四人の関係
「………というわけなんだけど。」
大河に自身の不安な気持ちを明けられた次の日、大河がいない時を狙って大地は桜と裕希の二人と話していた。
「全く、大河もなんでまたあんなに優しさが出てくるようになったんだか……」
椅子に座っている裕希は呆れてるような、それでいてちゃんと大河のことを考えてあげてるような、そんな曖昧な口調で言った。
「裕希、それは前、凛から聞いてるでしょ?」
その横で同じように座っている桜が裕希に一言告げる。
「そんなの分かりきってるけどさぁ。 私たちだって大河に借りとか、感謝とか、そこら辺があって大河を助けたいと思ってるわけだし。 大地ももっとこうなんというか……ズバッとさ。 中学で大河にいちいちツッコミ入れてた時のような勢いで。」
裕希が中学時代の二人を思い出しているのか、自然と視線が斜め上に向いている。
「確かに。 あの時の二人はまさに名コンビっていうか、ただのうるさい二人というか……」
桜も懐かしそうに微笑みながら同意する。
「あれは大河が勝手に騒いでて、俺が止めに入ってただけだろ…。 ま、あの時の大河が今はいないのはその通りかもな。 んで、思い出に耽るだけじゃなくて、多少は頭を使ってくれてるのか?」
大地もその時を思い出しながら、中学時代の大河の行動にはやはり呆れながらも、その一方、多少の心配も浮かんできた。
「だから、次またぐちぐちいってきたら、びしっと言ってやりな。 それが大河の心を吹っ切らせる一番いい方法だよ。」
裕希が話は終わり。 と言うように、椅子から勢いよく立ち上がった。
「そんなこと言われてもなぁ。 どうせ俺にしか大河もこんなこと言わないだろうし。 まあ、俺だけじゃ対処に悩んでたし、次こんなことがあったらびしっと言ってみるよ。 わざわざありがとう。」
大地もテーブルにおいてあった飲み物を手に取り、そのまま軽く手をあげて部屋から出ていった。裕希もその後を追うかのように部屋から出る……前に、振り返って、これまた部屋からでようと裕希の後ろにいた桜に声をかけた。
「……中学の時、私たち三人が馬鹿やってる横で、地味にフォローいれて大河を助けてたのは一体誰だったっけ?」
「……ふふっ。 裕希もちゃっかりだね。」
桜はしてやられた、という表情を見せて、微笑みながら裕希の後を追った。
◆◇◆◇◆◇◆
「よーし、皆。 この後、ここを出るぞ。 明日の朝に向こうにつく予定とした。」
一日が終わり、皆がロビーでくつろいでいると、宗次郎と凛が部屋から出てきて言った。
「宗次郎さん、だいぶ急だね。今決まったの?」
ソファーを独占し、ごろごろとしていた裕希は顔をあげ、宗次郎の方を見る。
「確かに急ですね。 このあと今日使った銃の整備をしようかと思ってましたが。」
椅子に座ってた大地も身体を宗次郎の方に向ける。 宗次郎に対してはしっかりと礼儀正しく接している辺り、大地はそういうとこはなにかとちゃっかりしていた。
「そうだな。 昼間くらいにはここを出ることは考えていたんだが、どうにも一つだけ分からないことがあってね。」
「分からないこと?」
宗次郎が分からないことがあると告げる。 それに反応したのは桜だった。
「ああ。 関東にいくのはいいんだが、それだったら敵は自分達の本拠地である東京で待ち構えればいいわけだ。 だが、向こうはわざわざ東京から行きにくい場所を選んでいる。」
「んなの単純だろ。」
飲み物を片手に、お風呂から上がってきた大河がタオルを首の後ろから前に垂れるようにかけながら入ってきた。
「次の場所で俺らを確実に仕留めるため。 つまり、被害が甚大にならないようにするってことだ。」
「なるほどな。 しかしそれは、やつらほどだったら地下を使うとか出来ると思うんだが。」
大河の意見ももっともだ、と思う反面、宗次郎はやはり敵が何故あそこにしたのか、どうも被害だなんだというだけではないように思えていた。
「さあな。 どうせ、山んなかの方が使いやすい能力でも持ってんじゃねえの? 今回の一件で俺にも能力が使えることが敵にはバレたわけだし。 次こそより強力な奴を送り込んできたとしても不思議ではないしな。」
その言葉を聞き、宗次郎は自分の中に『能力』の存在が完全になかったことを知った。
(そうだ。 これからはただ単に武器だとか、防具だとか、そこを見てればすむわけではない。 確かに大河の武器に力を付けたのは私だが、あれはあくまで私の空想がほとんどの産物。 伸びたり、加速できたりするのは武器が持っているものだと考えてたが、実際には操る人の方に原因はあった。 相手の武器だけでなく、対峙する敵一人一人の力を早急に見極める必要が出てきた訳だ。)
「まあ、どっちにしろ移動するんだろ? 俺も荷物を纏めてくる。 なんかあったら呼んでくれよ。」
それだけ言うと、大河は自分と大地で寝ている部屋に戻ってしまった。
「なーんか変だね。 ご飯中もその後もさー。 もしかして多感な時期に入っちゃってたりする?」
その背中が完全に見えなくなった後、裕希が身体を起こし、冗談混じりに声を出す。
「年齢的な問題でいくなら俺らもそうだろ、まったく。 あいつもあいつなりに考えてるんだ。 自分としては迷惑をかけたくない。 でも皆は感謝だっていってついてきてくれる。 その二つに挟まれてるんだ。 ……俺はあえてなにも言わないけど。」
大地が突っ込みつつ、大河の心情を考える。 これまでいつでも一緒にいた二人だ。 考えてることはそれとなく読めることが多かった。
「あ、そうだ。 私もちょっと武器みたかったし部屋戻るね。 また後で。」
桜も椅子から立ち、自分の部屋……とは違う、大河のいる部屋の方向に進んでいった。
「…………馬鹿なのか優しさに正直なのか。 桜もへったくそだね。」
皆が部屋はそっちじゃないだろ、という風に呆然としている中、柔らかい笑みを浮かべながら、裕希はその背中を見ていた。
「裕希、なんか親の目になってるぞ。」
「うるさいっ! 友達の良い行いくらいこういう目で見守るの!」
大地に指摘され、素直じゃない裕希は照れ隠しに普段よりも大きな声で反論していた。
「おじいちゃん。なんだか、私たちがいなくてもなんとかしそうだよね、この四人。」
「ああ、そうだな。 でも、この雰囲気を保っていく為にも、私たちが支えてあげなくちゃ。」
裕希と大地の裏から見つめる二人の視線は、恐らくその場の誰よりも大人のようだった。
皆様、恐らくすっかり忘れ去られたこの作品ですが、地味に書き続けております。 大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。 今後は一週間ペースに戻せるように頑張ります。 次回、関東に戻ります。




