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孤独の人  作者: 神の恵み
現代編
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34/113

第34話 おやすみ…


最近、父の家に来る機会が増えている。

URの団地を選んだのは、転居の可能性が高いからだという。

継母の麻衣さんの父親は不動産業を営んでいるらしい。


麻衣さんが26歳の時、ミュージシャンと恋をして陽菜ちゃんを妊娠したが、彼氏は認知も拒否。

それ以来、彼氏とは音信不通で、父親とも絶縁状態になった。


さすがに住む所はそのまま住めたが、出産後はクラブで働き、人気はあったそうだ。

だが、母親は孫の面倒を見るような性格では無かった。

代わりに家政婦が送り込まれて来た。


裕福な家庭で育ち、音楽ピアノを教養としてたしなむ程度に習得した。

それが、クラブでの生演奏に生かされ、父が関心を示すきっかけだったそうだ。

確かに、父も口下手だからね。


そして現在、2度目の相手が官僚だと知ると絶縁を解かれ、近所に越して来いと言われたらしい。


陽菜は2008年生まれの5歳。

家政婦が2~3人交代で世話をして、4歳で義父を得た。

まるで、俺と似たような境遇だ。


今日は、その陽菜の5歳の誕生日だったのだ。

総菜そうざいのお赤飯とインスタント味噌汁、それにスーパーの人気ブランドのサラダ。

他にも中華や和食もあるが、いま勤めている弁当屋のものだろう。


俺も、山寺に預けられるまではそうだったから、何も言わないけど。

陽菜は、表情が乏しい。

相手の顔色を見ながら反応するくせが付いているみたいだ。


俺の近況を父に話した。

同じクラスの1位、斉藤くんが医者を目指していること。

そして3位の山里くんは、屋敷に家庭教師を呼ぶ、わがままな子であること。


「山里興産さんね。わたしも知ってるわ。昔のお店にたま~に来てたから」


「子供の方は、ずんぐりむっくりの奴だけど…」


「あはは。お父様も同じ体形ですよ…ケチなので、あまり歓迎されてなかったですね」


麻衣さんが、ニコニコしているので、陽菜も俺には安心しているようだ。



以前と同様に、中学3年用の参考書と問題集を父にお願いした。

また、父のアドバイス通り、英検2級を目指す事になったと報告して、その夜は帰った。


中学生の英語は、蘭にとって全く問題にはならないが、高校レベルだと単語も増えて勉強は必要になるだろう。


個別指導の塾を信頼しているのだろう。

蘭は俺にもこの塾に変わらないかと言ってくるが、今の塾は父との関係も良く、費用も父が出してくれているので、変えるつもりはない。


もし、英語塾を変えれば、道場へ通っている事が誤魔化せなくなる。

道場の稽古着を近くのコインランドリーで洗い、持ち帰らないようにしている。

家庭の洗濯機では皮脂汚れが落ちないし、乾燥機の威力が違う。

だが、最も大きな理由は、道着が見つからないようにしているからだ。 



4-6月期の目標は、高校受験の過去問と中学3年用の参考書と問題集をやる事だが、基礎重視には変わりはない。


蘭の祖父、英二さんは


「身体は鍛えないのか?」


と聞いてくる。

道場の事は知っているはずだから、別の思惑があるのだろう。

つまり、『蘭と一緒に道場へ通え』という意味か?


スポーツブラとTシャツ、その上から道着という蘭を想像してみる…。

ま~ だけど、俺と組むという事はないだろう。

女性は女性同士。


「え~と…」


英二さんは、ニヤニヤしている。やはりそういう事か…。


「実は、合気道道場に通ってまして…」


「ええ?そうなの?」


「そうそう。蘭も良かったら、一度、体験入門してみる?」


「うん!やってみる!」


やっぱり、こうなるのか…英二さんとしては、ここらで内緒はやめにしておけという事なのだろう。


見学は予約不要でいつでもOK。

体験コースは予約が必要で、俺は一般コースだが、体験は基本コースで行われる。

俺が行っている時間帯で予約した。


どうせ俺と同じ時間帯に稽古するだろうからね。

当然、英二さんは見学、蘭は基本コースの体験をした。

結構、道場には外国人もいる。


早速、稽古終わりに女子トークが始まった。

その間、英二さんが正式に入門手続きをしていた。



山寺の住職、健一さんが送ってくれた解説本によれば、元々は三蔵法師の玄奘げんじょうがインドから原典を持ち帰って、それを漢訳したものが般若心経の元になったそうだ。


三蔵とは、経蔵、律蔵、論蔵の3種類の仏典を指し、それに精通した僧侶を、三蔵法師というらしい。


西遊記は小説だが、玄奘は実在の人物だったそうだ。


仏教は、出家者の修行のために使われる小乗仏教と、すべての人は救われて、仏になれるとした大乗仏教に分類できるらしい。


般若心経は、その大乗仏教の濃縮版だそうだ。

短いお経なので、初心者にぴったりと書いてあるが、浄土宗、浄土真宗、日蓮宗では般若心経の読経どきょうはしないとの事。


お経はどれも、ドラマのような劇になっているらしい。


手を洗い、口をすすいでから読経せよ、とある。

(そうでしたか…以降、気をつけます)



具体的な解説部分になって、眠くなって来た。

おやすみなさい。


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