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孤独の人  作者: 神の恵み
異世界編
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111/113

第111話 アメリア・ミラー


361年5月10日


朝起きて、準備運動をして、屋敷の周囲を5周ランニング。

だけど、2周目からはなぜか警備隊の隊長リック、副隊長のルーシーが後ろに付いて来た。

3周目になると、警備隊の隊員12名とローガン、ギャニオン、ライラが付いて来た。


5周目が終わる頃、ローガンが叫んだ。


「大将!もう1周追加!」


50歳の引退者から言われるとは…。


俺はランニングを終えて、別館の部屋に戻ってシャワーを浴びたが、外からはまだ掛け声が聞こえる。

警備詰所とは別に、2名が門番のように門扉の手前に立っていた。


朝食後にお爺さんに聞いてみると、警備隊とは別に雇った『門番』で、朝7時から夜20時まで働くブラックな環境の門番であった。


警備隊は朝5時から13時、13時から21時、22時から5時までの3交代制の2部隊。

1小隊は近接戦闘×2プラス2中距離(魔法など)の4人構成。3班構成で1小隊となった。

第1小隊スタンリー隊長。第2小隊はエリオット隊長、非番や連絡係などはグレイソン小隊長に指揮してもらう事になった。


このメンバーは、男性をリック隊長が、女性をルーシー副隊長が選んだ、全員防護砦出身の者達。

気心は知れていて、チームワークはいい。



俺は今日、学園に行く事にした。

エミリーにその事を伝えると、自分も王都中心部に買物に行くといい、見習いを入れて4人で侯爵邸の馬車で行くことになった。


みんな俺と同じくらいの歳だが、ハナは体格が一回り小さいのに強い。

中心部まで近づくと、エミリーが商店のある場所で下りて、護衛にハナが同行する。


学園の入出門ゲートに学生カードを当てて中に入ると、『1B教室-騎士団(近接戦闘)』と表示された。

これまた自信のない対人戦闘だが、教室で受ける戦闘の授業だけに、基本的なフォーメーションの説明から始まった。


前衛3後衛1のフォーメーションでは、1人が怪我をしても、前衛2中衛1後衛1に移行する方法がある。

様々なケースを想定したイメージトレーニングのようであった。

次に小隊が複数ある場合の連携など、過去の魔物戦における連携の例が紹介された。



2時限目は『1D教室-宝箱とアイテム』


授業を放棄して、面談室でガーショム講師に面会を申し込み食堂で連絡を待つ。

学生カードに『図書室-面談』と表示されたので、図書室に向かう。

この人は暇があれば図書室にいるという評判通りのようだ。


「ガーショム講師、侯爵に襲撃の可能性を事前に警告して頂いていたようで、ありがとうございます」


「あぁ、いや、間に合わなかったようですが…」


「つきましては、『トミー・ウォーカー事件の背景、動機についての考察』をお願いしたいのです。特別な個別授業といいますか、レポートを頂けないかという仕事の依頼なのですが…」


「おぉ、それでしたら研究レポートを作らせて頂きます。それでよろしいかな?」


「はい。出来上がりましたら、お呼び出し下さい」


ガーショム講師を味方に付けるのが目的なので、個別授業の内容は何でもいいのだが、歴史研究からそのような結論が出たのは興味深い。


俺は今更教室に行くのも気が引けるので、早めに食堂に来た。

男女平等になったとは言え、貴族には『貴族席』という大きめの部屋が用意されている。

庶民は元々男女同席なんて当たり前の事だからね


カウンターに並ぶ者がいないフライング状態。

これがSランクの特権か…。

俺はグルメじゃないので、ランチセットAを買って、トレイを持って別室の貴族席へ。


Sランクは俺だけだと思ったが、先客がいた。

(単なるサボりかな…)


トレイが無いところを見ると、単なる密談に使っていたようだ。

なにか言いたい事がありそうな顔をしていたが、席を立ち、部屋から出ていった。

さて、昼からは何をするべきか…しばらく貴族席で考えていると


『カチャ』


「やあ、ここに居たんだね…」


そう言って入って来たのは、ミラー子爵家の兄妹。

兄のアーサー・ミラーと、妹のアメリア・ミラー…。


アメリアの顔を見て俺は固まった。

この娘の顔には見覚えがある。


10歳頃の記憶だろうか…ライアン爺さんに連れられて、ミラー子爵の屋敷に行った時の記憶がよみがえって来た。


確かあの時、珍しい水晶が箱に入っていて、お爺さんとミラー子爵、兄のアーサーが夢中で話をしている間、俺はアメリアに手を引かれキッチンに行って、菓子をもらって食べたあと、じゃれ合うように屋敷内の部屋を一緒に探検した。


アメリアの部屋のクローゼットに隠れ、キスをした。

アキュラの初恋だったようだ。

アキュラの心が俺を揺さぶりはしたが、圧倒する事もなく、彼の心は消えていった。


「アキュラさま、私のこと、覚えていますか?」


「あぁ、まるで昨日の事のように、よみがえってきたよ。大人になったね」


「アキュラさま!」


そう言って、俺の元に歩み出したアメリアの腕を、アーサーがつかみ取った。


「待て、アメリア。お前達は婚約をしている訳ではないし、アキュラも侯爵を継げる訳じゃないんだ」


確かに、子供のころの俺は侯爵を継ぐと考えていたが、世の中はそれほど単純じゃない。


「確かにそうだ。おまえ達もここ南部領では何の権限もない。それで、この貴族席に来たのは俺と話をするためなのか?」


「あぁ、アメリアの事もあるし、Sクラスのお前となかなか話をする機会が無かったからな。それで、今日にでも俺たちの家に来てくれないか?ここでは時間もないからな…」


「分かった。家は貴族街の新しい2階建ての家だろう?」


「何で知っているんだ?」


「王都の貴族街は人口が増えていて空き家がないからね。新築なら思い当たるのはあの一角だけだ」


「3軒並んでいる奥2軒が私達の家だ。手前にある俺の家に来てほしい」


「分かった。夕方5時でどうかな?」


「それでいい」


それにしても、アキュラの思いに引きずられているのか、アメリアはとてもかわいい。

やや細い感じがするが、14歳くらいの少女なのに色気がある。


「では、失礼する」


そう言って、俺の目の前を通り過ぎるアーサーと、それに続くアメリア。

勝手に手が動き、アメリアの手を取った。


「あっ! お、おい!」


「アメリア、お前が学園に来た目的は、俺に会うためなのか?」


「…そうです!そして、あなたの夢のお手伝いが私の願いなの!」


彼女を俺の腕からゆっくり解放して、兄アーサーに返した。


「今夜、これからの事を話そう。じゃあ」


そういって、俺も部屋を出た。

突然、俺の中のアキュラが出て来て驚いたが、反面、俺の覚悟も決まった。

もう二度と運命に振り回されない!と。


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