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孤独の人  作者: 神の恵み
異世界編
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112/113

第112話 複数の妻


昼からの予定どころか、午後5時の予定が決まってしまった。

ローリーを1年の教室から呼び出し、市内の市場にエミリーとハナを探しに行く事にした。

一旦屋敷に戻って、通信の魔道具を父ヘンリーに返却するとともに、改造品の操作を説明するためだ。


馬車には買い物をした荷物を乗せたので、ローリーは馭者ぎょしゃの隣に座ってもらった。


「今日、学園でアメリア・ミラーと会った。俺は彼女と会うまでは忘れていたんだ」


エミリーの驚いた表情が、悲しそうな表情に変わったことで、俺とアメリアの事を何か知っているのだろうと想像できた。


「2人の事を知っていたんだな?」


「はい。私が14歳で専属メイドに選ばれたあと、しばらくして、アキュラ様からお話し頂きました。自分には思いを寄せる人がいるからと…。その1年後、アキュラ様が宝物庫で倒れられて…新しく目覚めたアキュラ様は私にやさしく、私を愛して下さいましたから、もうエミリーは十分幸せです」


俺はエミリーを抱き締めて言った。


「元のアキュラは、召喚された俺の中にまだ残っていてアメリアを愛してる。そんな彼の気持ちが、今の俺にも影響を与えていて、俺もアメリアには好意を持っている。だが、アメリアを妻にするつもりはない。どうやら10歳の時の俺は、とんでもない野望を持っていたようだが、それは子供だったから許される事だ。」


ハナ

「あの~ 話について行けてないんですけど…」


「うむ、そうだろう。今、言ったように、俺は宝物庫で倒れたアキュラではない。ライアン侯爵が召喚の水晶を使って俺をアキュラの体に迎え入れたんだ。だけど、以前のアキュラも俺の中に少しだけ残っていて、俺に何かを訴えてくる時もあるんだ。ハナに聞かせたのは、お前が俺の妻になり、侯爵部隊を率いる可能性があるからだ」


「いったい、私はどうしたら…?」


「俺はどう考えても戦闘には向いていない。だけどライアン爺さんは俺を後継者にすると決めている。俺も何かあって死ぬのも嫌だし周囲も困る。そこで公爵夫人としてハナを迎え入れて部隊を指揮させる。それがウォーレン爺さんとライアン爺さんの考えなんだろう?」



「はい。合意していると言っていましたけど…」


「ハナもそのつもりで、今までつらい訓練に取り組んで来たのだろう?俺も以前の人生では合気道という護身術を習っていたので、訓練の辛さは分かるんだ。第一、俺を守ろうとする時のハナの態度は信頼に値する。こんな俺が嫌でなければ、いまのままで進めていいと思う」


エミリー

「大丈夫ですよ、アキュラ様は貴族ですから。男爵位なら妻は2人、子爵位以上なら妻は3人まで認められていますし、私は生涯ずっと、アキュラ様の専属メイドとしての務めを果たします」


「それってずっとエミリーと同じベッドで寝てもいいって事?」


「いいえ、同じベッドでは寝れませんけど、必要な時だけ、同じベッドで過ごしても構いませんよ。それが専属メイドの務めですから…」


ハナ

「私も専属メイドまでは当然だと思いますけど…妻が3人は想像がつきません…」


「まだ未定の、先の話だ」





屋敷に戻り、エミリーと荷物を下ろして、少し休憩を取った。

まだ街道の改修がされていないため、20分といえども馬車移動は疲れる。



改造した通信機を馬車に積み込む、再びローリーとハナを連れて宮廷に向かった。

いつものように、俺だけ待合室で補佐官に迎えられて、父の執務室へ行く。


「よく来たね。今日は何だい」


通信の魔道具に使われていた魔法陣の解析と、改良機が出来たので説明する。


「この通信の魔道具は、隣国の母シャーロットから送られて来たものを改良したものです。ここにあるダイヤルを『1』にしている時は母の所に通信ができます。そのあとの『2』から『6』までは、この国の中で通信ができる設計です」


「この鍵を差し込んで、回すと水晶に1の数字が映りますが、その後、『呼び出し中』の文字が出て、つながると『同期中』と文字が切り替わり、画面が見え始めます」


「アキュラ? アキュラなの?」


「…アキュラです、前回はごめんなさい。お母さんが再婚したのを知らなくて、俺だけ置き去りにされた気がして、腹が立って切っちゃったんだ。ごめんね母さん。」


「いいのよ!お母さんが手紙も出さないで、話もしてなかったから…」


父ヘンリーに水晶前の席を代わってもらう。


「ヘンリーだ。久しぶりだが元気そうで良かった…アキュラは前回のショックを乗り越えて、今は大丈夫だ。そちらの国の事も含め、手紙でアキュラに教えてやってほしい。慣れてきたら、また通信機を使うだろう」


「分かりました。私も突然、夫を出してしまって、配慮が足りなかったと反省しています」


「ところで、毒ガエルはアキュラが仕事で使う資材なんだ。荷馬車2台分をライアン侯爵邸に送ってほしい」


「分かりました。代金は引き換えでいいかしら?」


「あぁ、それで頼む。では」


父は無残にもここで鍵を切ってしまった。


「この鍵付きの通信機は、父上に使ってもらいたいんです。あとの通信機は鍵の代わりにスイッチが付いていて、『1』は無効、『2』番をヘンリー宮廷執務室、『3』番をライアン侯爵邸、『4』番をライアン研究所になる予定です」


「そうか…わかった」

「こちらから伝えておく事はまず、4公爵会議が開かれ、北部領主モーリン公爵家は領主ではなくなった。これからは最低限自立できるように、銀行から融資を受けて子爵位として現在の領地を維持する事になった」


「モーリン子爵領以外の北部エリア中南部は、西部領のジョンストン公爵家が管理する。これは東部領と南部領が経済的に大きいので、経済力としてのバランスを保つためだ」


「なるほど…予想通りですね」


「それと、公共工事の街道整備、及び、労働者確保のための難民寮運営、寮長委託に関してカメロン男爵家が落札した。舗装工事、寮の運営について、提案者としてアキュラが責任をもって指導するように」


「はい」


「ま~ 偵察隊に見張らせるか、警備隊に護衛名目で監視でもさせれば良いだろう」


「そうですね、そうします」


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