表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤独の人  作者: 神の恵み
異世界編
PR
113/113

第113話 ミラー家での話し合い


もうすぐ貴族街の端、彼らの家に到着する。

さすがに子爵家、玄関先に門番がいる。


ローリーと馭者ぎょしゃは馬車に乗ったまま駐車場で待機させている。


「アキュラ・グラハムだ。アーサー・ミラー殿のお呼びにより出向いた」


「は!」


敬礼をしたあと、小さい門扉を開けてくれた。

ドアノッカーを叩いて、しばらくすると、アーサーが出迎えてくれた。


「お越し頂き感謝する。護衛殿は控えの部屋で、アキュラ殿はリビングで良いだろうか…」


「いや、すまん。この者は俺の護衛なのだが、ハナといい会談の証人として同行させたんだ。侯爵の誤解を招かぬための処置だとご理解頂きたい」


「分かった。ではこちらへ」


俺は間取りを知っている。なにせこの家の設計者は俺なのだ。


ハナは護衛とは言え女性。

簡単な革防具と長剣。

そんな恰好だから、リビングに到着次第、ソファーの後ろに立っている。


侍女らしき者が無言で置いていった紅茶と菓子を頂いて、本題に入る。


「話したい事って、何かな?」


「ミラー子爵家はこれまで、ソフィア皇国との交易で得た品物を他領域へ売る事で稼いできた。そして父はグラハム子爵と砂漠のサンドワームの取引契約を交わして、取引金額の拡大を果たした」


「そうだね」


「だけどこれは商品の取り次ぎに過ぎないし、輸送費ももらえないと聞いている。実際にサンドワームを狩っているのは、スチュワート侯爵配下のギル男爵がやっている事だからね」


「そこは役割分担という事で良いんじゃないか?」


「だけど、ギル男爵に供給を握られているんだから、価格もギル男爵次第になっちまう」


「だから?」


「ミラー子爵家とグラハム子爵家の協力が必要だと思うんだ」


「それは少し違う。グラハム子爵家ではなくアキュラ男爵、つまり俺が需要を握っている」


「は? そうなのか?」


「問題はそこじゃないんだろう? おそらくはミラー子爵がギル男爵のご機嫌を損ねないように、ギル男爵の言いなりになって仕入れないか、心配なんだろう?」


「そ、そうだ…だが、どうしてそんな事まで知ってるんだ」


「知らないさ…西部領のもめ事に関心はない。だが、考えれば想像はつく。解決策としては、こちらが注文した数だけ仕入れてくれと文書で通知すればいいだろう。他には?」


「妹の事だ」


「なぜ、学園の2年に編入できたか、という事かな?」


「お前にはかなわないな…。で、どう理解したのか聞かせてくれるか?」


「アメリアに初めて会ったのは、彼女が8歳の時だろう? 当時から聡明だったから、学校ではなく家庭教師から教わっていたんだろうと想像がつく。その家庭教師が学習レベルの証明を書いて学園に派遣されていた講師の推薦状を得た。そんなところだろう?」


「あぁ~ダメだ。お前と話をしていると、自分が馬鹿に思えてくる」


『コンコン』

「アメリアです」


「入れ」


「お兄さん酷いじゃないですか!アキュラ様が来たら呼んでくれると言ってたでしょう?」


「まぁ、座れ!」


ここでお茶を入れ替えて、再び話に戻る。


「アキュラ、お前はアメリアをどうする気だ」


「どうもしない」


「そんな!」


「アメリア! アキュラの話を最後まで聞きなさい」


「…はい」


「君に話をした『夢』は、俺が10歳の子供の頭で考えていた事だ。しかもアメリアの言葉で思い出したくらいだ。そして俺は、屋敷で倒れてから4日間、生死の境をさまよって価値観が変わったんだ。」


アメリアだけでなく、アーサーまで緊張した表情になっている。

それは当然だろう。

俺が倒れた事は、公表されていない事だからな。


「どういう事だ? いずれ南部領と西部領を手に入れると言っていただろう? アメリアとの結婚は、その基盤になるんじゃないのか? これ以上にいい条件の相手なんていないだろう?」


「時期は分からないが、俺はライアン侯爵から侯爵位を継ぐ事になる。現に今年、ライアン研究所を譲り受けて、魔法スクロールの改良が進み威力は格段に上がった。そして、その侯爵の戦闘部隊は俺が学院を卒業した時点で譲り受ける事になっていて、他領攻略も届かない夢ではないだろうな…」


「西部領の倒すべき筆頭はギル男爵家だ…その魔法スクロールを譲ってもらえるなら、俺たちだって戦える!」


父上の調べによれば、ギル男爵家は砂漠のワームや大サソリと戦う戦闘団で、燃える水の火炎瓶、大サソリの毒矢など独自兵器の開発を得意としているし、ミラー子爵家を狙っているという噂もある。



「まず、君たちの優先すべき問題は、砂漠のワームなどの素材を自力で採集できるようになることだろうな。そのために侯爵の戦闘部隊を貸してもいい。ライアン侯爵の耳にも入れておくよ。ただ、アメリアにはそれ以外の覚悟も要る」


「なんですか、それは」


「俺は侯爵位は継ぐが、戦闘には向いてない。そこで考えられたのが後ろのハナだ。ライアン侯爵の従弟で戦闘狂といわれたウォーレン・グラハムの育てた侯爵部隊の部隊長候補者だ。彼女は侯爵の第一夫人として部隊を率いる構想がある」


「えっ? それは…」


「それはつまり、アメリアを妻に迎えたとしても『第二夫人として』と言う事になるし、俺は政略結婚をするつもりはない。その事は承知しておいてくれ」


「……」


「いずれにせよ、婚約が可能になるのは学園を卒業してからになるし、問題はそこじゃない」


「なんなんだ、その問題って…」


「先日の4公爵会議で北部領の領主がいなくなり、西部領に併合される事に決まったんだ」


「えっ、聞いてないぞ…」

「私も聞いたことないです」


「北部領の中南部を仕切るコート侯爵部隊は、治安部隊であるにも係わらず乱暴で有名な部隊だ。徴税をごまかしていたのも今回の原因のひとつだと言われている。一方、西部領のスチュワート侯爵の治安部隊は砂漠戦が専門のラクダ騎兵が主力。だからギル男爵の部隊や、元海賊のカーン男爵部隊を抱えているんだろう?」


「良く知っているな…その通りだ」


「この3つの戦闘団、ギル男爵部隊、カーン男爵部隊、そしてコート侯爵部隊が北部エリア中南部をめぐって戦う事になるだろうな。小さないざこざが本格的な戦闘に発展した時、勝敗を決めるのは魔法スクロールになる。つまり、経済力のある者が、この中南部の平原地帯を制するのさ」


「まさか、紛争になるのか?」


「国王と言っても実力部隊は持ってないんだ。どうする事もできまい?要は取った者勝ちになるという事さ」


「分かった!父上にも申し上げておこう」


「ところでアーサー。はっきり言わせてもらうが、君の父上ミラー子爵は交渉力が無さ過ぎだ」


「あぁ、みんなからそう言われているのは分かっている。でも、どうしたらいいか分からない」


「じゃあ、俺の考えを教えようか? 魔法スクロールはライアン研究所が握っている。そしてその研究所は俺の管轄下にあるんだ。つまり、アメリアと俺の繋がりでスクロールを優先的に入手する事はできる。これが君たちミラー子爵家の防御力になるし、資金源にもなるのさ」


「はは。つまり、アメリアと政略結婚はしないが、今までのつながりは重視するって事か…」


「そうだ、だけどこれからの時代、戦闘力を持たない貴族は生き残れないぞ。雑兵にスクロールなんて使えないからな」


「それはギル男爵から脅された時から、父上も承知している。俺もアメリアも真剣に訓練を受けるよ」


「そうか…その覚悟で学園に通うなら意味はある。口先だけの人脈なんて意味はない。君たち兄妹に協力するほどの実力や価値がないなら、協力はしない。そういう事だ。では、そろそろ失礼する。何か連絡があれば、今日のように食堂の貴族席で会おう」


「わかった」

「わかりました」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ