第109話 東運河の倉庫街
犯罪現場になった東運河の倉庫街は、人の往来がほぼなく静かではあるが、人身売買や違法な荷物の取り扱いがされていそうな場所でもある。
そこで、東部エリアまで追いかける事はできないが、倉庫街の犯罪組織の一掃を指示して、ギャニオンとライラと4つの班を動員して、総勢22名を率いて夜襲を掛ける事になった。
夜中、リリーが首まで袋に入れられて肉屋の荷車を使って倉庫まで運ばれた。
肉屋に組織と連絡を取らせたのだ。
もちろん、袋の中のリリーは裸ではない。
2番倉庫の中にまで運ばれたリリーは、中で袋を切り割き、真っ暗な倉庫内をライトの魔法で照らすと、手を縛られ檻に入れられた女たちと、檻の外で裸の女の上で驚く男がいた。
まずは荷車を引いて来た男を後ろからナイフで刺し、盾にしながら、こちらに向かって来る男の股間にファイアーアローを当て、仮眠中だった男達を震え上がらせるリリー。
「なんて威力だ!」
その頃、倉庫の外では見張りの連中を弓と魔法スクロールで仕留め、装備の良い指揮官と思しき男を捕らえたあと、ギャニオンとライラが倉庫内に突入した。
しかしその時には、倉庫内のほとんどの男は下半身が焼かれていた。
ホワイト侯爵の関係者は1番倉庫に7名。外にいたのは雇われ者であったが、『客人』と呼ばれる男2人が1番倉庫の小さな部屋で、連れ去られた女を抱いていた。
後に拷問で、王都の商館近くの飲み屋の男と、貴族街に近いレストランの店主だと判明した。
ホワイト侯爵の関係者だと名乗った7名には、2日間寝る事も許さず痛めつけることで、奴らの知っている情報は全て吐かせた。
約束通り、運河を進んで来た東部領からの船に、首を『本人の希望』だと伝えて、ライアン侯爵が手渡した。
ひとまず、第3倉庫の荷物は没収して、3棟の倉庫が閉鎖されていると看板で告示した。
あとは警備隊が監視し、告示を無視して倉庫に入った者は全員拘束し、身元と物品を精査している。
運河に係留されていた船の5艘は全てライアン侯爵が没収し、うち1艘には死体を乗せ、東部領と隣国に近い湿地帯に投げ入れる事になった。
あそこにはワニという生き物がいて、血の匂いで寄ってくるらしい。
次に着手したのは貴族街に面するレストランである。
街道を挟んで貴族街に面するレストランの店主は、東部領ジラール男爵家からの派遣で、一族は元盗賊団という噂に対して、大昔の事であり今は違うと話している。
派遣された理由は、国王が次代の東部に変わった時の事を考え、王都に東部の足掛かりを築いておきたいという事らしい。
もちろん、人身売買に係わり婦女子を強姦した罪により『死刑に処す』と侯爵から告げられると、涙と鼻を垂らして許しを乞うていたが、その芝居がかった仕草にギャニオンさんが切れて、股間を思い切り蹴り上げられていた。
静かになった主人から、なぜホワイト侯爵の1番倉庫で客人と呼ばれるようになったのか供述を得たが、単に同じ東部領の出身という理由であった。
家族と一緒に出身地に帰すと騙し、婦女子強姦の反省文とレストランの売買契約書にサインをさせた。
そして、主人がいなくなったレストランにどのような動きがあるか、監視する事になった。
最後が商館とその周辺の飲み屋だ。
商館近くの飲み屋の男は、なかなかにしぶとい男だったが、東部領グエン男爵家の現役弓兵戦闘団の一員だった。娼館の女たちは、東部から連れて来られた者たちで、今回の人身売買には関係がないと言っている。
娼館と飲み屋、そして近くの薬屋と食堂。これらの店は全て東部領グエン男爵の配下だと見られている。
そこで、冒険者を食堂へ行かせ、倉庫街が無人になる2日後の夜に、荷物を奪いにいく話を食堂で周囲に聞かせて、おびき出す事にした。
その日の夜、事務所と女が連れ込まれた部屋がある1番倉庫は、常に扉が開けられたままだ。
倉庫街は、夜には警備隊が引き上げ、誰もいなくなったように装い、2番倉庫に戦闘団が待ち構えていた。
飲み屋と食堂から出て来た集団が、グエン男爵の配下の弓兵戦闘団の者なのだろう。
彼らが倉庫街に向かったあと、娼館と飲み屋、薬屋と食堂の4軒に警備隊が入り、男達を捕縛していく。
娼館の女たちは、隣国人が2人、倒産した旧北部の商人の女性が6人であった。
相手は現役の弓兵。
今回は、戦闘服に半長靴、ドワーフ族に作らせた試作ヘルメット、両手剣というフル装備の戦闘団。
倉庫の鍵が壊され、中に人が入った事を合図に、少し離れた場所にいる弓兵に向かって、後方から放たれるウィンドカッター。
2番倉庫に入った者たちには、内部から魔法と両手剣が襲い掛かる。
3番倉庫に入った者達は、外からの音で再び2番倉庫に戻ってくるが、背後からの高威力の魔法の餌食になっていた。
こうして東部グエン男爵配下の弓兵戦闘団員は、その後、倉庫内で拷問を受け自白調書にサインをさせられたあと、ワニの住む湿地帯送りになった。
こうして市内中心部から少し南側に離れた娼館を中心とした地域は、救済教会に生まれ変わる事になった。
ライアン侯爵の話によると、このあと、娼館の女たちは肉屋の従業員やレストランの従業員となって、自立した生活を送る事になるそうだ。




