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魔王殺しの最強剣士、居酒屋の親父になる~引退した元SS級冒険者のおじさんは、王都の片隅で正体隠して無双する  作者: 流あきら
二章

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013 新米冒険者

 俺はもう一度、Cランク冒険者だという、マルコ、パメラ、ジーナを見回す。


「まぁ……手合わせくらいなら」

「おぉ。じゃ早速場所を変えるか」


 三人は喜び勇んで、闘技場へと向かう。

 どうやら俺は、真剣な若者に弱いらしい。

 

 どのみち俺が同行しなくても、彼らが討伐に行く事は変わらない。

 それなら俺が行った方がいい。

 まぁ手あわせの結果によっては、きつく言ってやらねばならんが。


 闘技場は敷地の端にあり、訓練や腕試しで使われる。

 まずは俺とマルコからだ。

 木剣が渡され、マルコは鎧をつける。 


「おれはいい。このままで」


 SSランクとCランクでは、本来勝負にならない。

 俺が傷を負う可能性は、万に一つもない。

 これは勝敗を決めるものではなく、力試しだ。


「まともにやっちゃ勝負にならねぇ。ロイ、お前はわかってるだろうな。マルコ、お前の方は何でもありだ。」

「はい!」


 デニスの言葉にマルコは元気よく返事をし、俺は黙ってうなづく。

 闘技場の四隅に水晶球が置かれていた。

 即死につながる魔法をある程度防御できる。

 さらに回復術を使える魔術師が待機する。


「はじめ!」


 デニスが号令をかける。

 俺はマルコの様子を観察する。


 軽くステップを踏んでいるが、若干動きが硬い。

 しばらくのにらみ合いの後、いきなり突いてきた。

 

 俺としては当然読めているので、余裕をもってかわす。

 だが思ったより、鋭い剣筋だった。

 とはいえ、俺との技量には大差がある。

 その後も何回か打ち合ったが、半ば礼儀のようなものだ。

 

 マルコは堅実で基本に忠実な動きだ。

 だがどこか遠慮しているような雰囲気があった。

 俺は一歩飛び退って言った。


「どうした?おまえの得意な技で来いよ」


 マルコは軽く笑みを浮かべた。

 ふいに一歩下がる。

 そして木剣を構え、叫んだ。


「エレメンタルソード!」 


 マルコの周囲に魔力で作った、六色の剣があらわれる。

 赤、青、緑、茶、橙、黒の刃が俺に向かって襲い掛かる。


(これは……シェン)


 正確にはシェンのオリジナル技かどうかは知らない。

 だが、シェン以外にやっている奴を見たことがなかった。

 エレメンタルソードは、火・水・風・土・光・闇の六属性の魔力で作った剣を操る。


 当然ながらマルコのものは、魔力の強さ、スピード、コントロールや安定度はシェンに及ぶべくもない。

 だがいくら未熟とはいえ、六属性の魔法を同時に発動するのは、並みの人間に出来ることではなかった。


 思わず剣に【気】をこめると、飛んできた魔力の剣を回転させつつ弾く。

 そして一気にマルコに近づくと、喉元に木剣を突き付けた。

 

「参りました」


 マルコは両手をあげた。

 俺はちらりとデニスを見た。


「パメラとジーナだが、ジーナは回復・補助術師なんで、二人同時でもいいかい?」


 デニスは素知らぬ顔で言った。


「俺はいいぜ、デニス」


 二人は元気よく挨拶する。


「よろしくお願いしまっす!」

「お願いします」


 パメラは木剣、ジーナは木の杖を手にしている。


「あぁ。じゃあいくか」


 俺は少し気を引き締める。

 あの食えないギルドマスターのデニスが、ただのC級の付き添いに俺を指名するわけはなかった。


(とすると……)


 パメラの剣先から炎が発射される。

 もう【気】は使わないなどと言ってはいられない。

 俺は炎を弾く。

 だが弾かれた炎は細長い蛇のようにうねり、再び俺に向かってくる。


炎蛇(ファイアスネーク)


 イザベルが得意としていた追尾術式である。

 あらかじめ予測していた俺は、ぎりぎりでかわす。

 すぐさま反撃に移る。


(次は……おそらく)


「焔獄壁(クリムゾンウォール)!」


 パメラとジーナが同時に叫ぶ。

 目の前に炎と光の壁が立ちはだかる。

 

 火魔術と光魔術の合成術。

 レオンとイザベルの連携技だった。


 それは俺の予想を超えるものではなかった。

 防御力も大きさも、当然レオンとイザベルのものよりは劣る。

 俺は飛び上がって、魔法の壁を超える。

 そして、パメラとジーナの武器を、木剣で弾き飛ばした。


「まいりましたっ!」

「参りました」

「うん。まぁこんなもんだろ。よくやった方じゃねぇか」


 二人の声と同時にデニスが満足そうに言う。


「おい、デニス。説明してもらおうか」


 俺は思わず叫ぶ。


「ん?言わなかったか?見ての通り、この子らは、レオン・イザベル・シェンの弟子だ」


 デニスは、にやにや笑っている。


「僕たちは、王立魔術学校で、お三方に教えてもらっていたんです。黙っていてすいません」


 マルコが頭を下げ、パメラとジーナもそれに続く。


「いや、いい。どうせこのじじいに黙ってろって言われたんだろ?まったく」

「学校の件は、お前にも声をかけたろ、ロイ。断ってたけどな」


 そういえばそうだった。

 魔術学校に教えにいかないかと言われた記憶はある。

 俺以外の幸運団(フォルトゥナ)のメンバーは、特別講師をしていたというわけだ。


「しかし冒険者ギルドが、王立学校とかかわることになるとはな」

「今更何言ってんだ、ロイ。もういがみ合っている場合じゃねえ、ってことになったじゃねぇか」


 れっきとした王立の由緒ある学校と、ならずもの集団に近い扱いだった冒険者ギルド。

 本来相容れるはずもない両者の交流が正式に始まったのは、おそらくギルベルト三世が即位してからだと思われる。

 

 元から剣士や魔術師というのは、秘密主義の所があった。

 それが王立機関や冒険者ギルドはじめ民間との交流を経て、様々な点で急激に進歩したと言われる。

 そして、冒険者たちが正規軍と連携し、魔国連邦との戦いへの参加、ということになっていったのだろう。


「あいつら、それなりに良い先生だったんだな」

「そうそう。時代は変わってるんだぜ」


 そこで、俺とデニスを交互に見ていた三人が、全員一歩前に進み出る。


「あの……それで……どうでしょうか……結果は」


 マルコがおそるおそる、俺とデニスに向かってきく。


「合格だ。俺も行くよ」


「やったぁ!」


 三人はそれぞれ喜びの声を上げる。


 デニスの思惑に乗せられたのは、若干不本意ではあった。

 とはいえ約束は約束だ。

 彼らには実力がある。


 俺は先生なんて柄ではない。

 だが、マルコ、パメラ、ジーナの戦いを見届ける義務があるような気がした。

 レオン、イザベル、シェンのかわりに。

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