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孤独の人  作者: 神の恵み
異世界編
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110/113

第110話 救済教会


361年4月30日


今日から銀行が稼働かどうし始めた。

しかし、世間に認知されていない所に来る客はいない。


そこで今日は、ライアン侯爵邸の人員を総動員して、テスト営業をしている。

紙幣交換窓口×2、両替窓口、硬貨の交換の4つの窓口に並ぶ客の役割。


城壁に穴を開けて窓口にしたが、その奥が銀行本体。

もちろん客側の窓口手前側にも屋根や壁を付けて、出入口には警備員も配置している。


紙幣というより兌換券だかんけんだが、羊皮紙の2㎝×10㎝が銅貨用で、更に10という数字がある物は大銅貨用。

難民寮の労働者には、当面、この2種類でOKだろう。


10時から12時までの2時間、しっかりと演習して、貨幣の過不足をチェックする。

さすがに、宮廷官僚なので計算に弱い奴は混じっていないようだ。


演習と称して曲がった硬貨、すり減った硬貨などの劣化硬貨を隊員達から集め、交換した新品の硬貨を返す。これが今回の日当という事だ。


ダンジョンから出る金貨、銀貨などは、がらは違うものの『造幣機』で作られた貨幣と同じ重さ、配合であり、この世界では混ざった状態で流通している。




さて、午後は赤文字で示されていた納税滞納者、不審人物などが第4区に移動させられた跡地に来ている。

第3区のこの土地には、貴族用物件として6軒の2階建てを建てる予定だ。

元の世界で言う『駐車場付き分譲1戸建て』という物件だが、馬車が置けるという意味でも敷地面積だけは大きい。


そして、同じく第4区に移転させた娼館があった場所に、ソフィア皇国が普及を進めている『救済教会』というのを建てるつもりなのだ。


実は、ソフィア語で書かれた本の中に、『救済教会と修復の魔法』というアイゼイアという人の著書があって、その『救済教会』という施設で初めて飲み薬以外での治療が行われたらしい。


この本には、局所麻酔の噴霧液とクリーンの除菌魔法、そして修復の魔法を使う手順が書かれている。

その次のページからは魔法陣が書かれていた。


この魔法陣は、外円部の四角い部分の起動部が無く無属性の魔力を使うらしい。

円周部には走査範囲を直系で1~3m、最大高さが3mと書いてある。

内側にあるのは走査直径と高さが変数で入る計算式。


第2円周部は、走査速度が1~10秒/cm、走査対象は4桁指定(骨、筋肉、血管、神経)と書いてある。

4桁指定は、走査なしが『0』有りが『1』。


つまりCTスキャンみたいなものだ…。

このスキャン魔法のあとに書かれていたのが修復の魔法陣だった。


だが、『修復の魔法は、見えない所は治せない』、『意味が分からない』、『うまくいかない』とも綴られていて、それ以降はアイゼリアの理解と現実が一致しないようで、混乱と失望の記述しかなかった。


これらの事から、アイゼイアは本人ではない誰かの魔法陣について考察しているようだ。

もしかすると魔法陣は宇宙人由来の技術なのか?




だが、『意味が分からない』と表現されていたものを解くヒントは、学生時代に勉強をしたメンデレーエフの元素周期律表にあった。


人は炭素を中心とする高分子有機化合物からできているのに対して、土の主成分はケイ素を中心とする高分子ケイ酸塩鉱物からできている。


そして原子番号6番の炭素の真下に14番のケイ素が位置しているのだ。縦の列は族と呼ばれ、どちらも4本の手(原子価)を持ち、それらの手をつなぎ合わせる(共有結合)ことで高分子化合物を作ることができる。


つまり、修復部の人体中の炭素をケイ素に入れ替えて作った合成樹脂(シリコーン樹脂)で、熱や薬品に強いシリコーン組織で修復ができるかもしれない。

元の世界で美容整形などにも利用されていた事を考えれば、可能性は大いにあると思う。


そうだとすれば、そこに置き換えるべき組織がなくては、この魔法陣は『うまくいかない』と判断されても不思議はない。




2軒分の娼館の跡地で考え事をしていたら、いつの間にか基礎工事のための警備隊を引き連れて、お爺さんが到着していた。


ライアン

「ここに屋敷でも建てるつもりか?」


「いえ、ここには人々を救済する施設を作るつもりです」


「どういう事だ?」


「この大陸には我がアドラン連邦国、リモージュ王国、ソフィア皇国、ガイアナ帝国の4つの国があります。また、我が国は4つの地域が1つになって出来た国。それらを象徴して大きな輪に4つの球がつながった印の『救済教会』という組織を作り、研究所のように修復の魔法を使って、民衆を救済するのです」


「なんの目的で?」


「一つはスキャン魔法の実践的訓練。そしてヒールポーションが買えない王都の住民の治療を行う事で、絶対的支持を得る事です。ただし、グラハム一族はこの『救済教会』の支援者という事にして、教会を裏から操作するんです。いずれ、何かの時に必ず役に立ちますから…」


「しかし修復の魔法が『救済教会』で行われるようになれば、奇跡の実現になるだろう。下手をすると、『救済教会』は国王よりも強い影響力を持つ事になるぞ…恐ろしい事だ」


「この教会にはライアン戦闘団の人員も一部駐留してもらい、教会の保護をします。その代償としてグラハム一族は優先的に治療を受ける、という筋書きです」



「なかなかに出来た筋書きだな」


「それで、教会の指導者としてクロエ上級研究員を派遣頂きたいのですが…」


「あぁ、もちろんクロエも行きたいと言うだろう。あいつも修復の魔法とやらに興味を示すだろうからな」


「どちらにしても、ここに教会が建ってからですね」




屋敷に戻り、教会の案を図面に落とし込んでいく作業。


尖塔には〇に4つの球の救済教会のシンボルを付ける。

真上が水属性の青、時計回りに風属性の緑、真下に土属性の黄、そして火属性の赤の球。


病院棟と言ったが、対外的には宿泊施設であって病院ではない。

教会側から中に入ると左が受付カウンター、右には警備室がある。

当然、1階に診察室が2つ、処置室が2つ、6ベッド室、4ベッド室、個室など多数。


診察室の床に、アイゼイアの書にあったCTスキャンの魔法陣を床に彫ってミスリル線を流し込む。


2階から3階に掛けては、寮と同じ宿泊施設になっていて、戦闘団員もここで寝泊まりする。

何度もシミュレーションして、理想的な建物に磨き上げていく作業を続けた。


あとは、ソフィア皇国へ行って、救済教会で治療を行える『シスター』を派遣してもらえるように交渉する必要があるだろう。



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