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孤独の人  作者: 神の恵み
現代編
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第42話 らん姉ちゃん


期末テストが始まった。

この1組の生徒達は、高等部に進めば恐らく普通科60名の上位を占めるだろう。

大学への進学コースだから、俺と蘭のように、将来を限定されている者は少数だ。


だけど、今は立ち位置など考えず、目の前の問題に取り組もう。


毎日、試験後に振り返りを行い、道場や塾に行く。

今ではもう、蘭と手をつないでも当たり前になってドキドキはしない。

オーナーも知っているのか『儀式も終わったようだし…』などと言う。


試験が終わった最終日、クリームソーダを頼んだ。

蘭もオーナーも驚いていたけど、俺も驚いた。


「こんな美味いものがあったのか~」


「こんな冬に、初めて注文したの?」


「うん、飲んだ事なかったから…」


最初に食べたアイスをソーダで流し込む。

それでも、口の中に甘さが残る。

ま~ 1回飲んだからもういいんだけど。


蘭が俺をじっと見てる。


「期待外れだった?」


「どうして何も言ってないのに分かるの?」


「だって~ あきらは分かりやすいし…」


「やっぱり夏はフラッペがいい…。そんな顔してるのかな」


「ははは。あきらに似合わないのは間違いないわね」



「ちょっと飲んでみて…」


そう言うと、蘭は携帯を俺に向けた。


『パシャ』『パシャ』


正面と横から撮った写真を見せられた。

今すでに176㎝を超えそうな俺が、すごい猫背でストローをすすっている姿。

横からの写真が、グラスを持てば良かったと後悔させる。


「は~ 確かに醜悪とも言えるな~」


「私はそこまで言ってないけど…」



蘭の携帯を返して、俺の携帯で蘭を撮影する。


『パシャ』『パシャ』


1枚は自然な姿で、紅茶をお皿に戻す途中の下向きの顔。

もう1枚は、俺の撮影を止めようと手を伸ばす姿。


「ん~ん、かわいい」


いや、本音でかわいい。

その蘭が、俺の横に視線をずらし、ガラス越しに商店街に目線を這わせた。


「またクリスマスね…」


そう、またリックさんの命日でもあるクリスマスが来る。



父からメールが来た。


9月に産科で妊娠を確認したあと、11月末ごろに『つわり』が始まり、弁当屋を休んでいるそうだが、実家に陽菜を預けずに、家政婦に来てもらっているとの事。


陽菜自身が高橋の会社兼自宅を嫌がるのが、その理由だそうだ。


高橋家の家政婦は、既に5歳になっている陽菜をしつけようとする事がある。

お箸の置き方や姿勢など、『お嬢様らしく』と言うらしい。

だが、陽菜は自由に育ってきた。


もちろん、乱雑な性格ではないし、十分に合格点には達していると思うのだが…

そんな陽菜が弁当屋に行きたがるそうだ。


麻衣さんは『つわり』の事もあるし、安定期を過ぎるまでは、運動を控えていて、陽菜をだっこする事はできない。


俺だって、長時間は無理だけど。

冬休みの間だけでいいから陽菜のお昼に付き合ってほしいとの事。


夏休み以来、久しぶりに陽菜を連れて弁当屋に行き、陽菜とイートインで食事をする。

陽菜の弁当は、特別メニューのクリスマス仕様になっていた。

鶏肉が食べやすいように細かくされて、且つ、カラフルな弁当だ。


「えっ 石山くん!」


そこに顔を出したのが、あずま 美咲だった。

なんとなく、そんな気がしていた。

オーナーのおばさんとは、似ていない顔ではあるが…


「あんた、あきら兄ちゃんの事、知ってるのかい?」


「同級生だよ! もしかして、私に会いに来た?」


「そんな訳あるかよ! この店は陽菜のお気に入りなんだ。な~陽菜」


新しい人物の登場に、若干引き気味の陽菜。

ただ、うなづいてくれただけまし。


次々と声を掛けるおばさん達。

陽菜はエプロン姿のおばさん達が好きなようだ。

食べ終わったあと、代金と預かった手紙をオーナーさんに渡した。


おばさんは、すぐに読んで、ほっとしたような表情だった。

父の家に戻り、麻衣さんに気になっていた手紙の件を話した。


「手紙を渡したんですけど、オーナーさん何だかホッとしたような表情でした。」


「そう…もうあきらめが付いたのかしらね…」


どういう事か聞いてみたが、弁当屋の業務用冷凍冷蔵庫が不調で、先月も知らない間に止まっていて、食材がダメになってしまったらしい。


修理の見積もりをもらったのだが、既に部品は生産中止になっていて、修理はできないとの事。

新しく買うと150万円もするが、それだと回転資金が無くなってしまう。

そこで麻衣さんがお父上の高橋会長に融資を頼んだのだが断られた、そういう手紙だった。


「お店をやめるかも知れないと?」


「次に冷蔵庫が動かなくなったら、その時には…」




この日の出来事を蘭に話すと、なぜか明日からは蘭も来ることになった。


最初は、初めての人に引き気味だった陽菜だが、蘭が料理を始めてからは、『次はどうするの?』などと話し掛けていた所を見ると、料理に関心があるのかも知れない。


食事が終わったあとも、『らん姉ちゃん』と呼んで、遊んでいた。



麻衣さんは年末までに『つわり』の時期が終わったようだ。

蘭の料理に反応した陽菜を見て、麻衣さんも料理を作るようになった。

陽菜は、料理ができるまでの途中が気になるらしい。


だが、父は料理に関心がない。

祖母は、父が台所に入るのを許さなかったため、父もそれがタブーだと理解している。

男はそんな事よりも、もっと大切な事に時間を使うべきだと教えられたらしい。

その分、父は勉強をしたそうだ。


父は料理を批判しない。

食べられれば、それで良いと言う。

そんな父が蘭の料理をめていた。


祖母と蘭のイメージが重なったのか?

もしそうだとしたら、短時間で要領よく料理を作ったからだろう。

蘭の料理は、性格を反映しているのか、速く出来て、あっさりした見た目の物が多い。


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