敵の意図は?
これまでより、更に噴煙が舞い、 溶岩が流れ出ている山頂の様子を確認した後、大河たちは走り出していた。
「大地、とりあえず離れよう。」
「了解。 確かにそれがいいな。」
走りながら振り返る。 山頂からは少しずつ溶岩が迫ってきているが、それでも敵が動く様子は見られなかった。
(何故動かない………? せめて俺らを追撃しにくるぐらいの動きは見せてもいいはずだ。 あのままでは……。)
大河が敵の行動に疑問をもった、その時だった。
「うぉぉぉぉぉぉぉおお!!!!」
「!?」
敵が突然大声をあげた。 ただあげたというよりは、まるで自らを奮い立たせるような、そんな勢いがこもっていた。
(叫んだだけ? それだけなら、俺らへの威嚇? そんなもの、走り出している人間には聞かないはず。 まさか、武士の自害前の一言のような、そんな意味合いを込めた叫びか?)
しかし、大河の予想は見事に外れた。
「うぉぉぉぉぉぉお!!!」
声をあげたまま、敵の足は溶岩に浸かった…………立ったまま。
「なんだと!?」
「なんであいつ立ってんだよ!?」
目の前で起きている非現実的な状況に二人は驚愕した。 地上に流れ出した溶岩は約800~1300度。 平均的に1000度と考えられることもあるが、どっちみち人の耐えられる温度ではない。
(敵の装備がそうさせているのか? いや、奴が身に纏っているのは融点の高い鉄や銅ではない、いわゆる服の素材として一般的に使われるものだ。 であればあいつは何故………?)
大地が悩んでいるところで、更に敵に動きがあった………のだが。
『…………バタンッ。』
「………は?」
敵が突然大の字に倒れた。 遠くから見ているため、力尽きたのか、バランスを崩したのか、普通に足がやられたのかが分からなかった。
「大河、あいつなにしてるんだ?」
「いや、俺も分からねえ。 普通に死んじまったんじゃねえの、あれ。」
大地が大河に聞くが、当然大河自身も分かるわけがない。 大河たちに逃げろと伝え、自分だけ残ったと思ったら、溶岩の暑さに耐えたのか耐えてないのかよく分からない様子を見せている敵の心情なんて読めるわけがなかった。
「まあ、こないなら仕方ない。少しずつ溶岩も流れてきてるし、このまま………いった!」
敵の方を見て走っていた大河が、突然止まった、というより、なにかにぶつかったようだった。
「大河、なににぶつかっ………いたっ!」
しっかりと前を向いていたはずの大地も大河と同じくぶつかった。 しかし、二人の目の前には特に何もなかった。
「………ったく、特に何もねえじゃねえかよ。 なんで俺らぶつかったんだ。」
「待て、大河。 前に手を出してみろ。」
その場に何もないことに苛立った大河は多少怒り気味に言い放ったが、 大地は何かに気づいているようだった。
「んだよ………壁? なんでだ? 見えねえ壁があるってのかよ。」
「どうやらそうらしい。あいつが近隣住民に被害がいかないっていってた理由はこれか。 どうやっても外に出られない。 恐らく解除するためには敵の施設………溶岩の海に戻らなきゃいけないわけだ。 上手いことやられたな。」
大地は敵の意図をすぐに理解したようだった。 振り向くも、そこは発言通り溶岩。 かといって立ち止まっていても更に溶岩が近づいてくるばかりだった。
「そんな呑気に分析してる場合じゃねえだろ。 早いとここっから逃げねえと!」
「俺の考えが当たってるなら、溶岩がたどり着いて無事ゲームオーバーだ。何か方法は………!」
とにかく焦らないように、テンパらないように。 二人の頭のなかはこれだけだった。
(焦ったら負け、かといってなにか行動を起こさなければ……! くそっ、何ができる。 溶岩の海が近づいてくるこの状況で、打開策は……!)
そんな二人の表面だけの冷静さを溶かすかの如く、更に溶岩は近づいていた。
「くそっ、めっちゃ暑くなってきたな。俺らを余計に焦らせてるみてえだ。」
「まだ大丈夫だ、なんか見つけ出せば………ん?」
溶岩が迫る緊迫感、上がる気温のなか、自然に少しずつ焦りが見え始めていた二人はまたも謎の現状を見た。
「………止まった?」
近づいてきていた溶岩は、少し距離があるところで止まった。 どうやら、溶岩の量はホントにコントロールできるらしく、その量が大河たちのいるところまで到達しなかったものだと考えられる。
「あいつは気づいていないのか?」
大河は自分より今の状況をうまく捉えられている大地に聞いた。
「恐らく気づいていないし……何故だ?奥の方は既に冷却されている…。 急速に冷やされ、もう完全に岩石になっている風に見える。 溶岩にも何か細工が……?」
大地は溶岩の冷却速度にも疑問を抱いていた。 その答えになるかは分からないが、既に大河たちに近いところの溶岩も岩石になっていた。
「なんだよ、もう岩になっちまってるなら、戻ってこの仕掛けを解除しちまえばいい話だ。 いくぞ、大地。」
「………あ、ああ。」
(こんなにすぐに仕掛けを解くことができる場所に戻すような仕掛けをつくって、敵はなにを…?)
大河に言われるがままに火成岩の上を歩いていく大地。 だが、内心は多少ひっかかっていた。
そして、その違和感は、すぐに現実に現れた。
「…………ふんっ!!」
『パキッ!……バキッ!!……』
「そうきたか………!」
既に固まっている火成岩の中から、倒れたと思われていた敵がすっくと立ち上がってきた。
37話を読んでいただきありがとうございました。
後、2~3話ぐらいに考えています。




