第39話 芝居
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
昨日、予約投稿にてミスをして第39話の訂正前の原稿を投稿しておりました。
それに今朝気が付いて、削除させて頂いています。
ほぼ同じ内容ですが、第39話を改めて投稿予約しておりますので、よろしくお願いします。
『受想行識 亦復如是』
受、想、行、識、すなわち自己の精神要素もスペース。
物質だけでなく、精神要素さえも、枠のない開放的な広がりになる。
そんな意味だそうです。
もう、物質も精神的にも、何も望むな…すべては空なのだから…
そんな風に言われている気がしてきました…
解説本からの推察です。
翌日は道場での稽古があるため、蘭の着替えを待つ間、喫茶店でコーヒーをごちそうになった。
するとオーナーが向かい側に座って
「近頃あきら君に、多くの女子生徒が接近して来ているようですね~」
「は~? そんな事ないですよ」
「前田純子に野村優香。野村病院の娘ですね」
「えっ、あの大きな病院の娘だったんですか?」
「そして、1年生では、助重彩乃。英語講師の姪っ子ですね」
「は?…あの助重講師の?」
「ご存知ない?」
「知りませんけど…」
「クラブ活動の勧誘に行ったでしょう?サッカー部のマネージャーだそうですね」
「あの子が…でも、どうしてそんな事知っているんですか?」
「蘭からの情報を元に、全てこちらで身元調査をしてますから、ご安心を」
「いやいや、安心って…」
やばい。やばいやばい。
まじめにしないと、暴走族に襲われる!
「お待たせ~」
蘭とふたり、道場で稽古をしてから、コインランドリーへ。
帰りはいつもの散歩道。
当然、手をつないだだけで終わるはずも無く…と思っていたのだが。
「あっ だめよ! 汗臭いから」
口を手でふさがれてしまった…。
7-9月期の決算報告が届いていた。
速報版でも、前年同月比は1.2倍と好調は維持している。
前年7-9月期から挽回したので、倍率こそ低いが売上数字は良い。
それに、口コミが効いてきて、同業の中国系、韓国系の業者よりも満足度は高い。
粗利益率は彼らよりも悪いが、不良在庫が無く、返品されたB級品は割引販売ですぐに無くなってしまうほどだ。
故意に悪意に返品するユーザーは、履歴により、自動的に抽出して警告を発し、ブラックリストに入れてしまうので、取引はできないようにECサイトにも通知している。
攻めだけでなく、守りも必要だ。
4-6月期に採用した作業者クラスのアルバイトに、他社からのスパイが入り込み、商品の破損事故、梱包作業ミス、欠品などがあったのだが、いずれも発送前に発見でき、事なきを得た。
更に監視カメラの増設を計画している。
悪意のアルバイトが帰国予定の留学生だったため、短期アルバイトを採用しない事にした。
また、応募者の情報発信内容が当社理念に合致するかチェックできた者に、採用面接を行うものとし、課長クラスに部長クラスを1名追加同席してもらうようにした。
K国やC国の企業が金を出して妨害工作を仕掛けてくる。
やる事がえげつない。
だが、こちらも『ちょっと話を聞かせてくれない?』と100$札を見せれば、どこの会社の誰が画策したのか…彼らはいとも簡単にすべてを教えてくれる。
余談だが、オーストラリア紙幣はすべてプラスチック素材で作られた、変な感触のお札だ。
中間テストが始まった。
いつもと同じ、教科書とワークプリントからが80%。
あとは応用問題と発展問題が出ることもある。
午前中に2科目のテストがあるだけで、学校は終わる。
あたかも、戦いに敗れた者のような雰囲気の生徒や、意気揚々と帰る者もいる。
中学生なのに、面白いものだ。
上位陣はみな冷静だが、山里は違った。
恐らく父親からの罰、解体業の手伝いという労働刑が効いたのだろう。
あの1週間の勉強不足が祟ったようだ。
だったら、次に来る3位の男は誰だろう?
そうか…期末との合計で席移動になるんだった。
11月はテスト後のイベント盛りだくさんの月だ。
中等部2年は、美術館の見学。
高等部4年は、企業の見学や1日体験などもある。
中等部3年と高等部5年は、修学旅行がある。
2年生の半分が終わったいま、そろそろ高等部の進学先を決める頃だろう。
普通科は大学進学だが、総合学科と国際経済科は企業からの引きも多い。
建設、鉄鋼、電気、運輸、通信など、これから決めるのだろうか。
蘭は、父親の創業したリックトレードを引き継ぐのだろう。
だとしたら、俺もオーストラリアでできる事業を考えねばならない。
そんな事を考えていた時
「おい!前田という奴はどこだ?」
いきなり、体格のいい、それも餃子耳の男が教室の入口に来た。
「いや~! 石山くん、助けて!」
芝居掛かった声で、俺の背中に張り付く前田。
「大丈夫だから、落ち着いて…」
と背中の前田に言って、教室入口に行った。
「前田がどうかしましたか?」
「いや、こんなメモが俺宛に届けられてな…」
見ると、ノートを破った紙に、『お前に話がある。2年1組の前田のところまで来い。逃げるなよ』と書いてある。
「なるほど…でも先輩、前田って女の子ですよ?」
「なに? 女の子?」
「ん~~ ファンレターにも見えないですけどね。柔道部ですか?」
「そうだ。今は大会前で忙しいんだ!いたずらなんてしやがって!持って来たのは男だったそうだ」
「すいません。これ、もらってもいいですか? 調べてみます」
「お~ すまんな。犯人が分かったら、俺の代わりに投げ飛ばしておいてくれ!」
そんな先輩が階段を上がっていくまで廊下で見届けてから、3組の教室に行こうとしたら、1組の後部扉の所に、前田の護衛がいたので、捕まえた。
「ちょっと来い!」
階段スペースの所まで連れて行き、尋問を開始する。
「おい!」
ここで、彼の左手の薬指と小指を握り、逆方向に決める。
「正直に言わないと、指を折るぞ!」
「痛たた、なにをするんですか…」
「このメモを書いたのも、3年の柔道部に届けたのも、お前だよな?」
「そんなはず『折れるぞ…』痛たたた…そ、そうですそうです」
「ふん、なかなかご主人思いだな…」
教室に戻ろうと振り返ると、あわてて教室内に戻る前田が見えた…。
「最初のセリフの練習からやり直せ! バカがっ」




