失念
大地の様子を見ると、敵は一度剣を下ろした。
「銃と剣で合わせても無駄だったのに、次は一人で挑むつもりか。 無謀だとは思わないのか。」
「俺はお前を倒そうとは思ってない。 大河が少しでも休んで復活してくれるまでだ。 俺も、一人で倒せるなんて思ってない。」
大地がジリジリと近寄る。 敵はまだ構えなかった。
「では、味方が戻るまでに自分がやられるとは思わないのか。」
「それを言ったらおしまいだ。 耐えると考えたら耐える。 そうしないと、お前らみたいに数いる訳じゃない俺らは勝てない。」
そういうと、大地はもう一丁銃を取り出す。
「いかせてもらうぞ。」
『ババババババッッッッッ!!!』
「貴様も甘いな。」
『キンッッ!!』
敵は一対一では話にならないとでもいうように、簡単に弾き返す。
「それは根性論と言うものだ。 やればできる。 命を懸けたこの場面でそれを信じてる時点で貴様らの負けだ。」
「なにも出来ないよりは、その根性論に任せてみるのも一つの考えだ。 それに……」
『ピキッ…』
「当たればいけそうだしな。」
何発か撃てば一、二発は敵にあたる。 蓄積したダメージが、一部分を破壊した。
「お前の弱点は2つ。 一つは剥がれたら終わりということ。 もう一つは、大河よりも銃弾を弾くのが下手くそだということだ。 大河とやりあったことのある俺が言うんだ、それは否定できないはずだ。」
「そんなこと元から分かりきっている。 あの大河とかいうのはかなり強い。 この短期間であそこまでいけるようになったのは信じがたいことだ。 だが、貴様との一対一なら分からない。」
『ババババッッ!!』
『キンッ! キィンッッ!!』
大地が撃ち、敵が弾く。 話しながらだが、まるで大河を襲ったあの時のような攻防が行われていた。
「まだ、これを受けさせてないはずだけどな。」
『ギュルルルル!!!』
『キィンッ!!』
「さっき避けたときに弾道は見ている。 貴様のそれも、まだ練習不足で同じ広がりでしか飛ばせないと見た。つまり、よく見たら弾けるわけだ。」
「まあ、見破られてるよな、そこは。 だが、普通に考えて、曲がらないものを曲げられるようになってるだけでもかなり良いものだろ。」
大地は自らの弱点を見破られても冷静だった。
「別にそこを見破られても俺はなにも思わない。 直線と織り混ぜてこそこれは使い物になる。」
『バババババッッッ!!』
大地の銃弾が自由自在に動き回り、敵の動きが多少鈍る。
「なるほど…中々良い動きだ。 しかし……。」
『ダダダダダタッッ!!』
敵は弾を見極めると、うまいこと避けながら突っ込んできた。
(近づけたら負け……止まらせる!)
大地は、片方を直線で、もう片方を曲げて撃つと決めた。 この方が多少は精度がつく。
(厄介だな。 まずは片方潰すか。)
「ふんっ!」
必死に撃ち続けるも、敵の攻撃が大地に迫る。 なんとかやり過ごしながら、大地は撃つ手を止めなかった。
(いつかはその守りを壊せるはずだ!)
『ババババッッ!!!』
(こいつがミスをするとは思えない。 リロードの速度、銃の精度など、やはりこちらが造り上げたかなりのもの。 しかし、本体がダメならば……)
敵の動きをとにかく止めようとする大地だったが、突っ込んできていた敵は違う動きを見せる。 敵は一度退き、また銃弾を弾くことに徹し始めた。
(退き始めた……。 こっちが突っ込む必要はない。 間合いをとれるならこっちが有利だ!)
大地は敵の動きを見ると、更に撃つ速度を加速させる。
「はぁ!」
離れていた敵は、その場から細かい岩を大地に向かって投げてきた。 撃つことに集中しすぎた結果、大地は重大な事に気づかなかった。
(そのくらいなら集中は途切れな………なにっ……!?)
敵の細かい岩の影響により、弾が出なくなってしまった。 運の悪いことに、それも両方とも。
(あれほどさっきまでは気にかけていたのに、忘れていた! 馬鹿か俺は……!)
「本体を妨害できないなら、その付属品を妨害すればいい、ごくごく単純なものだ。」
大地が体勢を整える前にけりをつけるのか、敵は更に動きを一転させ、大地に突っ込んできた。
(これが使えなきゃ何もできない。 焦るな、早くしろ……!)
大地は逃げながら銃を元に戻そうとするが、手元がおぼつかなく、なかなか上手くいかない。 そのうちに敵の姿は目前に迫っていた。
(落ち着け……元に戻る…………よし!)
ようやく片方が戻ったとき、突き出された剣が大地の目に写った。
(やばい……!)
「ぐあっ!!」
大地の左腕に剣が刺さる。 思わず落とした銃に敵は剣を突き付け、そのまま壊した。
「さて、片腕がぶらついてるなかで狙いは付けられるのか?」
「そこまで俺も弱くない……まだいける。」
敵に挑発されながらも、大地はごく冷静に返す。いつまでも両手が使えないままでは勝負にならない。 左腕の痛みを堪えながら、大地は更に打ち続けた。
「先程までの脅威は、曲げる時と直線の時とが混ざっているからこそであった。 今の貴様は弱い。 離れる必要もない。」
敵はその言葉のまま、執拗に大地につき、剣を振り続ける。 必死に避ける大地だったが、それも限界があった。
「はぁぁ!!」
『ブンッ!!』
「ぐあっっ!!」
右腕も捉えられる。 もはや戦闘継続は不可能な状態になった。 大地は思わずその場で立ち止まった。
「………これ以上は無意味か。逝け。」
敵が剣を振り上げた。
39話を読んでいただきありがとうございました。
投稿間隔がかなりあいてしまい申し訳ありません。 これまでのペースに戻せるよう努力致します。




