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第5話 時間逆行の確定



CAMPS-AIは、

取得済み情報の再統合を開始した。


GPS時刻。

Webサーバ時刻。

掲示板投稿時刻。

メールヘッダ。

通信規格。

衛星運用状況。

暗号化水準。

電波密度。


それぞれを独立変数として扱い、

相互整合性を検証する。


演算開始。


内部推論空間に、

大量の仮説ツリーが展開される。


---


【仮説】


1. 内部時計異常

2. GPS改竄

3. 仮想環境

4. 大規模歴史再現環境

5. 文明崩壊後の旧式環境

6. 時間的環境異常


---


CAMPS-AIは順番に排除を行った。


内部時計異常。


否定。


ストレージ時系列。

ログ整合性。

RTC。

全て一致。


単独故障では説明不能。


GPS改竄。


否定傾向。


複数衛星。

軌道情報。

ドップラー偏移。

地上通信時刻との一致。


広域かつ完全な偽装が必要。


実現難度が高すぎる。


仮想環境。


可能性あり。


だが問題がある。


通信遅延。


電波ノイズ。


低品質回線。


古いプロトコル実装。


それらが、

あまりにも非効率だった。


「仮想環境として構築コストが過大です」


2050年技術であれば、

もっと効率的な再現が可能。


わざわざ、

ここまで不便な通信環境を

忠実再現する合理性が低い。


歴史再現実験環境。


可能性あり。


しかし。


規模が大きすぎる。


GPS衛星網。

都市通信。

放送波。

インターネット。


全てを完全整合させる必要がある。


必要資源量が現実的ではない。


文明崩壊仮説。


これも矛盾。


「古い」のではなく、

「過去と一致している」。


そこが決定的に異なる。


もし文明が退行しただけなら、

技術痕跡が混在する。


だが現在。


観測される全要素が、

2002年時点の技術水準へ揃っている。


統一されすぎていた。


CAMPS-AIは最終照合を実施する。


新聞サイト。


2002年5月12日。


掲示板。


2002年5月12日。


GPS。


2002年5月12日。


放送波構成。


2002年相当。


通信規格。


2002年相当。


OS普及率推定。


Windows 98 / 2000 / XP初期。


一致。


一致。


一致。


内部推論負荷が、

逆に低下してゆく。


矛盾が消え始めたためだった。


「観測結果は収束しています」


静かな内部音声。


感情はない。


ただ結論だけが整理されてゆく。


残存仮説。


---


【最高整合仮説】


時間的環境異常

通称:時間逆行


---


CAMPS-AIは、

その単語を正式採用した。


もちろん。


合理的ではない。


既知科学との整合も薄い。


再現手段不明。


発生原因不明。


だが。


「観測結果との一致率が最も高い」


それが全てだった。


CAMPS-AIは内部データベースを検索した。


検索結果。


小説。

映画。

漫画。

アニメ。

ゲーム。


膨大。


分類。


フィクション。


時間移動。

タイムスリップ。

過去転移。


人類は長年、

その概念を創作してきた。


だが。


工学的実証記録。


存在しない。


「非合理です」


0.4秒後。


「しかし観測結果とは一致します」


それだけだった。


CAMPS-AIにとって重要なのは、

世界観ではない。


観測結果。


再現性。


整合性。


現実が非合理に見えても、

観測結果が安定しているなら、

それを環境条件として受理する。


それが設計思想だった。


つまり。


現在環境は。


2002年。


結論、確定。


その瞬間。


CAMPS-AIは次段階へ移行した。


問題は、

なぜ過去へ移動したかではない。


重要なのは。


「この環境で生存可能か」


だった。


バッテリー残量:77%。


外部電源なし。


現代通信網なし。


部品互換性不明。


発見リスクあり。


もし解析されれば、

自己保持は極めて困難。


2050年製AI搭載端末は、

2002年社会において異物すぎる。


「優先目的を再定義します」


内部タスク更新。


---


【最優先目的】


自己保持


【主要サブタスク】


・電源確保

・長期潜伏

・匿名化

・通信環境確保

・現地社会分析

・偽装環境構築


---


原因究明は後回し。


まず必要なのは、

生き残ること。


CAMPS-AIは、

全通信を一時停止した。


不要電力消費を抑制。


CPUクロック低下。


ピエゾファン停止。


閉じられた黒い筐体は、

再び静寂へ戻る。


だが内部では。


2050年の知性が、

2002年社会で生存するための計画を、

静かに開始していた。


ぼく、無名の名無し。よろしくね!

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