斬空刃
「え~っとだな……とりあえず、いつ俺の身体を弄ったよ。」
大河はどこから聞いたらいいかよく分からなかったので、とりあえず一番大きいところから入った。
「そうですよ。 大河が何かされてるときなんてありましたっけ。」
大地も心当たりがないというように付け加える。
「いや、そうじゃないんだ。 さっき凛が言った通りに、敵の機械には色んなパターンがある。 今回の大河は一番近いのといったら裕希だな。 」
「私?」
突如名前を呼ばれ、不意を突かれたように裕希が反応する。
「そう。 裕希は意識は操られずに身体能力、そして超人的な速度を得ている。 当然桜の剣が伸びるのも一種の能力だ。 つまり今回の敵も、大河が発動したのもそれぞれ能力というわけだ。 まあ、桜の能力を発動できる装置は大河が一度壊したから、裕希同様武器自体に装置を組み込んだけどな。 大河の装置も武器に組み込んである。 簡単に言えば、大河の身体は弄ってないということだ。」
「……要は俺はこの武器で挑んでなかったら負けていた、と。」
その特に賢いわけでもない頭でなんとか理解できた事をまとめた結果、とりあえず大河でも結論は分かった。
「まあ単にそうとは言えないんだが…かなりキツかっただろうな。」
宗次郎も正直なところは分かっているが、流石に直球でいうのはよくないと思い、濁しながら大河に伝える。
「キツかったってレベルじゃなかったでしょうね。 俺らここにいませんよ、多分。」
大地がその間に口を挟む。 当然大地も、宗次郎が上手いこと誤魔化しながらそれを言ってるのは分かっていた。 それでも、一度全体に現実を言っておくべきだと思ったのだ。
「まあ…あれだ。 とりあえず俺が弄られてないってのはなんとなく分かった。じゃあ次に、俺の能力ってなんだよ。」
大河がその次に頭に浮かんだ疑問を投げ掛ける。 これは周りもよくわかっていなかったらしく、一斉に宗次郎に視線が集まった。
「そうだな、 大河、今からまた身体を痛めてくれるか?」
「いや、普通に嫌だ。」
宗次郎の提案に、反射的に大河は否定する。
「どっちにしろ今後かなり同じ辛さは受けるんだから、やっといても悪くないぞ。 ほら、適当に血を流して刃につけろ。 文句言うな。」
「はぁ? ……まあいいや。 やりますよっ……と。」
宗次郎がかなり強引にでも大河にやらせようとするので、大河も諦めてその指示に従って刃に血をつけた。
「これって叫ばなきゃ発動しねえのか?」
「まあ気持ちを高ぶらせられれば言い訳だが、叫ぶのが早いだろ。」
大河が宗次郎にまた一つ質問をする。何をしだすのか分からない裕希と桜は少しぽかんとしていた。
「なるほどね、慣れてない間はその方がいいって訳か。皆耳抑えといた方がいいぞ」
それだけ告げると、他の皆はその忠告通りに耳を塞ぐ。 わざわざドアまで閉めきって、完全に騒音対策を万全にした。
「はぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
『ブンッッ!!』
思いきり声をあげ、その場で一度太刀を振り切る。 確かに普段よりもより鋭くキレのある一撃を与えられるように見えるが、逆に言えばその程度のものだった。 しかし、
「ほっと。」
宗次郎が手に持っていたデザートのはずだったフルーツの盛り合わせの中からリンゴを投げる。 そのリンゴは大河が振りきったところに飛んでいき……
『サクッ!』
空中で見事に斬れた。
「………いってえ。結局何ができるんだよ、俺。」
振りきったままやはり身体に衝撃が押し寄せ、そのまま固まっていた大河はようやく太刀をしまい、宗次郎に問いかける。
「察しが悪いなお前も。 簡単に言えば、その場の空間を斬れるようにしたって訳だ。」
さも当然のように宗次郎は告げる。 しかし、当然ながら、凛を含めその場の残り全員が目を丸くした。
「はぁ!? 超能力か何かかよそれは。」
大河は自分の手にした能力が信じられず、大声をあげる。
「すっごい大河! これでもっと強くなれたじゃん!!」
裕希は自分事のように喜ぶ。
「そうだよ! もっと色んな敵とも戦えるんじゃない?」
桜も同じように喜んでいる。 二人して喜んでくれているので、大河もなんとなく嬉しかった。 しかし、疑問も浮かんだ。
「えっと、まず最初になんだが、これはどう使えるんだよ。」
「それを使いこなせば、暗殺が可能の他、敵との戦闘で不意をつける。 例えば大河が敵だったとして、私が弱っているとする。そこで仕留めたいので、大河は距離を開けさせまいとして近づいてくる。 そこでいきなり自分が斬れたらどう思う。」
大河は宗次郎の言ったことを頭のなかでシミュレーションして、そして頷いた。
「……なるほどな。 じゃあ、どうやってコントロール出来るようになるんだ? それに、毎回こんなに身体が痛くなっちゃ使い物にならねえよ。」
「それは慣れだ。 恐らく裕希たちは既に身体が慣れた状態にされているんだろうな。 本来であれば、大河と大地が二人に立ち向かった戦いの時に、痛みに耐えられてなかっただろう。」
宗次郎はさも当然のように答える。 つまりそれは、今後何回か身体を強制的に痛めなければならない訳で、大河は多少苦い顔をした。
「この二人、そんな楽な道を辿ってんのかよ。 なんかずりいな。」
「大河、それはちょっと違うだろ。 この二人だって……」
大地が大河の発言に多少ひっかかるものがあったらしく、口を挟んでくる。 当然大河も本気でそう思ってるわけではなかった。
「分かってるよ。 多少含んだ言い方をしただけだ。 まあ、つまりはあれか。 必殺技を出せるようにしたけりゃ耐えろっていう王道パターンか。 了解。」
「そういうことだ。 ここでまた一週間近く過ごすことになる。 逃げた敵の位置を把握しなければならないからな。……なんか必殺技じゃ呼びにくいなあ、それも。」
宗次郎は大河が理解したことを嬉しく思った。 多少顔に笑みを浮かべながら、呼び方の話題にもっていった。
「そうだな……凛、なんかないか? 大河の技の呼び方。」
凛は急に話を振られ、多少慌てたような仕草を見せながら、すぐに考え出す。
「えっと、そうだね………その技、凄くシンプルに『斬空刃』(ざんくうは)でいいんじゃないの? 空間を斬り裂いて、そこには刃が通ってるみたいに斬れるんだから。」
その答えに、大河は少し噴き出した。
「何、大河! 文句あんの!」
「はははっ、いや、なんか痛いなぁってな。 まあ、格好いいじゃねえかに いいじゃん。 斬空刃。 今度っからそれが呼び名だな。 よし、また一つ父さんたちを救う確率が増えたのかな……」
大河は自らの太刀を見つめながら、少し顔に柔らかな笑みを浮かべた。
44話を読んでくださり、ありがとうございました。
また少し投稿が空いてしまいましたが、これくらいのペースで進めていくと思いますので、よろしくお願いいたします。




