お返し
「…………ふぅ。 こんなものか。 おっと、貴様ら、生きてたんだな。」
起き上がった敵は二人を見つけると、自分が生きているのが当然かのように話し出した。
「溶岩の中、突っ立っていられたり、結局倒れたと思ったらまた起き上がったり、お前は何者だ?」
大河は正体がよく分からない敵をかなり警戒した。 大河のような一般人じゃないのは明らか。 かといって大地のように弄られたとしても、 耐熱機能なんて付くものなのだろうか。
「ここまでして分からないということは、つまりはそういうことか。 なら私のほうが一つ上だな。」
「なんのことだよ。 だいぶ紛らわしい言い方をするな。」
大河は敵のなにか意味ありげな発言が気になった。 だが、敵はそんなことお構いなしに自らの体を動かしていく。 体について固まった無駄な岩石を取っているようだった。
「そうだな、簡単に言えば、貴様らの仲間の上位互換、といったところだな。 貴様らが味方のことをどの程度知ってるかは分からないが。」
(やはり敵は桜や裕希のなにかを知っている。 あの二人を作り出した過程で何かがあったのだろうが、俺はあの二人にその時のことを聞いていない。 あまり掘り起こしたくなかったからだ。 だが、多少は理解するべきなようだな。)
「あいにくほとんど知らなくてな。 そっちが教えてくれないなら、戦いのなかで見つけてくしかないわけだ。」
大河はもう一度鞘から太刀を引き抜くと、敵に切っ先を向けた。
「その岩の体で、先程のように動けるのか?」
「さあ、どうだろうな。 この状態になったのも初めてなものでな。」
敵もそれに合わせて大河に剣を向ける。 当然だが、剣はしっかりと守られており、岩石の影響はないようだった。
「そもそもその身体斬れるのかよ。 分からねえけど………はっ!!」
大河は自身の刃が通じるのも心配だったが、その心配事を振り払うかのように走り出した。 もうなにを言わずとも、大地は大河に合わせて走り出す。
(見た感じかなり体の回りは頑丈に覆われている。 急速に冷えたことにより、脆くなっているといいが………)
「大河! 先に俺がやる!」
敵の裏に回った大地が声をかけ、銃を構えた。
『ババババババッッッ!!!』
「はっ!」
『キンッッ!!』
敵はその体に纏っている岩の鎧からは想像しにくい速さで振り返り、銃弾を跳ね返した。
「なるほどな。 どうやら体を動かすために必要な部分、特に首、肩、肘、膝等はほとんど岩石がないわけだな。」
ひとまず初撃を終えた大地は、確認ともとれる発言をした。
「今の攻撃では、貴様らが読み取れるのはそのくらいか。 だが、それを貴様らは逆になんと読み取れるか。」
「逆に? よくわからないな。 お前が動きやすいということは、それ以上でも、それ以下でもないじゃないか。」
大地はそれだけ言うとまた撃ち始める。 動きながらでも撃つ速度や精密さはほとんど落ちず、狙い通りの場所に飛んでいっていた。
「はぁぁ!!」
更に、裏からは大河が突っ込む。 二人で敵を挟み撃ちにするという流れは、二人の基本的な立ち回りとなっていた。
「つまりはこういうことだ!」
『キィィィン!!!』
甲高い金属音とともに、弾かれたのは大河の方だった。
「なっ………!?」
自身の刃が通らないと理解した大河は、一度後ろへ退く。
「てめえ、それただの岩じゃねえな。」
「何故そう思う。 もしかしたら、偶然通らなかっただけかもしれないぞ。」
敵は弾いた岩の部分を確認しつつ、特になにもなかったのか、少し手で払うだけで確認を終わらした。
「やっと分かった。お前がさっきっから言いたかったことがな。 お前は自分の体で熱に耐えることができ、 こっちは仮説だが、自身の体の周りのものの強度を変えられる。 こういうことだろ。」
大河が敵を見据えながら言うと、敵の大河を見る目が変わった。
「ふん。 それが分かったか。 では逆に聞こう。 私の体に刃や銃弾が通らないとして、貴様らはどこを狙う。 頭の岩石も当然だが、同じように固いぞ。」
自らの頭をコンコンッと叩いてそれを示す。 大河と大地はアイコンタクトを交わした。
「俺たちを甘くみてもらっちゃ困るな。」
「ようはこうすればいいんだろ!」
『バンバンバンッッ!!』
大地の銃弾が、敵の両膝、そして首に飛んでいく。 敵はそこからダイブで飛び退いた。 当然着地のために手を伸ばしている。つまり……
「肘、もらった!」
『ブンッ!!』
しかし、
『キンッ!』
二人の連携は、敵が腕を曲げて顔から地面に突っ込むというだけの行動で防がれた。結局、敵は腕で大河の太刀を受けとめ、大河は先程と同じく弾かれただけだった。
「くそっ!」
「甘い!!」
『ブンッッ!!』
敵は寝転がっている状態。 つまりは大河の脚は目の前。 一瞬だが、大河の反応が遅れた。
「やばっ……」
『ザシュッッ!!!』
「くっ………!」
大河の足首に剣が入る。 幸いなことに、少しは反応できていたので、完全にもってかれた訳ではなかった。
「はっ………やってくれるな……。だが、寝転がってて大丈夫なのかよ。」
『バババッッ!!』
敵の後ろから大地が銃を放つ。 それも縦に曲げて。
(先程のように上に跳躍したら自らくらいにいくようなもの。 かといって寝転がっている状態からは大きく動けない。 弾かれてもいい。 大河の助けに!)
すると、敵はまた新たな動きをした。 アルマジロのように丸まって、首は固い手を当てて守り、銃弾と大河の追撃を防いでいた。
「ふっふっふ。 こうすれば大抵の攻撃は凌げる。 それにしても、銃弾を曲げるということはこんな感じに弾が飛んでくるのか。」
「ここまで気づいてなかったのかと思ったが、よくよく考えたらこの力もそっちが作ったんだな。 バレてないはずがない。」
大地はリロードをしてもう一度狙いを定める。 しかし、敵は早かった。
「はぁ!!」
「なに!?」
敵は既に固まっている地面を掘り起こし、大地に向かって投げつけた。 かなりのスピードで飛んでいった岩は、大地が避けに徹するしかなくなるには十分だった。
「避けてばかりでは意味がないぞ。」
投げながら突進してくる敵に銃を撃つが、なかなか狙いが定まらない。
「いいようにやってんじゃねえ!」
裏から大河が追っていくが……
「それが狙いよ。」
「なんだっ……」
敵は前に突きだしていた剣を反転させ、思いきり裏に突きだした。
『ザシュッッッ!!!』
「くそっ………」
大河の脇腹に、綺麗に刺さった剣からは、だらだらと血が流れてた。
「私は、刺されるという心配はないからな。 仲間を守ろうとしてただ突っ込んだ貴様の負けだ。」
そう告げると、無慈悲にも大河を蹴り飛ばした。
「ぐはっ………くっそ……」
吹っ飛んだ大河は、立ち上がろうとするが、体が思うように動かない。
(何気に酷使してたのもあるし、初の施設外での戦闘だから余計にだったかもしれねえな。 体が思う通りに動かねえか………でも、寝てるわけには)
「大河、座ってろ。 裕希戦のお返しだ。」
大地が大河の前に立ち、敵に銃を向ける。
「こっからは俺の番だ。」
38話を読んでいただきありがとうございました。
次は大地メインになるかと思います。




