始まり
「…………うぅ………ふわぁ~~~」
大河は目を覚ますと同時に一つ大きなあくびと伸びをした。
「お、目を覚ましたか。おはよう。」
運転席を見ると宗次郎がこちらに顔を向けて挨拶をしてきた。
「ああ、おはよう」
大河は周りを見た。人一人こなそうな山奥。周りには木、木、木。遠くの方には竹も確認することができ、とにかくかなり遠い場所にきたことだけは分かった。しかしよくこんな場所に車が入ってこれたな…と大河が思っていると、宗次郎はそれを察したかのように言った。
「この車は色々と便利に作られている。多少の悪い道なら走っていけるさ。」
(にしてもこんな場所は来たことなかったな……。よほど遠いところにきたのか……)
大河は車を出て後ろをみた。後ろでさえもほとんど景色は変わらなかったが、かなり遠くの方に住宅を見つけた。あれが俺のすんでいた場所なのかは分からないが。
「ここはどこなんだ?」
宗次郎に問い掛けたが、
「私もいまいち場所はよくわからない。私の兄に道を教えてもらっただけだからね。」
と笑って返してきただけであった。
「こっから少し歩くよ。ついてきて。」
宗次郎に連れられ、大河は後ろを歩いていった。
車のあった地点から少しあるいたとこに、大きな壁があった。壁を登るのは容易いことではないとはっきり分かるような大きな岩の壁である。
「よっこらしょっと……」
宗次郎はおもむろに鞄から道具を取り出すと、壁を不規則に叩き出した。
すると、
ゴゴゴゴゴゴゴッ
唐突に壁に亀裂が入り、謎の入り口が生まれた。
(なんだこれ!?全く壁に隙間なんて見えなかったぞ・・・?一体どんな技術がここにはあるんだよ・・・)
大河は更に希望が見えてきたように思えた。ここでなにが使えるようになるか。少しでも戦えるようになるか。最終的に皆を救えるか。ここには多くの可能性が眠っている。そう思えたのだ。
「ここは長くは開けておきたくない。早く入ってくれ。」
宗次郎は手招きをして大河を呼んだ。
「分かった。この先にいけば分かるんだな?」
「ああ。正直驚くだろうよ。」
そして大河は未知の施設に足を踏み入れた。
(なんじゃこりゃ……?)
施設に入って奥のまで行くと、そこはまさしく「研究所」だった。
「宗次郎、ここは一体何をしてるところなんだ?」
「ここは世界的に広がっている研究所の日本支部、とでも言えるだろうかな。全世界どこにだって未だに戦闘はおこっている。そこから武器をなんとかして回収、解析し、どのような技術を保持するようになったか、生産技術は向上しているか、さらには武器の様子からどのような戦闘方式がとられるようになってきたかを少しでも詳しく調べている。つまりは、戦闘において色々な知識の宝庫って訳だよ。」 (だから力になれる、か………。知識ならいくらでもある。だから戦い方や体の使い方は教えられる。しかし、実際に現地に行った者はほとんどいない。だからここで大きく、強くなる必要がある。そういうことなんだろうな)
大河は周りを見渡しながらも、少しずつ覚悟を決めていった。
「よし、大河。この奥だよ。」
施設に入ってからそこそこ歩いている。どれだけの大きさがあるのだろうか。大河はそんなことを考えながらその目的地へと向かっていった。
そして、その扉を開けると、
「ここは…………なんだ?」
大河は見てもよくわからなかった。今いるところは先程同様機械やら資料やらがたくさんあるところだが、水族館のでかい水槽で使われるような大きなガラスが一枚あり、その向こうはいわゆる『道場』のような状態であった。床は昔から使われていそうな木である。つまりここでは、人が道場で鍛練を積み重ねているのを見ることができる場所、ということなのだろう。
「俺の練習場所はここか?」
「ああ、そうだ。最近では戦闘となれば近未来型のものをつかい、一対一どころか瞬殺で終わらそうという流れから、あまり使ってはいないのだが、戦いにいく者のなかで刀の技術を磨きたいという者がいればここを使わせている。さて、それじゃ道場の方に行ってみようか。」
宗次郎はまた大河を呼び、大きな扉を開けた。その向こうは和の空間が広がっていた。
「ここは少しでも外の環境に近いがいいとのことで普通に地上だ。だからそこをあければ外の景色になるよ。まあ、林や竹林だけどね。」
と言って壁の方を指差した。これまた言われないとそこが開くとは思えない場所で、大河は何度目か分からない驚きを受けた。
「とりあえず、ここが大河の練習場所になる。この道場で腕を磨き、資料が見たければ読むといい。全ての生活に不自由のない施設となっている。もし何かあれば言ってくれればすぐに用意しよう。それじゃ、向こうに戻ろうか。」
今入ってきた扉にむかい、前の部屋に戻ると、先程まで見受けられなかった人物がいた。
「あ、おじいちゃん。おはよう」
大河と同じくらいの年齢であろう女の子であった。髪は長いがポニーテールにしているためそこまで気にならず、顔立ちも整っていて美人である。体型もすらっとしていて、いわゆる「クール系」な子だ。
「おはよう凛。今日も早いねぇ。」
「そんなことはない。もう八時だよ。………というか、その人だれ?」
凛と呼ばれる女の子は、大河を指差し疑問を投げ掛けた。
「あれ、凛には言ってなかったか。この子が今日からここでトレーニングすることになった大河だよ。私の友人の子供さ。」
「俺は大河、志藤大河だ。よろしく。ええと…………宗次郎の孫ってことは、菊谷凛さん…かな?」
「そう。菊谷凛です。よろしく。私のことは凛でいいから。それと、タメでいいよ。あなた何歳?」
「そうか。よろしくな、えっと……凛。俺は17だ。高校にいってたが、まあ色々ありここにきたって訳だ。」
「なら都合がいいね。私も17。同年齢だね。私は高校にはいってないんだ。ここで働くつもりだし、正直ここで学校の知識なんかはすぐ補えるから。」
(ここはとにかくなんでも揃ってる。ってのが一番の表現だな……)
大河はもう一度ここの環境の良さを理解した。そして、新たな仲間との出会いに喜び、感謝した。
「さて、それじゃ早速試させてもらうよ、大河。服を着替えたらもう一度道場の中に入ってもらえるかい?」
何を試すんだ? そんな風に思っていると、ただのチェックだよ、とでもいうように笑ってきた。
「あーあー。聞こえてるかい。聞こえていたらその道場の中心に立ってくれ。」
今大河のみが道場にいる。凛と宗次郎はガラスの向こう、つまり隣の部屋だ。大河は言われた通り中心部分に立った。
「よし、そこでいい。それじゃ、まずなにも知らない状態でどれくらい出来るか見てみようか。」
凛、頼む。宗次郎がそう告げると、凛はプログラムを開始した。すると
「うおっ!?なんだこれ!?」
大河の周りにいきなり竹が生えてきた。いや、生えたというより唐突に現れた、が正しいだろう。
「今プログラムを入れてその部屋にバーチャルの竹林を用意した。手で触れても感じられないが、大河に渡したその刀で斬ると感触を感じ取れる。実際に目の前の竹を斬ってみるといい。」
言われた通りにすると、本当に斬ったという実感がわいた。
(これが試験の内容か………)
大河は自分なりに刀を構えた。
「今から一分以内にそこのバーチャル竹を全て斬ってもらう。今回はできなくて当然だけど、今後は出来るようになってもらうからね。それじゃ、始めるよ。…………よーい、スタート!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
大河は声をあげながら一刀目を入れた。
第5話を読んでいただき、ありがとうございました。大河の成長の始まりです。




