第106話 作戦室
お気付きだと思いますが、この小説は、章と蘭の話を合わせて再構成したものです。
なので、そろそろ二人の再会に向けて、話の同期を取らなくてはいけないのと、エンディング部分が書けていないので、週末あたりからしばらく投稿が止まると思いますが、よろしくお願いします。
夕食の時間になったのだが、帰還予定のお爺さんはまだダンジョンから戻っていない。
セバスと見習いローリーも、ライアン研究所からまだ戻っていない。
想像するに、研究所の収入や支出の記録が曖昧なのか、無いのだろう。
料理人には、夕食の時間を1時間遅らせる事を指示して、侍女組にもその事を伝えた。
そんな時、偵察隊が報告メモを手に、渡す相手を求めて、ウロウロしていた。
「どうしたんだい?」
「あっ、アキュラ様! これ…報告です」
「ご苦労様。いつもこの報告書をローリーに渡しているのかい?」
このメモを見た事がない俺は、何となくそう思ったのだ。
「そうです」
夕食までの時間に、今までの偵察隊の報告書を探すため、別館1階の会議室に入ると、そこには偵察隊が書いた地図の上から、該当する場所に住民情報のメモがピン止めされていた。
追加の情報なのだろう。
そして、今回俺が手にしたメモは、昨日までの住民の身元調査のメモとは異質のものだ。
ローリーはしっかりした受け答えをするが、偵察隊のメモのように『目的意識』が抜け落ちている。
自分が理解できるまで俺に報告できないのは分かるが、それでは執事は務まらない。
俺から聞かれる前に、自分が理解できなくても、『情報を共有する』ことができなければいけない。
この部屋の壁に貼られた数多くの地図たちが、みごとに王都の治安状況やどうすべきかを表現していた。
そんな詳細住宅地図を眺めていたら、エミリーが入ってきた。
「ライアン様とセバス様がローリーを連れて帰還されました」
「あぁ、戻ったか…」
1時間遅れの夕食になったため、大家族のようにみんなで食事を食べた。
「ローリー!」
「はい。アキュラ様」
「私達を部屋に案内して」
そう、ローリーが偵察隊のレオから受け取り、部屋の壁一面に貼り付けた王都の巨大地図を見に来た。
ライアン
「なんだこれは?」
「先日示した王都中心部の詳細地図をつながるように壁に貼り付けて巨大な地図になっています。そして更にその上から人名のメモが貼り付けられているんです。そして、この赤で書かれた人物は危険人物という意味のようです。ローリーが自分で理解するために壁に貼り付けて、このようになったのでしょう。そうだな?」
「は、はい! 報告が遅れすみません」
「今夜ノアが届けてくれた報告書では、この中央商店街の肉屋は元北部領主モーリン公爵に雇われた情報屋だったそうで、セイウチ肉が送られて来なくなり、今では夜は盗賊まがいの事をしているとの報告なのです」
----- 偵察隊の報告メモ(レオ) -----
第3区中央商店街の肉屋
肉屋の使用人が、近くの飲み屋で『店の主人はモーリン公爵に雇われた情報屋だった』と言った話は、あまり信用されなかったが、作業場を覗いた身軽なルカが目撃したのは、ゴム長、セイウチ皮のエプロン、解体刀という王都では見ない装備だった。
夜中、さらって来たと思われる若い男女を荷馬車から降ろしている所を、俺は目撃した。
男は既に絶命しているようで、背後から解体刀で一突きされたと思われたが、女は目隠し、猿ぐつわ、手足を縛られていたので、気絶しているだけに見えた。
ルカが作業場を監視していると、殺害された男は、使用人によってバラバラにされて、セイウチ肉や豚の解体くずと一緒に廃棄箱に入れられた。
女は奥に連れて行かれたあと、おそらく主人の部屋に連れ込まれ犯されたのだろう。
翌日の夜には、首まで袋に入れられた状態で、再び荷馬車に乗せられて、出て行った。
俺がつけて行った先は、第5区の倉庫街で、ここで袋入りの女性が降ろされた。
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「では、すぐに騎士団に通報しなくてはならん」
「待ってくださいおじい様。この地図に書かれた赤文字は、これだけの数があるのです。世の中には光が当たる所が有れば、必ず影になる所ができるもの。だから、影を無くすのではなく、影を制御する方法を考えたのです」
「その制御する方法とは?」
「我々が影の支配者になれば良いのです。今は西部出身の国王ですが、次代は東部の順番。いつ、何があっても王都は我々グラハム家の本拠地でなくてはいけないんです」
「具体的に、どうすると言うのだ」
「この店主をおびき出して捕らえ、店を乗っ取ってしまいたいのですが…おじい様、お願いできますか?」
「面白い! セバス! ギャニオンとライラを呼んで来てくれ。早速作戦を立てるぞ!」
偵察隊のつなぎ当番である無口なノアも加わり、店主の行動パターンの報告を受けて、襲撃計画は練られた。
この日からこの会議室は、『作戦室』と呼ばれた。
ライアン侯爵邸の戦闘団は、前衛3人+魔法職2人で1つの班を構成している。
作戦は1班のリーダー、ルークとリリーの2人がカップルに扮装して夜遅くに酔っ払い、肉屋の前を歩く事からはじまった。
連日、若い男女のカップルが酔って歩く姿を何度か見ていたが、今夜は後ろから、荷馬車が追い越しざまに切り付けようと接近してきたのが肉屋の主人だった。
その解体刀を躱して、肉屋の手のスジを切ったのがルークさんだ。
慌てて逃げる使用人だが、リリーさんのファイアーアローの餌食になり、背中はやけどの肌が見える悲惨な状態になっていた。
この後、肉屋の作業場でギャニオンさんの拷問を受け、東運河の倉庫街に売り飛ばした女の代金と、取引相手が東部領ホワイト侯爵の関係者だと白状した。
侯爵率いる戦闘部隊は鮮やかな活躍を見せたが、俺はローリーとハナの間に置かれ、守られながら馬車から状況を見ていただけだ。
「防衛手段を持たない者は、参加させる訳にはいかない」
ライアン爺さんの言う事は正しい。
だけど『そうですか』と納得できる事ではない。
そこで屋敷に戻ってから宝物庫で、防衛手段となるアイテムをハナとローリーも交えて探したのだ。
見つけたのは『インテリジェンスロッド:白竜の杖』である。
『持つ者に安寧をもたらす』と杖自身に書かれている30㎝に満たない杖。
杖と同梱されていた羊皮紙には3つの機能が説明されていた。
1つはパッシブソナー。
周囲最大距離30~50mの音を拾って、インテリジェンスロッドが判断、警告をする。
使用時間によって、使用者がこのスキルを習得する可能性がある。
1つはアクティブ魔力波レーダー。
波長5㎝のCバンドを使った無属性魔力波レーダー。観測半径は200m。
インテリジェンスロッドが追尾対象の移動速度、移動ベクトルを自動計算してくれる。
1つは照準サポート
使用者が魔法攻撃を行う際の照準を、魔力波レーダーと連動することで自動的にサポートする。
「おじい様、こんなすごい杖が宝物庫にありました!俺が使ってもいいですか?」
「ん~ どれどれ。あ~これか…だが、魔力を増幅する機能は一切ないが…それでもいいなら使いなさい」
「ありがとうございます」




