表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤独の人  作者: 神の恵み
現代編
PR
33/113

第33話 ハモる


進級して、2年1組になった。


教室は3階になり、席は相変わらず窓際だ。

蘭は無事に1組になり、2列目の窓際。

つまり5位の席で、俺の斜め後ろ。


次の目標は2位になって、隣同士に並んで座る事だろうか…。


お昼休み、食堂には野村優香と清水が並んで席に座る姿が見えた。

蘭も気が付いたようだ。


「清水くん、女子の友達ができたみたいね」


「うん、でも初日だから、まだ友達とまでは言えないかも。じゃましないようにしないと…」


「そうだね」


午後の英語の授業になり、教室が移動になった。

100インチディスプレイが設置された教室を1階に作って、英語教室となっていた。

なるほど、高額な設備だから共有できるようにしたようだ。


2年生用のコンテンツも作られていた。

ま~ やり方さえ分かれば、誰でもできる。

重要なのはレジュメなのだから。




今日の授業が終わり、蘭と教室を出ると、うしろから声が掛かる。


「待ってくれよ~」


清水の声だ。

振り返ると野村さんの姿はなく、彼ひとりが走ってくる。


「一緒に帰ろう!」


蘭に小声で

「ガールフレンドの報告かな?」


「はは。かわいい」



俺と蘭の間に割り込んで来た。

仕方がないので、俺が後ろにさがる。


「ま~た2組だよ~」


「そんな話はいいから、野村さんの話をしろよ」


「なんで名前を知ってるの?」


先に反応したのは蘭だった。


「1組の断トツトップの男は斉藤くんで、彼の親戚だと本人から聞いたからね」


「そうなの…」


「清水、今日食堂で見たよ」


「そうそう、仲良く並んで食事してたでしょ?」



清水はつまらなそうな表情で


「あ~ あれか。彼女から声を掛けられて、一瞬喜んだけど、お前達ふたりの事ばかり聞かれたよ。俺には関心ないみたい」


「どういう事?」


「俺が聞きたいよ」


少し前の情報だけど、それを出しておこう。


「2組の前田純子の所に、3組の男女が来て、蘭に対する脅し文句を言って帰った事があっただろう?」


「ああ、あったな」


「あれと関係あるのかな?野村さんも3組だったんだろ?」


「…どうだろう…」


「そう言えば、前田純子は1組に入って来てたな」


「そうそう。わたしの真後ろだった」


「3列目、8位だな~ にらまれた?」


「だから、にらまれた事ないって…」



いつもの通り、駅とは反対方向に歩く俺たちの横に、車道の車が並んだと思ったら


「有本さん、送ってあげようか?」


山里のぎこちない笑顔が、車の窓越しに見えた。


「誰?」


キザオくんで通っている3位の山里を知らない蘭ではないはずだ。

蘭は腹を立てると、本当にきつい。


「そんな庶民のどこがいいのかな~」


そう言うと、スーと窓ガラスが上がっていって、車は走っていった。


「昔、2組に来てたけど、わたしが昼休み教室にいなかったら、来なくなったんだけどな~」


「えっ? そんなことがあったのか…言ってくれれば良かったのに…」


「ううん、あの頃あきらは理事長に呼ばれたり、忙しい頃だったから…」


「あ~ あの頃か~」



2年生になって、俺や蘭に部活の勧誘が来た。


「いや、部活って1年生まででしょ?勉強があるんだし…」


俺にはそんな余裕はない。これがお断りする定番のセリフだ。

中高一貫校にいると、高校受験という緊張感を失ってしまう。


清水は、以前に話をしたお役所勤めを真剣に考えているようだ。

小売業は今でも実店舗の経営が難しい。


金物屋さんから、徐々に鍵屋さんあたりにシフトしていく事を考えてはどうだろう。

鍵の紛失には、即応性と対応力、技術力がないと対処できないから。


俺の提案を、そのまま父親に言ったそうだ。


「お前な~ もっと自分なりに消化して、発展させてから言えよ」


思わず本音を言ってしまった。


そもそも社長にはVisionが、取締役にはPolicyが、執行役員にはGrand Strategyが求められる。

それを企業の将来像も大戦略も無しに『こんな仕事がしたい』などと…。


「そうか~ 俺ももっと勉強しなきゃな~」


この男、小学校の時は鈴本に引っ付いていた。

鈴本と同じ学校に行くと言い、同じ学習塾に行っていた。

だけど結局、自分だけ落ちて、今は俺と蘭に引っ付いてくる。


どうも自分自身の問題点が見えていないようだ。


俺はこれ以上、清水に干渉すべきじゃない。

彼が失敗した時、『お前のせいだ!』とか言われそう。



そういう意味では、俺自身の4-6月期の目標は何だろう?

蘭にも聞いてみた。


「取締役にはえらそうに言ったけど、俺たちの目標は?と思っちゃったよ」


「そうね~ 私が相手をした秘書役の彼女はMBAを目指してるから、結構具体的なところまで考えていたわね」


清水は俺たちの方を見ながら、聞き耳を立てていた。


「なにか質問は?」


「う~んとね、MBAってなに?」


「そこか!」

「そこか!」


俺と蘭はハモってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ