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魔王殺しの最強剣士、居酒屋の親父になる~引退した元SS級冒険者のおじさんは、王都の片隅で正体隠して無双する  作者: 流あきら
二章

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015 勝利の後に

「それで、グレートベアがどこにいるかわかってるんですか?」


 生徒たち三人はさておいて、ギルドからの調査員たちも遠慮があるのか、自然と俺が村長と話をすることになる。


「やつらの巣はわかってます。ですが私どもにはどうしようもなくて」


 この村には、地元の狩人(ハンター)の他にはE級の冒険者しかいないという。

 今までは農業や牧畜の他に、赤猪(レッドボア)の肉が名産品だった。

 グレートベアのようなC級モンスターの相手をするのは荷が重いだろう。


「やつらは何体いるんですか?」

「確認できたところでは二体です。今までこんなことはなかったのですが、どうしていいやら」


 村長は困惑した様子で言う。


「それはお困りでしょう。まずそのグレートベアは倒します。これは問題ありません。全てはそれからです」

「おお、さすがは魔王を倒したロイどの!事態は解決したも同然ですな」


 村長の顔がぱっと明るくなる。

 なぜ俺が魔王を倒した事をしっているんだと思ったが、考えてみれば当然かもしれない。

 大々的に発表されたし、ギルドから連絡もいっているだろう。

 顔はばれていないだろうし、ロイという名もありふれているから、ウミネコ亭に来る客でも知らない奴はいる。


 村長は地図と案内人を用意してくれるという。

 あとはこちらの連携だ。


「これを」


 ギルドの人間が腕輪を配る。

 連絡用の魔導具だ。

 振動によって、単純な事項を伝える事ができる。

 

 これさえあれば戦場でも万全……とはいかない。

 あまり距離が離れると信号が届かず、魔力密度の高い場所では使えない。

 今回これが役に立つかはわからないが、万全を期してという事だろう。 


「ところで、今までの被害状況は?」


 俺の言葉に、村長は眉を曇らせる。

 

「数人、グレートベアに襲われまして。命はとりとめたもののですが……このままでは」

「ふむ。やつらの巣は?」

「この場所です」


 村長が地図を指し示す。

 グレートベアの巣というのは、村の東の沢のほとりにあった。


「どうしますか?二手に分かれて攻撃しますか?」


 ギルドの調査員が俺に向かってたずねる。

 俺は少し考えて首を振った。


「いや。俺たちは地元の人間ほど地理に詳しくない。固まって行動した方がいいだろう」


 皆はうなずいた。

 

「では今回の指示役は、ロイどのにお願いします」


 ギルドのB級冒険者が言う。

 この中では俺が一番ランクが高いし、経験も豊富だから、それは自然な流れだった。

 グレートベアの討伐は、通常なら一体はマルコ達に任せ、もう一体は俺が倒すのがセオリーだろう。

 だがギルドでの模擬戦の様子を見ると、マルコ達の戦闘力は思ったより高い。


「今回は二体ともお前たちに任せる」


 三人は戸惑ったようにそれぞれ見つめ合う。


「その……僕たちで大丈夫でしょうか?」

「お前たちには十分な実力がある。あとは経験だ。同時に二体を相手取らなければ大丈夫だ。もちろん俺も補佐する」


 三人の顔が次第に決意に満ちてくる。


「はい!」

「頑張るっす」

「私、やります」


 俺は黙って頷いた。

 そしてギルドから派遣されたBランク冒険者達の方を向く。


「あなたたちは、今回は村に残って欲しい。万が一グレートベアが襲撃してきた時に備えて」

「わかりました」

 

 俺の言葉を、Bランク冒険者たちも了承した。


「しかし山の生態系が変わっているとしたら、グレートベアを倒しても、どうにもならないのではありませんか?」


 そこで村長が不安そうに言った。

 

「だとしても、放っておくわけにはいかないでしょう。それに関しては、そのためにこちらに調査員がおります」

「はぁ……いや。こちらとしては、お任せする他ありません。よろしくお願いします」


 村長としても初めてのことで、どうしていいかわからないのだろう。


「では、明朝出発いたします、村長」

「本日着いたばかりで?一日休憩をとって、明後日からとりかかってはいかがですか、ロイ様?」

「いや、一刻も早い方がいい。明朝からです。かまわないな?」


 俺は仲間の意志を確かめる。


「僕は大丈夫です!全然疲れてませんから」


 マルコは元気一杯に言い、その他のメンバーも賛同した。

 その日は夕食後、早めに就寝する。

 そして翌日。

 夜明け前に起き、準備の後、俺たちは出発する。


 事前の打ち合わせ通り、B級冒険者はと調査員二人は村に残る。

 調査員もD級冒険者相当の腕はあるという。

 仮にグレートベア二体だったとしても、協力すれば撃退できるだろう。


 マルコ、ジーナ、パメラ、それと村長のつけてくれた案内人二人の、俺を含めて計6人となる。

 村の案内人は索敵役だ。

 正直グレートベアなど何体出ても、俺の敵ではない。

 ただ今回は、マルコたちに経験を積ませる意味があるから、俺が全部倒しても仕方がない。


 冒険者というのは通常、4~5人でパーティーを組む。

 長年の試行錯誤の結果、この人数に落ち着いたらしい。

 攻撃、回復、補助、魔法、索敵といった役割分担のせいかもしれない。

 そういえば、軍における部隊の最小単位も五人が多い。

 

 二時間ほど歩くと、目的地に着く。


「あそこです」


 灌木の繁みの間に、洞窟が見える。

 あれが住家らしい。


「今は……いないようだな。いつ現れるんだ?」

「わかりません。ただ必ず夕暮れまでには、この巣に戻るのは間違いないかと」


 案内人が答える。

 俺たちは少し離れたところで、気配を消し、待つことにする。

 待つのも仕事だ。

 魔大戦でも、戦闘時間そのものよりも、実際は待機時間の方が長かった。


 幸運な事に、一時間ほど待つと、目的のグレートベアが現れる。


「来ました!」

 

 斥候役の案内人が告げる。

  

「いくぞ。俺は一人で右の一体の注意を引き付ける。その隙に森の中に引きずり込んで、もう一体を仕留めろ」

「わかりました!」


 マルコ達と案内人は頷くと動き出す。

 俺たちは気配を消しつつ、風下から近づいた。

 どのみち気づかれるだろうが、少しでも遅い方がいい。


 残り二十メートルの距離で、グレートベアはこちらを振り向く。

 両方とも、四メートルを超えるだろう。

 俺は右の相手に全速力で突進する。

 グレートベアは立ち上がり、咆哮をあげた。


 うまい具合に、右の一体は俺の動きにつられる。

 もう一体はマルコ達の方へと向かった。

 その巨大な爪が振り下ろされる前に、俺は飛び上がって避ける。

 そしてマルコ達のいる森へと駆け出した。


 マルコ達は危なげなく、グレートベアを制圧しつつあった。

 ジーナが動きをとめたところを、パメラの魔法とマルコの剣でとどめをさす。


「もう一体だ!」


 俺は横っ飛びに林道から森の中へと飛び込む。

 グレートベアは突進の勢いをとめられず、マルコ達へ向かった。

 もちろん危なそうなら、俺が一刀のもとに切り伏せるつもりだった。

 だがマルコ達は、そちらもあっという間に仕留めた。


「よし。よくやった」


「いやぁ、緊張しました」

「あたしも」

「わたしも」


 マルコ、パメラ、ジーナは、それぞれ笑顔を見せた。

 

 倒したグレートベアをそのまま村へ運ぶわけにもいかない。

 討伐の証拠となる左手だけ回収し、残りは放置する。

 肉はともかく皮や爪は素材となるので、後で取りにくればいい。


「ありがとうございました」


 案内人が頭を下げる。


「これで、終わりかな」


 あっけない決着に、俺はいささか不審なものを感じていた。


「これで終わりとなることを願ってます。とりあえず帰還しましょう」


 案内人の言葉に頷くと、俺たちは村への帰り道をたどる。

 

 だがしばらくして――


「どうも様子がおかしいです」


 ジーナと案内人が同時に言う。

 俺たちは慎重に様子をうかがいながら前進する。


「あれは!」


 誰の叫びだったかはわからない。

 だが俺の目の前に見えたのは、村の方へ向かって突進していく、三体のグレートベアだった。

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