撮影してもらえる?」


「え~ しょうがねえなぁ」


「そういう事で、特別手当、支給してあげてね。石山秘書さま」


そういう理由で呼ばれたのか…。


「では、決定的な証拠となるものを確保頂く事として、成功報酬3万円、用意させて頂きます」


「よし、じゃ~最後まで見て行くか?」


「だめですよ!郷田さん!」


高橋HCにデータが送られている事を郷田課長は知っているのだから、これはお芝居だ。

ま~そうは言っても会長がいない時には、部屋に入れないからな~。


後日、郷田課長は教材作成日にモニターを監視し、教材作成が終わった時点から校舎裏に行って、脚立を組み、望遠鏡に携帯を取り付けると、丁度、事が始まった時だったらしい。


望遠鏡と脚立は別途Amazonの納品書で経費請求がされて、わずか4000円弱だった事に驚いた。



2月半ば。

直接は知らないが、理事長からの事情聴取で、角田講師と片桐講師は結婚を考えているとの回答で、処罰を猶予される事になった。


当然、残り数本の教材作成は一緒に作業をさせる事はできない。

そこで、俺が呼び出される事になった。


最初こそ、落ち込んでいた角田講師だったのだが、180㎝、78Kgの細マッチョになっている俺に、接近してくるようになった。


超小型カメラには、マイクは付いていない。

そう。音声は拾わない。

パソコンの操作から目を動かさずに、角田講師に注意する。


「この部屋は監視されていると思いますよ。あんな事があったんだし…」


「えっ! ……」


「キョロキョロしない!」


「ひゃい!」


「本当に片桐講師と結婚する予定なんですか? うそなんでしょ?」


「あ、はい…」


「どうして?」


「あ、あたし、何かパソコンをパパパって操作できる人に弱いみたいで…」


「好きになっちゃう?」


「そうそう。なんかカッコイイですよね!」


こういう機械音痴の人は、機械に強い、パソコンに強い人に弱い傾向があるみたいだ。


「あたしの家のパソコンも調子悪くて…どうしたらいいか分からなくて…」


「具体的には?」


「『インターネット接続なし』とかが出てくるんです」


「それで?」


「いや、だから…」


「そのまま?」


「そうそう」


「それが切っ掛け?」


「え~ 違うわよ…いきなりそんな事、頼めないわよ~」


キスする方が『いきなり』と思うのだが…


「俺が見てあげましょうか?」


レジュメの紙を裏返しにして、メモとして渡し、住所と電話番号を書いてもらう。


「ほんとに? 助かる!」


メモに何やら記入しながらだから、動画を見ていても不自然さはないだろう。

早速、次の日曜日にマンション前まで行ってから、電話を掛けた。


「はい、もしもし角田です」


「あ、おはようございます角田先生、石山です。近くに用事があって来たんで、寄ろうかと思ったんですけど…早過ぎました?」


「あ、いや、そんな事ないけど…ちょ、ちょっと片付けるから待っててくれる?あとどのくらいで来れるの?」


「あぁ~ マンションを見付けてから電話を掛けたんで、もう目の前です」


「じゃぁ、玄関で301号室を呼び出して。ドアを開けるから…」



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