爆発
「はぁ………はぁ………後少しで出口だよ、桜!」
桜と裕希の二人は迫りくる敵を切り裂き、貫きながら出口に向かって走っていた。
「裕希! まだ後ろにいるから気を付けてね!」
裕希の速度になんとかついていきながら桜が声をかける。 戦闘では剣が伸びるお陰でそこまで忙しくないが、ただ走るだけの動作だとやっぱり疲労は早くたまるので、桜はついていくので精一杯な様子だった。
「はぁ……はぁ……見えた!」
二人の前に入ってきた入り口が見える。
「待てーー! 貴様らーーー!」
裏から追いかけてくる敵の声が聞こえてくる。 頑張って走っているが、二人に追い付けるはずもなく、その姿はどんどん遠ざかるばかりだ。
「よし! ここを開けて………って、開……かない……!」
裕希が一歩先につき扉を開こうとしたが、その扉は無理矢理開けようとしても開かず、固く閉ざされていた。 どうやら、大河たちを閉じ込めるために開かなくなっていたようだった。 当然といえば当然な対処だが、とにかく急いで走っていたばかりに、その考えが二人の頭になかった。
「裕希!離れてて!」
「えっ?」
すぐ後に出口まで来た桜が声をかける。 かなり疲れているが、今はそんなことを言っている場合ではなかった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
『ビュンッッ!!!!』
「はやっ!?」
これまで裕希が見てきたものとは比べられない速度で、桜の剣が伸びた。
『ドォォォォォォォンン!!!』
物凄い速さで突っ込んでいったため、かなりの衝撃と音が周囲に響き
扉が崩れたことによって煙が舞った。
「はい、開いた!」
「壊したんでしょ!? どっちにしろ、ナイス桜!」
『パンッ!』
崩れた扉を見ながら、裕希はあり得ない、とでも言うような表情をみせながらも、ハイタッチをして喜びを分かち合う。
「………なに!? あの扉をぶち破っただと!?」
その様子を走りながら見ていた敵が驚く。 どうやら建物の強度にはかなりの自信があったようだ。
「…………というかさ。」
「なに? 裕希。」
「あの人たち、走るの大変そうだし、吹っ飛ばしてあげたら?」
裕希が走ってくる敵を見て頭によぎった考えを桜に話す。
「いや、なんか頑張って走ってるから、可哀想だなぁって思ったの。」
桜もそれは薄々思っていたらしかった。 それでも放っておいたのは桜の優しさなのかは知らないが、どのみち吹っ飛ばされるのであればある意味酷な気がする。
「はぁ………はぁ……… ようやく追い着いたぞ、貴様ら……!」
ようやく二人のもとについた敵がかなり息切れした様子で話しかける。 足もフラフラで、これから戦えと言われても誰が見るに無理な状態だった。
「桜、 この言葉知ってる?」
裕希は更に質問をする。
「どんな言葉?」
「情け無用って言葉。」
少し笑いながら裕希が言う。 裕希の真の意図が分かったらしく、桜は剣を構えた。
「ちょっ、いや、待って。 俺たち今走ってきたばっかだから。 もう少し何かさせてよ。 ねえ。 聞いてます?」
走ってきた敵がこの世の終わりを見るような絶望した顔で二人を見る。 敵の言葉が耳に入ってるのか入ってないのか分からないが、桜は剣を放った。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「せめて話ぐらい聞いt……………ぐわぁぁぁぁ!!!!」
入り口付近の通路は一本道なので敵はものの見事に吹っ飛んだ。 剣に貫かれた後、吹っ飛んだ勢いで床に叩きつけられるのはどんな痛みなのだろう。 どんなものであれ、敵がその攻撃を食らった後動かないのをみると、なんとなく察せてしまう。
「問答無用って、言葉だけみると似てない?」
「いや、まあ似てるけど。 それよりも今の桜、まさしく無慈悲って感じで良かったよ、うん。」
(ははは………まさかホントに一撃で一人残らず吹き飛ばしちゃうとは思わなかったよ……。 多少可哀想に思えちゃった。)
遠くに転がっている恐らく死体となってるであろうものを見ながら、裕希は苦笑いを浮かべ、少々微妙な気持ちになっていた。
『ゴゴゴゴゴゴ』
「おっとっと………」
二人の戦闘が終了すると同じくして、地震が起こり始めていた。 ある意味グッドタイミングだったかもしれない。
「二人を信用して、ここから離れよう。 きっと戻ってくるはず………いや、もしかしたらもう向こうにいるかもね。」
「そうだね。 私たちが戻れないなんてことになったら意味ないし。」
二人は頷きながら、敷地外へと走っていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さて、まず始めに、この噴火を弄ってるのはあんたらなのか?」
大河は話し合いに持ち込むため武器を構えるのをやめた。 大地も同じくである。
「そうだ。 近隣住民に被害が及ばないように計算もしてある。この周辺は、噴煙もこのエリア外には出ないような造りになっている。」
敵も一度剣をおろした。 周囲は既に地震が定期的に起こり始め、煙も出てきていた。
「だが、あそこが爆発しても、貴様らに被害を与えないようにしてやれない」
「なに? どういうことだよ。」
敵の意味深な発言が気になり、大河はその内容を聞く。
「貴様らが離れるまで引き伸ばしてもいいということだ。 その方が貴様らも良いだろう?」
「………よくわからねえな。 俺らにメリットを与える理由はなんだ。」
(こいつはなにがしたいんだ……? 俺らにここまで色々と条件を掲示してきて、まるで俺らを本当に巻き込みたくないかのように言っている。 だが、もし他になにか理由があるのなら………)
大河は敵の本心がまだ読めなかった。
大地に目をやると、大地も特になにか閃いた様子ではなかった。
「あまり長くはこの状態をもたせられない。 動くなら早くしろ。」
敵は大河たちから一度も目を離さない。 自分のいってることに嘘偽りはない、とでも思わせるかのように。
「何が伝えたいのかいまいち理解に苦しむが、好条件を出してくれるならこっちもありがたい。 ここから離れさせてもらおうか。」
大河は大地にもう一度目を向ける。 その視線に気づいた大地はただ静かに頷いた。
「そうか。 では、行くとよい。」
それだけいうと、敵はそのまま静かになってしまった。
「………凛、聞こえてるか?」
大河はとりあえず状況がまるで違う方向にいったことを伝えるべき相手に伝える。
「う、うん。 聞こえてるけど、よく分からない状況になったね。」
音だけ聞いてる凛は、より状況に困惑しているようだった。
「こっちの状況は俺たちですらよく分からないが、あまり時間もない。 とりあえずそっちに戻る。」
「分かった。 待ってる。」
「じゃ、後で………大地、背を向けずに戻るぞ。」
「了解。」
二人は敵に視線を向けたまま歩き出す
そして…………
『ドッカァァァァンン!!!!!』
これまで煙が上がっていた山頂から、爆発と共に溶岩が流れ出していた。
36話を読んでいただきありがとうございました。
かなり遅くなってしまい申し訳ありませんでした。




