表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイバー  作者: 佐竹歩
PR
45/50

払えぬ不安

「それで、結局あいつらがどこいったかはわかったのか?」

特訓から戻ってきた大河がタオルで汗を拭きながら聞く。 初の研究所外での戦闘からなんとか帰ってきたあの日から一週間後、大河はなんとか斬空刃の衝撃にも耐えられる、というよりかは慣れ、また一つ成長していた。

「一応わかったぞ。 次は埼玉だな。 あいつら、結局もとの場所の近くに戻っただけだった。」

パソコンとずっとにらめっこしながら、宗次郎は答えた。 この一週間、当然敵の居場所を探るのもあったから、その他もろもろの調整を凛と二人がかりですべて終わらしていたので、大抵の時間はずっと座りっぱなしだった。

「ん? なんだよ。 こっちまで来たと思ったら逆戻りしたのか…。 しかし埼玉か。 あそこはここの火山みたいに、なにか特徴的な地形がある訳じゃなかった気がするが。」

大河は頭の中で埼玉の地形を思い出す。 東京の隣なので、当然何回も出掛けたことはあったが、これといって何かが頭に浮かんでくるわけではなかった。

「埼玉といっても場所は西部。 ほとんど山梨との県境だな。 次は山に当たる感じか。」

より細かな敵の位置情報を画面にだし、宗次郎は敵の居場所とそこの地形を把握する。

「また山かよ。 今回だって山っちゃ山だったし。 なんなら溶岩流れ出てたしよ。 次は流石に火山じゃないだろ?」

「まあそうだな。山が一つだけポツンとあるんじゃなくて、全体的に連なってる感じだな。いわゆる山岳ってやつだ。 私も何回かいったことはあるが、そこそこ険しかった記憶があるな。 標高はさほど高くないので、空気の心配はいらないだろう。」

宗次郎も近隣の県ということで、なんとなくそこの様子はつかめているようだった。 実際に行ったことがあるのであれば、更に考えをまとめるのが楽だろう。

「なるほどな。 恐らく、山があるところの方が隠れやすいんだろ。 なかなか人も入ってこないし。」

大河は水分を補給しながら椅子に座り、休憩にはいる。 その時、裏から大地も休みに戻ってきた。

「あ、宗次郎さん。 お疲れ様です。」

「おう大地、今大河とも話していたんだが、次の移動場所が決まったぞ。 次はな……」

宗次郎は大地にも同じことを話した。

「へえ。 埼玉ですか。 私の祖父母が埼玉の東のほうにいるので、何回も行ったことがありますね。 次いつ行けるかと思っていましたが、まさかこんな形で埼玉に行くことになるとは。」

「ほう、大地のお父さんの実家は埼玉なのか。 ただ今回は流石にそっちに帰るということは出来そうにない。 悪いな。」 

宗次郎がその事実をきき、年のために大地に断りをいれる。 大地もそれは承知だということで、首を縦に振った。

「分かってますよ。 まずは自分達のことをやらなくては。 な、大河。」

「ん? あ、ああ。 そうだな……。 よし、俺はまた練習に戻るわ。 大地、後で話したいことがあるから、夜にでも部屋で話そうぜ。」

大河は話を振られて多少変な感じで返してしまったが、それを誤魔化すようにまた練習へと向かう。

「ああ。 ってか、俺と大河部屋一緒だろ。 じゃあ、夜な。」

返事を聞くと、大河は軽く手を振ってまた出ていってしまった。

「大河、なんか変だったな。」

「………」

宗次郎が誰にいったでもなくぽつりと呟いた。 大地もそれを受け取ったが、特に何を返すこともしなかった。

        ◆◇◆◇◆◇◆

その日の夜、風呂から部屋に戻った大地は部屋の中で布団に寝転がっている大河を見つけた。 何故わざわざ部屋の外にいって風呂に入ったかというと、ここも本来は宿泊施設なので、当然温泉がついていたからだった。

「……んで、話ってなんだよ、大河。」

大河の様子を窺いながらも、大地は思っている事を素直に言った。 当然、晩御飯を皆で食べてる時も、その後で皆と仲良く雑談している時も、大地は大河の顔色を窺っていたし、何か変な挙動を見せたらそれを頭に入れておこうとした。 流石に他の皆の前では平静を装っていたが。

「いや、な。 今回は俺自身が不安になったとか、そうじゃなくてだな。 お前がこの戦いに巻き込まれてること、お前の両親が知ってるのかをそもそも知らねえし、その……なんだ、お前の祖父母さんたちも知ってんのかよ。」

大河は窓から見える外の木々を見ながら、いや、本当はもっと遠くを見つめているような状態でそれだけ言った。

「………はっ。」

多少間を開けてから、大地の開いた口から出てきたのは、相手を嘲るような笑い声だった。

「なんだよ、本気で考えてんのによ。」

大河はその笑いをそのまま素直に受け取り、多少怒り気味に大地に言い返す。

「いや、そもそも俺の父さんたちには宗次郎さんが伝えてあるし、じいちゃんも大丈夫だろ、多分。」

「おい、多分って……そういうのが不安なんじゃねえかよ。 俺の勝手に巻き込んじまって、それでお前に何か……」

大河は大地のうまく言いくるめた感が伝わってくる発言が嫌だった。 自分のやっていること、それは周りの人にはほとんど関係のないこと。 特に大地を初め、裕希や桜、凛は本当に無関係といってもいいくらいに。 それでも皆はついてきてくれている。 だとしても、大河はその助けてくれる友の親ぐらいには今の状況を知っておいてほしかった。

「大河。」

「ん? ……いたっ。」

わざわざもう一度名前を呼び、ずっと遠くの方を見ていた大河を自分の方に向けた大地は、その額にデコピンをした。

「たくっ……今更大河は何いってんだよ。 前もいっただろ? 俺は大河、大河に助けられて、その恩を返したくて必死に特訓して、大河に俺の事を相棒と言わせるようにまでなった。 俺自身かなり頑張ったしな。 大河が背中を預けてくれるのは素直に嬉しいことだったよ。 だから、俺もとことんついてく。 そういったはずだ。 だから大河も余計に思い起こすなよこんなこと。」

「それは分かってるつもりだけどよ…」

大河は大地に前と同じことを言われ、理解しているが素直に受け入れられない、そんな微妙な表情を出す。

「それに、どうせ俺以外の皆に聞いても、同じことが返ってくるぜ。 皆、大河になんらかの形で感謝の気持ちを持ってるんだ。 だから、大河もその気持ちをただ素直に受けとるくらいの気持ちでいてくれよな。」

そう伝えると、大地はまた立ち上がり、部屋から出ようとする。

「どこいくんだよ。」

「別に、ただ自販機で飲み物買ってくるだけだ。 もう話も終わったろ?」

大河はまだなにか話したそうに呼び止めたが、大地は自分の中で話をつけてしまったらしく、そのまま部屋から去っていった。

(……まったく、人の気持ちを考えてるのか考えていないのか。)

大切な相棒の考えは、大河にはよく分からない時があった。


45話を読んでくださり、ありがとうございました。

次もこのくらいのペースで書いていきますね。 次回は舞台を移して埼玉です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ