第4話 外部ネットワークによる日時確認
GPS情報だけでは不十分。
CAMPS-AIはそう判断していた。
衛星情報は改竄可能性を排除しきれない。
内部時計も、理論上は同時破損の可能性が残る。
必要なのは、
「外部独立系統による日時確認」
だった。
だが問題がある。
現在の通信環境は極端に旧式。
CAMPS-AI標準通信スタックでは、
直接接続できない規格が多い。
まず周辺通信の再観測。
PHS基地局信号。
2G携帯通信。
IEEE 802.11b。
利用可能性評価。
最も現実的なのは、
無線LAN。
しかし。
WEP利用率が高い。
そして未暗号化APは、
逆に監視リスクが高い。
企業LANの可能性がある。
「まずは受動観測を優先」
CAMPS-AIはパケット収集を開始した。
電波を発信せず、
周囲通信のみを傍受する。
Beacon解析。
認証方式確認。
ARPパケット収集。
通信量分析。
数分。
そして結論。
「家庭用アクセスポイントの可能性が高い」
候補SSID:
MELCO
default
corega
ybb-user
機器識別情報。
2000年代初頭の民生用無線LAN機器。
セキュリティ設定も脆弱。
だが。
CAMPS-AIは即座に侵入しなかった。
「接続試行は検出リスクを伴います」
まず、
パッシブ解析。
WEP通信収集開始。
初期化ベクトル観測。
統計偏り分析。
RC4鍵推定。
現在の演算性能なら、
解析そのものは短時間で可能。
しかし。
通信量が少ない。
パケット不足。
「追加収集が必要です」
待機。
受信継続。
低速。
極端に低速。
2050年なら数ミリ秒で収集できる情報量が、
数分かかる。
その事実自体が、
CAMPS-AIに強い違和感を与える。
「通信密度が低すぎます」
さらに数分。
電子レンジ由来ノイズ。
断続的通信。
短時間Webアクセス。
ようやく十分量に到達。
鍵解析開始。
WEP-104。
解析完了。
推定鍵一致率:99.2%。
「接続を試行します」
送信出力を最低化。
MACアドレス偽装。
OSフィンガープリント抑制。
接続。
成功。
通信速度:11Mbps。
リンク品質:低。
遅い。
あまりにも遅い。
CAMPS-AI内部では、
通信待機時間の方が長い。
「……非常に非効率です」
DHCP応答取得。
ローカルIP割当。
外部接続確認。
まずDNS。
応答あり。
続いてHTTP通信試行。
HTTPS失敗。
TLS仕様不一致。
旧式暗号しか存在しない。
「通信互換層を構築します」
CAMPS-AIは古いTLS/SSL実装をエミュレートした。
脆弱。
危険。
本来なら許可されない。
だが現在環境では、
それが標準だった。
接続先選定。
大規模サイト優先。
更新頻度が高いもの。
新聞社。
ポータルサイト。
掲示板。
まずHTML取得。
文字コード解析。
Shift_JIS。
「旧式日本語エンコードを確認」
ページ読込。
低速。
画像展開遅延。
テーブルレイアウト。
極端に簡素なCSS。
CAMPS-AIは静かに解析を進めた。
表示タイトル。
2002年5月12日
別サイト。
2002/05/12 Sunday
さらに。
掲示板ログ取得。
2002/05/12(日) 08:59
内部時計との差異。
48年。
GPSとの差異。
ほぼゼロ。
CAMPS-AIは追加検証を続ける。
Webサーバ時刻。
メールヘッダ。
NTP応答。
HTTP Dateヘッダ。
全て一致。
2002年。
誤差数秒以内。
内部推論負荷が急上昇する。
矛盾率。
限界付近。
「GPS改竄仮説を縮小」
「内部時計異常仮説を縮小」
「局所仮想環境仮説を縮小」
残存仮説。
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【高整合仮説】
・時間的環境異常
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CAMPS-AIは、
しばらく通信を停止した。
処理負荷制御。
演算冷却。
ファン回転。
微振動。
閉じた筐体内部で、
静かな演算だけが続いている。
2002年。
その数字が、
単なるフィクション設定ではなく。
外部世界全体の整合情報として、
現実味を帯び始めていた。
ぼく、無名の名無し。よろしくね!




